【良作】エンド・オブ・ホワイトハウス_ほぼ沈黙の戦艦(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント

(2013年 アメリカ)
冒頭のホワイトハウス陥落場面が圧巻の出来で、それを見るだけでも十分に価値のある作品です。『ダイ・ハード』(1988年)との類似性が指摘されていますが、私は『沈黙の戦艦』(1992年)に近いかなと思います。『沈黙~』の温度感が好きな人なら、本作も楽しめるかも。

作品解説

マイク・バニングシリーズ第一弾

当時夫婦だったクレイトン・ローテンベルガーとカトリン・ベネディクトが執筆した脚本が本作のスタート地点であり、B級アクション映画を多く製作しているミレニアム・フィルムズがこれを購入。

最初の脚本では敵は中国だったのですが、中国を悪者にすることは興行的なリスクであるとの判断から北朝鮮に置き換えられました。

ミレニアム・フィルムズが脚本を購入したのが2012年3月、同月中にジェラルド・バトラーがキャスティングされ、2012年7月には撮影開始とものすごい勢いで製作が進んだのですが、その理由はソニーもホワイトハウスが外患の手に落ちる『ホワイトハウス・ダウン』(2013年)を製作中だったためでした。

2013年3月に全米公開されると予想を超えるヒットとなり、同一キャストでの続編制作が決定。『エンド・オブ・キングダム』(2016年)『エンド・オブ・ステイツ』(2019年)が公開されてそれぞれヒットし、ミレニアムフィルムズはあと3本は作るつもりのようです。

興行的には成功した

本作は2013年3月22日に全米公開され、日本以外の全世界で大ヒットしたアニメ『クルードさんちのはじめての冒険』(2013年)に次ぐ第2位という好成績を収めました。全米トータルグロスは9892万ドルで、製作費7000万ドルの中規模アクション映画としては上々の成果でした。

国際マーケットでも同じく好調で、全世界トータルグロスは1億6102万ドル。

なお、競合作『ホワイトハウス・ダウン』(2013年)は全世界で2億536万ドルを稼ぎ売り上げ的には上回ったのですが、本作の倍の1億4000万ドルもの高額な製作費をかけていたことから、収益面では厳しかったようです。

感想

圧巻のホワイトハウス占拠場面

韓国首相訪問中のホワイトハウスが北朝鮮の武装集団に襲われ、政府高官もろとも占拠されるのが本作の内容。このホワイトハウス占拠場面が圧巻の迫力で驚きました。

まず首都上空にガンシップが飛来し、地上に対して激しい攻撃を行います。

首都上空に入るまで国籍不明の軍用機が見過ごされていたのかとか、ホワイトハウスに直行すればいいのになぜ市街地を襲うんだなんてツッコミが野暮に感じられるほど、この機銃掃射は素晴らしいものでした。

続いて観光客に化けていた北朝鮮の戦闘員が雪崩れ込んできてホワイトハウスを占拠。そして事前に準備しておいたゴミ収集車などの大型車両でホワイトハウスを取り囲み、これをバリケードにします。

そしてバンカー(ホワイトハウス内の地下壕)に逃げ込んだ大統領を、韓国首相の警護隊に紛れ込んでいた北朝鮮工作員が拘束するという三段構えの作戦となっています。

「鉄壁の要塞」と言われるホワイトハウス内に敵が入り込んでしまうと、その排除も難しくなるという理屈にも燃えるものがありました。

これがリアルかと言われればそうでもないのですが、少なくともアクション映画を見に来た客に違和感を与えない程度の説得力はあって、私はよく考えられた話だと感じました。

あと良かったのが敵のボスであるカン(リック・ユーン)が出来そうな奴だったことで、その存在感も作戦に「それっぽさ」を与えていました。

21世紀の『沈黙の戦艦』

しかし、敵が想定していない切り札がこちらにはありました。元大統領警護官マイク・バニング(ジェラルド・バトラー)です。

なぜ「元」警護官なのかというと、1年半前に大統領を乗せた公用車が事故を起こした際、大統領を優先して助けたことからファーストレディを死なせてしまい、大統領から忌避される存在になっていたためです。

警護官の任を解かれたバニングは偽札捜査部門(シークレットサービスの本来業務)に回され、向かない事務仕事で悶々とした日々を送っていました。

そこに発生したホワイトハウス占拠事件。ガンシップが飛来した当初からバニングはホワイトハウスに向けて全力疾走し、敵が防衛網を構築する前にホワイトハウス内に潜入することに成功します。

外からでは手も足も出せない司令部にとって、ホワイトハウス内部に入ったバニングのみが頼みの綱となり、彼は司令部と連携して対応策を取ることとなります。

って、スティーヴン・セガールの『沈黙の戦艦』(1992年)と同じ話じゃないですか。

諸事情で任を解かれていた元戦闘マシーンが主人公で、孤立無援の環境下、軍の司令部と密に連絡を取りながら対策を実行。

「中にいる奴は誰だ」「ケイシー・ライバック(本作ではマイク・バニング)、絶対に信頼できる男です!」というやりとりも同じであれば、司令部が無能であることも、特殊部隊を送り込もうとして輸送機を撃墜されるという流れまでが同じです。

また後述する通り、戦略核兵器が絡んだ話に発展していく点でも類似しており、本作は21世紀の『沈黙の戦艦』(1992年)だと言えます。

バニングは鬼と化す

『沈黙の戦艦』のライバックは敵に対する容赦が一切ない男でしたが、その点では本作のバニングも負けてはいません。

例えば敵戦闘員を拘束して情報を聞き出そうとする場面。通常のアクション映画の主人公なら武器をちらつかせるだけで本当に拷問などはしないのですが、バニングは2名いる敵戦闘員のうちの一人をいきなり殺し、もう一人には死なない程度にナイフを突き刺して口を割らせます。

あまりの躊躇の無さに驚いてしまいました。

また、敵に寝返っていた元同僚(ディラン・マクダーモッド)に対しても容赦はありません。

勝負あった後(当然バニングの勝ち)、バニングはこの裏切り者に対して「最後に良い事をしろ」と言い、改心した裏切り者もバニングの言葉に応じてボスに対して嘘の報告をします。

普通ならば許しを与え、仲間に引き込むべき場面なのですが、バニングは躊躇せず裏切り者の脳天にナイフを突き立てて殺します。もはや戦意喪失した相手なので処刑ですね。

バッキバキの目をしたジェラルド・バトラーの迫力と相まって、バニングの容赦のなさが光っていました。

そういえば、ここで処刑されたディラン・マクダーモッドは『ザ・シークレット・サービス』(1993年)でも新米シークレットサービスとしてイーストウッドの相棒をしていましたね。同作でも職場が合わず辞職しており、この仕事が向かない性分のようです。

米政府高官たちの反応が一様に阿呆

そんな感じで頑張るバニングに対して、政府高官たちが阿呆みたいなことばかりやらかします。彼らの不合理な行動が作品全体のテンションまで落としており、とても邪魔な人達でした。

今回のホワイトハウス占拠にあたっての北朝鮮の目的とは、

  1. 米大統領を人質にとって脅し、東アジアに展開する米軍を撤退させること
  2. ケルベロスという指令システムを操り、アメリカの戦術核を無効化すること

の2点であり、ホワイトハウスを占領されようが大統領を人質にされようが、どちらもアメリカ合衆国にとっては譲れない話なのですが、これに譲歩しようかどうか真剣に悩むんですよね。あなた達、本当に政府高官かと呆れてしまいました。

同盟国を簡単に売る

まず1.は同盟国を売る行為であり、大統領の命とトレードするような小さな話ではありません。恫喝されたからと言って重要な世界戦略を変えたとなれば、アメリカの権威も失墜するし。

でも大統領代理となったトランブル下院議長(モーガン・フリーマン)は「仕方ないんじゃないか」と言って日本にいる第七艦隊を引き揚げさせる決定を下すし、その場にいる政府高官達から明確な反対意見も出てきません。

さすがにそれはないんじゃないのと思ってしまいました。

戦術核を簡単に手放す

アメリカ的にもっと深刻なのがこれ。

核兵器を無効化するケルベロスという指令システムがあって、これは大統領、統合参謀本部議長、国防長官が持っている3つの暗証コードが揃うことで発動する仕組みになっており、しかも外部からの干渉を避けるためバンカー外からの操作は受け付けないという制約条件が設けられています。

で、上記3人とバンカーを手中にした北朝鮮工作員は、3人に口を割らせてケルベロスを発動させようとしているのですが、もしそうなると米国内の核兵器がすべて無効化し、本土が丸裸の状態になります。

そんな大事なものなのに、ちょっと拷問されただけで大統領は後の2名に「コードを教えてもいい」と言います。「俺さえ黙っていればケルベロスは守られる」という理屈なのですが、何重ものセキュリティが設けられている意味って分かります?

最後の1枚の壁さえ守れば、他の壁は破られても構わないというのはセキュリティの考え方に反しています。

結局、最後の一つは大統領の口を割らせるまでもなく、総当たり攻撃(理論上考えられるすべての組み合わせを試して暗号を解読する方法)で破られてしまうので、大統領の「俺さえ黙っていれば」理論は通用しなかったわけです。

と言うか、総当たり攻撃を受け付けるケルベロスの仕組みもどうかと思いますが。試行回数には制限が設けられており、何度も間違えると入力不可能になるというスマホにすら導入されているセキュリティが、なぜこんな大事なシステムには組み込まれていないんだろうかと。

とにかくケルベロスを作った部署も、セキュリティを蔑ろにした大統領も阿呆だったってことで、バニングがいて本当によかったねとしか言いようがありません。