【凡作】ピンク・キャデラック_大コケアクションコメディ(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1989年 アメリカ)
イーストウッドがアクション・コメディから足を洗うきっかけになった大コケ映画。アクションとしてもコメディとしても中途半端で、決して面白い映画ではないが、さくっと見るには程よい温度感なので、特に嫌いになることもなかった。

感想

小学生の頃に水曜ロードショー(TBSの方)でやってるのを見たけど、あまりに面白くなくて途中で断念した記憶がある。

その後の人生で本作を気にかけることは皆無だったんだけど、我らが午後ローが放送してくださったので、有難く録画した。いつもいつも午後ローにはお世話になりっぱなしだ。

ただし午後ローでの放送が2022年12月のことで、録画したという事実は頭の片隅にあったんだけど、小坊時代に断念した映画ということもありちょいと億劫で、放送から1年以上経ってようやく鑑賞した。

主演はクリント・イーストウッドで、長年彼のスタントマンを務めてきたバディ・ヴァン・ホーンが監督を務めている。

ヴァン・ホーンはオランウータンがイーストウッドの相棒役を務めた珍作『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』(1980年)で監督デビューを果たし、イーストウッドのアクションコメディ路線を担っていた。

『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』は1980年の全米年間興行成績第5位という大ヒットになったのだが、一転して本作では苦戦を強いられ、イーストウッド関連作品中でもワーストに近い1200万ドルの興行成績に終わった。

この失敗は相当な痛手だったようで、以降、イーストウッドはアクションコメディに一本も出演していない。

バウンティハンターのトム・ノワック(クリント・イーストウッド)は、偽札所持罪に問われているルー・アン・マッギン(バーナデット・ピーターズ)の身柄確保を依頼されるのだけれど、彼女は白人至上主義組織に所属する旦那の罪をかぶった被害者である上に、組織に命を狙われていることを知り、2人での危険な旅が始まるというのがざっくりとしたあらすじ。

はっきり言ってしまうと、ロバート・デ・ニーロ主演の名作『ミッドナイト・ラン』(1988年)の二番煎じである。

追う者と追われる者だった二人に連帯感が芽生え、最後は協力して犯罪組織に立ち向かうという縦軸となるストーリーがあって、『ミッドナイト・ラン』は男の友情、本作は男女のロマンスが横軸となっている。

ただねぇ、還暦前のイーストウッドがロマンチックな役柄を演じるのはちょいと厳しいものがあったし、相手役のルー・アンの個性もイマイチ安定していない。

初登場時点では家事に育児にくたびれた主婦という風体だったのに、イーストウッドに出喰わす頃にはセクシーな衣装にイケイケメイクの美人さんに変貌を遂げている。本当の彼女は一体どちらなのだろうかとしばし呆然とした。

イーストウッドの相手役にしては若くてピチピチすぎやしないかと思ったけど、ルー・アンを演じたバーナデット・ピーターズは撮影当時で40歳オーバーということに驚いた。20代の見た目だったけど。

ルー・アンの姉ダイナを演じたフランシス・フィッシャーよりも実年齢が4歳上なのだから、ピーターズの若さが怪物クラスだと言える。

なおフランシス・フィッシャーは当時のイーストウッドのパートナーで、他に『許されざる者』(1992年)や『トゥルー・クライム』(1999年)に出演している。御大の公私混同ぶりは相変わらずだし、大手のワーナーがそれを許していたという辺りにも時代を感じる。

物語は、アクションというにはスリルが足りないし、コメディというには笑いが足りないし、ロマンスというには色気が足りないし、すべてにおいてどっちつかずとなっている。

またタイトルにもなっているピンク・キャデラックがさして重要でもない。

一体何がしたい映画なんだという印象だけど、不思議と嫌な感じもしなかった。毎回同じスタッフで製作されるイーストウッド作品には、そこはかとなくアットホームな空気が感じられるからだろうか。

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