【凡作】ブルドッグ(2003年)_友人をコキ使いすぎ(ネタバレなし・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(2003年 アメリカ)
麻薬組織に奥さんを殺されたヴィン・ディーゼルが、その復讐に立ち上がるというバイオレンスだけど、展開にも見せ場にも尖った部分がなく、復讐劇に必要な熱を帯びていない。チラシに描かれているような大爆発もないし。

感想

本作は2000年下期から2001年初頭にかけて撮影されたんだけど、試写の結果があまりに悪すぎて1年以上もお蔵入り。

『ワイルド・スピード』(2001年)と『トリプルX』(2002年)の大ヒットによりヴィン・ディーゼルが次世代アクションスターの筆頭候補になった2003年に便乗公開されたが、興行成績は全世界で4435万ドルに留まった。世の中、そんなに甘くない。

私は公開時にはスルー、最近ネットフリックスでの無料配信が始まったので見てみたけど、案の定、残念な出来栄えだった。

今回、ヴィン・ディーゼルが扮するのはDEA捜査官ショーン。

7年越しの捜査の末に、ショーンのチームは世界最大の麻薬王ルセロ(ジーノ・シルヴァ)の逮捕に成功するのだが、速攻で報復を受けてショーンは重傷、妻ステイシー(ジャクリーン・オブラドース)は巻き添えを喰って殺されてしまう。

麻薬組織への復讐を誓うショーンだったが、報復の指示を出したと思われていた服役中のルセロの妻子も何者かに暗殺され、どうやら別の組織が動いているということが分かってくる。

麻薬王ルセロの逮捕をきっかけに、より凶悪な新勢力が裏社会では台頭していた。”ディアブロ”と呼ばれるそのトップの素性はいまだ明らかではないが、家族を殺された者同士の共感もあり、ショーンはルセロの助言を受けつつ、妻の仇へと迫っていくというのが、ざっくりとしたあらすじ。

基本にあるのはハードな復讐ものなのだが、新勢力の正体を暴くという捜査要素も付加されているのが、本作の新機軸。

本来は敵対していた麻薬王とDEA捜査官が組むことになるという捻じれた展開も、こうして文字に起こしてみるとなかなか興味深いのだが、実際の映画の面白さにはさほど貢献していない。

まず復讐劇の温度が低すぎる。

自身も銃弾を受けてこん睡状態だったショーンが目覚めると、妻はとっくに埋葬された後だった。そんな絶望的な状況なのに、ショーンの悲しみは浅い。

体の回復を待ってから本格的な復讐に乗り出すショーンだが、警察に籍を置いたまま、通常の捜査の枠内で仇を見つけ出そうとするものだから、展開が妙にモタつく。

しかも「奥さんを殺された直後」という誰も拒めないカードをフル活用して友人2名の協力を引き出し、彼らをコキ使いまくるものだから、余計に主人公への共感度合いは下がってくる。

その友人にも主人公と同じく奥さんがいて、子供までいる。そんな友人を捨て身の復讐現場に同行させるなんて酷すぎる。

普通、こういうのって主人公は「刺し違えてでも一人でやってやる!」といきり立ち、本当に死にに行きかねない状況を心配した友人たちが自主的に同行するもんじゃなかろうか。

また”ディアブロ”の正体を巡る謎解きにも面白味がなかった。

途中、日サロを経営するハリウッド・ジャック(ティモシー・オリファント)という男がディアブロじゃないかって話になるんだけど、ハリウッド・ジャックがどう見ても小物なので、観客の目をまったく騙せていない。

最後には意外なドンデンも仕込まれているけど、それまでのストーリー展開がまずかったためかサプライズがサプライズたりえておらず、「ふ~ん」と流される程度に終わっている。

2時間弱、退屈するほどひどい出来でもないが、決して良い出来でもないという、これぞ凡作中の凡作と言える映画だった。

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