【凡作】コナン・ザ・グレート_雰囲気は良いが面白くはない(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
SF・ファンタジー

(1982年 アメリカ)
雰囲気は素晴らしいし、画面にもインパクトがあり、日曜洋画劇場で放送される度に、なんだかんだ最後まで見せられてしまうようなパワーのある映画でした。これで面白ければなお良かったのですが。
セット教により幼少期に両親を殺されたコナンは屈強な戦士へと成長し、教団への復讐を開始する。

©Universal Pictures

スタッフ・キャスト

製作はディノ・デ・ラウレンティス

クレジット上の製作はラファエラ・デ・ラウレンティスなのですが、実質的にはその父のディノ・デ・ラウレンティスの映画だと言えます。冒頭では”Presented by Dino De Laurentiis”と、もっとも最初にクレジットされてるし。

1919年イタリア王国出身。1940年から150本以上の映画をプロデュースしており、インディペンデントのプロデューサーとしては最高峰に君臨していました。特に1970年代から1980年代前半にかけては、『キングコング』(1976年)、『ハリケーン』(1979年)、『フラッシュ・ゴードン』(1980年)、『デューン/砂の惑星』(1984年)と、質はともかくかける金は凄まじい映画を多く手掛けており、そんな超大作路線の中で製作したのが本作でした。

監督は名脚本家のジョン・ミリアス

1944年生まれ。『ダーティハリー』(1971年)の脚本をノークレジットで執筆し、その続編の『ダーティハリー2』(1973年)では正式なクレジットを得ました(マイケル・チミノとの共同脚本)。同年の『デリンジャー』(1973年)で監督デビュー。以降、『風とライオン』(1975年)、『ビッグ・ウェンズデー』(1978年)の監督・脚本を手がけました。

ジョージ・ルーカスとは南カリフォルニア大学映画学科時代からの付き合いで、70年代前半には二人で『地獄の黙示録』の企画を進めていたのですが、映画会社からなかなか企画のゴーサインが出ない中でルーカスが『スター・ウォーズ』(1977年)の製作へと移っていき、ルーカスの兄貴分であり、独自に資金調達のできるコッポラに作品の権利を譲渡。また、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1975年)で、インディアナポリス号のエピソードを書いたのはミリアスです。

本作以降も反共青春映画『若き勇者たち』(1984年)、第二次世界大戦中にアメリカ軍の軍人が南の島の酋長になる『戦場』(1989年)などの一風変わった男性映画を監督しました。コーエン兄弟作品『ビッグ・リボウスキ』でジョン・グッドマンが演じたベトナムの話ばかりする銃マニアのウォルターは、ミリアスがモデルだとされています。

脚本は名監督のオリバー・ストーン

1946年生まれ。イェール大学中退後にベトナム戦争に従軍。

除隊後にはニューヨーク大学でマーティン・スコセッシから映画製作を学び、ベトナム戦争時代の経験を元に70年代に『プラトーン』の脚本を執筆したものの、ベトナム戦争映画が忌避されていた時期であったために映画会社からはなかなか製作のゴーサインが出ませんでした。ベトナム戦争映画の企画で行き詰るという点で、ジョン・ミリアスと同様の経験をしていたわけです。

ただし『プラトーン』の脚本の出来は評価されていたことから、脚本家としての仕事を映画会社から依頼され、そこで執筆したのが『ミッドナイト・エクスプレス』(1978年)でした。

同作はいろんな意味でストーンの才気が爆発しまくった作品であり、社会派ドラマとして高い評価を受けてアカデミー脚本賞を受賞した一方で、あまりにも脚色が過ぎることからトルコ政府からのクレームも受けました。実話を変えまくって面白くしたのだから、ある意味で脚本家としては優秀だったと言えるのですが。

その後の大活躍はご存知の通りで、リスクをとる会社オライオンの出資により晴れて制作された『プラトーン』(1986年)でアカデミー作品賞と監督賞を受賞。『7月4日に生まれて』(1989年)で二度目のアカデミー監督賞受賞、『JFK』(1991年)が物議を醸し、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994年)でバイオレンスを極め、80年代から90年代にかけてハリウッドトップクラスの監督として君臨しました。

現在の目で本作の布陣を振り返ると、反米のストーンと反共のミリアスがよくぞ一緒に仕事をしたなという感じですが。また、後に監督業をメインフィールドにしたストーンが脚本に専念し、監督としては芽が出ず脚本家としての評価の方が高いミリアスが監督をしたという人選も、なんだか歪ですね。

アーノルド・シュワルツェネッガーの初主演作

1947年オーストリア出身。1962年にウェイトトレーニングを開始し、1968年に本格的にボディビルに取り組むために渡米。

1970年にはアーノルド・ストロングの名で『SF超人ヘラクレス』に出演したものの、英語が流暢ではなかったためにセリフはすべて吹き替えられました。

言葉の問題はその後も付きまとい、本作においてジョン・ミリアスはナレーションをコナン役のシュワルツェネッガーにさせたかったのですが、ユニバーサルからのNGで魔法使い役のマコ岩松がナレーションを務めました。マコ岩松も日系移民で訛りがあるけど、それはいいんかいって感じですが。

本作は当初のプロデューサーだったエドワード・R・プレスマンが『鋼鉄の男』(1977年)でシュワを見ての抜擢であり、コナン役の唯一の候補だったようです。ただし、後に製作を引き継いだラウレンティスからは蛇蝎の如く嫌われていたのですが。

作品解説

原作『英雄コナン』とは

ロバート・E・ハワードにより著されたヒロイック・ファンタジーのシリーズであり、同ジャンルの開祖的作品であるとされています。

1932年にウィアード・テイルズ誌に掲載された『不死鳥の剣』を皮切りに1936年までの短期間で17編もの短編が発表されたのですが、1936年に原作者のハワードが30歳にして自殺したことから未完の作品となりました。

その後、遺稿の発見や書きかけのメモから別の作家の手直しを経て8編が追加で発表されました。

基本的には1話完結の物語であり、年代順に書かれていない上に時系列や設定にはかなりの矛盾があるために緻密な考証があった作品ではないのですが、1970年代には高名なイラストレーターのフランク・フラゼッタが表紙イラストを描いたことや、マーベルにてコミック化されたことなどにより人気を維持し続け、本作での実写化にまで至りました。

フランク・フラゼッタによるコナン の表紙

エドワード・R・プレスマンによる企画

『英雄コナン』の実写化は『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年)のプロデューサーだったエドワード・R・プレスマンが1977年頃に企画し、すでにボディビルダーとして高名だったアーノルド・シュワルツェネッガーをコナン役にキャスティング。

エドワード・サマーなる人物が初稿を書いた後、『プラトーン』の脚本を読んだプレスマンがオリバー・ストーンに脚本のリライトを依頼。脚本家として脂の乗り切っていた当時のストーンの筆は滑りまくり、全12本の壮大なサーガの幕開けとして本作を位置づけて、設定も古代から文明崩壊後の未来世界へと変更。5万のミュータント軍までが登場するSF超大作となりました。

しかし、プレスマンとストーンは監督探しに難航。一時期はオリバー・ストーンが監督するという話もあったのですが、『邪悪の女王』(1974年)というB級ホラーしか監督した経験のなかった当時のストーンには荷が重すぎるとして却下。

アラン・パーカーやリドリー・スコットに断られて万策尽きたプレスマンとストーンはこの企画からギブアップすることにしました。世界一の大プロデューサーだったディノ・デ・ラウレンティスに脚本を売り払ったのです。

ディノ・デ・ラウレンティスへの譲渡

ラウレンティスは『フラッシュ・ゴードン』(1980年)でも仕事をしたユニバーサルに企画を持ち込み、ユニバーサルは監督契約が残っていたジョン・ミリアスを本作の監督としてラウレンティスに紹介。こうして1980年頃に製作の布陣が整いました。

しかしオリバー・ストーンの脚本では製作費の概算が7000万ドルにも及ぶという問題が残りました。

老舗ユナイテッド・アーティスツを倒産にまで追い込んだ『天国の門』が4000万ドル、かの『スーパーマン』(1978年)でも5500万ドルですから、7000万ドルという金額がいかに突拍子もないものかが分かります。

さすがにこんな映画は作れないということで、一流の脚本家でもあるジョン・ミリアスが全面的にリライトを行い、設定は未来から古代へと戻され、製作費2000万ドルという当時の標準的な大作として制作が開始されました。企画開始から公開まで、実に5年もの歳月を要していました。

2週連続全米No.1ヒット

本作は1982年5月14日に全米公開され、公開9週目にして好調を維持していたコメディ『ポーキーズ』(1982年)や、本作と同じくムキムキが剣を振り回すアルバート・ピュン監督のソードアクション『マジック・クエスト/魔界の剣』(1981年)に大差を付けてのNo.1を獲得しました。

翌週もスティーヴ・マーティン主演のコメディ『四つ数えろ』(1982年)やカーアクション『マッドマックス2』(1981年)を抑えてV2を達成。

『ロッキー3』(1982年)が公開された3週目にして首位陥落しましたが、全米トータルグロスは3956万ドルで年間興行成績15位のスマッシュヒットとなりました。

世界マーケットでも同じく好調であり、全世界トータルグロスは6885万ドルで年間11位という結果を収めました。製作費2000万ドルということを考えるとかなりの利益の出た作品だったと思われます。

登場人物

  • コナン(アーノルド・シュワルツェネッガー):幼い頃にタルサ率いるセット教に村を襲われて両親を殺され、自身は奴隷の身となって肉体労働を強いられた。そんな労働の結果得られた筋肉隆々の肉体を商人に見初められて剣闘士となり、連戦連勝のチャンピオンになったが、ある日突然解放されて自由の身になった。ぼったくりバーの呼び込みのような怪しい女(実は化け物)の色仕掛けに引っかかって殺されかけたりしながらもヴァレリア、サボタイと出会い、盗みに入った王宮でオズリック王より高額報酬と引き換えにセット教と戦うことを依頼され、親の仇討ちと一石二鳥の仕事を引き受けることにする。なお、奴隷にされたり剣闘士になったりといった設定は原作のコナンにはなく、同じくロバート・E・ハワード原作の『征服者カル』が参照されています。
    この役でシュワは本作でラジー賞男優賞にノミネート(受賞は『インチョン!』のローレンス・オリヴィエ)。
  • タルサ・ドゥーム(ジェームズ・アール・ジョーンズ):蛇を信仰の対象にするセット教を率いており、非信徒の村を襲うことで版図を拡大するという、強引にもほどがある布教活動を行っている。基本的には冷血漢であるが、腹心に対しては優しく、コナンとの戦いで間抜けな負け方をした部下を叱りつけるどころか、体を気遣うような素振りも見せた。魔法を使って蛇を矢に変える、自身が大蛇に変身するという大技も使える。
    ジョン・ミリアスによると彼にはアトランティス人の最後の生き残りという設定があり、そのために黒人だが青い目を持つという、現生人類にはない特徴を持たせたとのこと。
  • ヴァレリア(サンダール・バーグマン):オズリック王の宮殿に宝石を盗みに入ろうとしたところ、同じ目的を持ったコナンとサボタイと出会い、以降は2人と行動を共にする。コナンとは恋仲になったが、まずコナンがセット教に囚われて死の淵を彷徨い、次にヴァレリアがタルサの放った毒矢の餌食となり、カップルで散々な目に遭わされた。
    演じるサンダール・バーグマンは本作でゴールデングローブ年間最優秀新人賞受賞。
  • サボタイ(ジェリー・ロペス):盗人で弓の名手。鎖につながれて狼の餌にされかけていたところをコナンに救われて意気投合。俺とお前の神様のどちらが強いかとチャイルディッシュな話をしたり、立ち寄った街で食べ歩きをしたりと、コナンとの二人旅を思いっきり楽しんだ。その後ヴァレリアを加えて3人組になり、しかもコナンとヴァレリアがくっついて何となく除け者感が出ても嫌な顔一つしないという、底抜けのナイスガイ。本作で生き残ったことからコナンの長年に渡るパートナーになるのかと思いきや、続編の『キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2』(1984年)には登場しない。
    演じるジェリー・ロペスはジョン・ミリアス監督の友人のプロサーファーで、役者ではない。
  • 魔法使い(マコ岩松):セット教の本拠地へと乗り込もうとしていたコナンと出会った。その後、セット教から半殺しのリンチを受けた上に、荒野に磔にされて死の淵を彷徨ったコナンを死神から救った。
  • オズリック王(マックス・フォン・シドー):自身の宮殿から財宝を盗み出したコナン、ヴァレリア、サボタイを捕まえたが、罰するどころかその腕っぷしや度胸を褒め称え、セット教に入信して国を出て行った娘のヤスミナを連れ戻すことを3人に依頼する。元はスターリング・ヘイドンがキャスティングされていたが撮影開始直前に急病で降板し、すでに国際的スターだったマックス・フォン・シドーにダメ元で代役を依頼したら、思いがけず出演OKをもらえた。

感想

ソードファンタジーの元祖

前述した通り原作の『英雄コナン』はヒロイック・ファンタジーの元祖であり、その後に『指輪物語』などが続くことになるのですが、その実写化企画の本作も、映画界におけるソードファンタジーの元祖となります。時代劇風の世界で主人公がパーティーを組んで冒険し、敵は魔法を使うという映画って、それまではありそうでなかったのです。

しかも本作はファンタジーの世界を舞台にしながらも、黒澤明を崇拝するジョン・ミリアスによって歴史映画としてのルックスを作り上げられており、ファンタジー臭さがないという点も独特な味わいとなっています。ファンタジー小説をエピックものに換骨奪胎し、最初から最後まで重厚さを維持し続けたジョン・ミリアスの手腕は確かなものだったと言えます。また、いまだに耳にする機会の多いベイジル・ポールドゥリスによる仰々しい音楽もまた、この世界観に貢献しています。

古代のスーパーバイオレンス

しかも、バイオレンスは冒頭からフルスロットル。コナンの村は焼き払われ、勇敢に戦った父は背中を斧で刺された後に闘犬に噛み殺され、母はタルサに首をはねられます。剣闘士にされたコナンは殺すか殺されるかのリングで生き、セット教は若い女を生贄に使います。暴力と死、血と裸が全編を覆いつくしたスーパーバイオレントな作風であり、2000万ドルもの大金を使ってここまでやれたのは、大手スタジオが直接指揮を執らず、ディノ・デ・ラウレンティスという独立系のプロデューサーが全権限を持って率いていたからだろうと思います。

見応えのあるプロダクション・デザイン

本作のプロダクション・デザインを担当したのは『エイリアン』(1979年)のロン・コッブ。青年期のコナンがこき使われたグルグルマシーンや、セット教団の壮大な神殿、洞窟内のいかがわしい隠れ家など、合理的ではないが古代には実在していそうな独特な美術が世界観を作り上げています。これらもかなり見応えがありました。

ただし鈍重な展開が足を引っ張る

そんな感じで雰囲気や世界観は非常に良いのですが、映画全体は鈍重で娯楽作としての面白みには欠けることが弱点となっています。物語は観客に次の展開を期待させるような求心力を持っておらず、素晴らしい場面がスポットで登場するのみ。クライマックスでコナンがついにタルサの首を獲り復讐を成し遂げる場面にも、そこにあるべき高揚感が宿っていませんでした。

あのクライマックスはヤケクソ気味に撮ったのかと思うほど拍子抜けで、劇中、コナンは二度タルサの暗殺に失敗しているのですが、あの場面ではそれまでの苦労が嘘のように簡単にタルサの背後をとることに成功し、意外なほどアッサリとその首を獲れてしまいます。もうちょっと何とかならなかったんでしょうか。

リブート『コナン・ザ・バーバリアン』(2011年)

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