【凡作】スターゲイト_牧歌的な宇宙革命(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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(1994年 アメリカ)
前半は面白いのに、後半に向けて計ったようにつまらなくなっていくという、いつものエメリッヒ作品。お膳立てはいいんだけど、ドラマをやりきる演出力がないということなのだろう。

作品解説

若手スタッフ多数起用

公開当時は「構想12年!」と宣伝されていたが、本作はローランド・エメリッヒが映画学校の生徒だった頃に思いついた話らしい。

どういうわけだか90年代には「構想○○年」という宣伝文句が流行っていたのだが、実現にまで時間がかかったのは期待されていなかったということでもあり、それを謳うのはどうなんだろうと当時から不思議に思っていた。

そんなどうでもいい文句はさておき、アンドリュー・デイヴィスの代打として監督した前作『ユニバーサル・ソルジャー』(1992年)のヒットによって大物プロデューサー マリオ・カサールからの信頼を勝ち取ったエメリッヒは、本作の企画をカサール率いるカロルコ社に持ち込む。

『トータル・リコール』(1990年)『ターミネーター2』(1991年)などの大作を大ヒットさせていたカロルコは太っ腹で、ユニソルの倍以上となる5000万ドルの予算を付けてくれた。

製作に入ったエメリッヒは、ドイツ時代からの馴染みのスタッフ(脚本のディーン・デヴリン、撮影のカール・ウォルター・リンデンローブ)に加えて、大作経験のない若手スタッフも積極的に登用。

音楽のデヴィッド・アーノルドは英国製クライム映画『プレイデッド』(1993年)の経験こそあったものの、当時はまだアーティストとして喰えておらずレコード屋でバイトする身だった。

エメリッヒはそんなアーノルドの才能を見出して本作に起用したが、その実力は本物で、その後『インデペンデンス・デイ』(1996年)、『GODZILLA』(1998年)とエメリッヒ作品を連続して担当し、ついには007シリーズを5作連続で手掛けるまでに成長する。

その手腕は巨匠ジョン・バリーからのお墨付きも受けるほどだったので相当なものである。

クリーチャー・デザインを担当したパトリック・タトポロスもまた実績のない新人だったが、本作と『インデペンデンス・デイ』(1996年)の実績でハリウッドを代表するデザイナーの一人となり、『ジャスティス・リーグ』(2018年)など現在でも第一線で活躍している。

全米No.1ヒット

1994年10月28日に全米公開され、2種連続1位だったタランティーノ監督の『パルプ・フィクション』(1994年)やスタローン主演の『スペシャリスト』(1994年)を抑えて初登場1位を記録。

翌週にも売上高はさほど落ちることがなく、ロバート・デ・ニーロ主演の『フランケンシュタイン』(1994年)を僅差で破ってV2を達成。

全米トータルグロスは7156万ドルで、全米年間興行成績15位というヒットとなった。

また10月公開作品としては史上最高の興行成績だった。この記録は『アンツ』(1998年)に破られるまでの4年間に渡り保持される。

国際マーケットではさらに好調で、全世界トータルグロスは1億9656万ドルにのぼった。

製作費5500万ドルの作品としては上出来な売上である。

ディレクターズ・カット版

劇場公開版よりも10分長いディレクターズ・カット版もリリースされている。

古代エジプトで太陽神ラーが少年の体を乗っ取る場面と、1928年の遺跡発掘場面でスターゲイトの下からアヌビス・ガードの石碑が発掘される場面が主な追加フッテージなんだけど、いずれもあってもなくても作品の印象に大差はない。

そんなわけでさほど有難みのあるバージョンでもないのだが、かつてリリースされたDVDは劇場版と異なるマスターが使用されていたようで、比較すると明らかにディレクターズ・カット版の方が画質が良いというメリットはあった。

感想

昔から一貫して面白くない

劇場公開当時は結構な話題作だったが、期待して見ると全然面白くなくてガッカリした覚えがある。

そんな初対面もあってか私にとってはどうでもいい映画で、ちゃんと見返すこともなかったんだけど、数年前にふと気になる瞬間があった。

安ければBlu-rayを買おうと思ってアマゾンを覗いて見たのだが、なんとリリースされていない。どういうわけだか日本国内では長期廃盤中であり、アメリカではとっくに出ているBlu-rayが発売されないばかりか、Amazon等の動画配信でも見られないということをその時に知った。

ただし「見られない」と言われると余計に見たくなるのが人情というやつで、どうしても欲しくなった私は中古DVDをメルカリで落札した。2003年にリリースされた2枚組スペシャルエディションで、落札額は1000円くらいだったと思う。

なんだけど入手した時点ですでに興味はなくなっており、そこから数年ほど放置してしまった。って、どんなやねん笑

最近になってようやっとDVDを鑑賞したのだが、フルHDを通り越して4Kが当たり前の時代にDVDのSD画質はなかなかしんどい。

この低画質の時点でテンションはかなり下がったんだけど、内容面においても、前半は面白いのに終盤に向けてきっちり計ったように盛り下がっていくというエメリッヒ節全開で、全体で見ると不出来に感じた。

ただし各場面はかなり鮮明に覚えており、忘れていたり、記憶違いをしていた場面などはなかったので、なんだかんだで印象に残る映画ではあるのだろう。

主人公2人が揃ってネガティブ

主人公は考古学者のジャクソン(ジェームズ・スペイダー)と米空軍のオニール大佐(カート・ラッセル)の二人。彼らの人となりが描かれる前半パートのみ面白かった。

ジャクソンは気鋭の考古学者だが、従来の通説を全否定する学説が尖りすぎて研究資金は打ち切られ、アパートの家賃を払うにも事欠いている。

新たな支援者を求め最後の望みをかけて行った講演会も不評で、ついに万策尽きたジャクソンだが、そこに米空軍からスターゲイト作戦への参加依頼が舞い込む。

軍隊が絡む考古学プロジェクトなんて怪しさ全開で乗り気ではないのだが、そうはいっても今のジャクソンにとって給料を受け取れる仕事は貴重であり、背に腹は代えられないことから、これを引き受けることに。

もう一人の主人公オニール大佐は空軍のエリート将校だが、拳銃の暴発事故で一人息子を亡くしてメンタルが完全に壊れていた。

そこに古巣の空軍が現れ、スターゲイト作戦の責任者になることを要請してくる。

命がけの任務になる可能性が高いことから、死をも恐れない人選をしてオニールに辿り着いたのだろうが、自殺願望を抱いていたオニールにとっても渡りに船で、これを引き受けることにする。

この手の映画の場合、外宇宙への夢や浪漫に憑りつかれた者を主人公にすることが多いのだが、主人公二人が揃って後ろ向きで、スターゲイトへの関心もないというのが本作の面白いところ。ジャクソンが「このまま成果を出せないとクビにされるかも」とビクビクする辺りも好きだ。

当時のエメリッヒはハリウッドでの地位を確立していなかったし、前述した通りメインスタッフにも若手が多かったことから、「ミスったら辞めさせられる」という焦りは製作現場全体に漂っていたのだろう。

それが作品にも反映されたことで、ドラマに切実なものが感じられる。壮大なSFでありながら、こうした庶民感覚を持ち込めたことが本作のドラマの強みだろう。

負け犬の再生物語が中途半端

ただし、本論に入ろうとする段階から雲行きは怪しくなっていく。

ジャクソンのドラマはスターゲイトが開く前ですでに完結してしまう。

前任者が2年かけても解読できなかった記号をわずか2週間で解読してみせたことで、研究者としての腕前は十分に証明された。軍隊の大プロジェクトに貢献したことで、今後はスポンサーに困ることもなくなるだろう。

前半部分ですでに問題解決したジャクソンには、リスクを冒してまでスターゲイトをくぐる個人的な動機がない。そもそも彼はスターゲイトそのものへの関心を抱いておらず、仕事として引き受けたに過ぎないのだし。

ここでジャクソンへの興味は尽きてしまった。

エメリッヒも、ジャクソンに語るべきドラマが無くなったことには気付いていたようで、後半では現地の美女とのロマンスという新展開を置いてはいるのだが、こちらはあまりに類型的すぎて面白みがなかった。

ではオニールはというと、こちらはこちらで死を覚悟した人間らしい異常性がなく、やがてありきたりなヒーロー像へと落ち着いてしまう。

革命を求める現地青年たちとの関わり合いの中で、彼らを守ることに新たな生きがいを見出すというドラマはシナリオレベルでは考えられていたのだろうが、映画ではそのように機能していない。

現地人と軍人たちとの交流が致命的に不足しているし、固く閉ざされていたオニールの心が開いていく過程も説得力ある形で提示されていない。これがエメリッヒの演出力の限界だったのだろう。

終始仏頂面のオニールは、最後の最後に笑顔を見せる。

我々観客はあの笑顔で感動すべきだったのだろうが、特に感じるものがなかった辺りが、このドラマの不出来を象徴している。

太陽神ラーが阿呆この上ない

更にがっかりなのが、後半に姿を現す太陽神ラー(ジェイ・デヴィッドソン)が阿呆この上なかったことだ。

太陽神とは名乗っているものの、正体は宇宙人で、彼らにとってはメンテナンスが容易だという人間の体に寄生して生きている。

舞台となる惑星アビドスの鉱山開発を進めたかったラーは、スターゲイトを使って地球人を移動させ、労働力としてこき使っていた。

それが紀元前8000年のことであり、かれこれ1万年に渡ってアビドスの民衆達を支配してきたのだが、それだけ長期に渡る統治が可能になるほどの知性がラーからは感じられない。

ラーは、アヌビス・ガードという兵士を大衆を抑え込むための暴力装置として使っているのだが、これがほんの数人しかいないので人手不足にも程がある。

数千人はいると思われる奴隷たちが本気出せば簡単に打倒できそうだし、実際、打倒されてしまうんだけど、よくぞこんな脆弱な管理体制で1万年も持ちこたえてきたなと思う。

さらに阿呆なことに、ラーは腹の虫の居所が悪いとすぐにアヌビスを罰してしまう。ただでさえギリギリの少人数で回しているのに、ラー自ら部下の戦力を奪いに行くのだから話にならない。

こんな阿呆なボスに振り回されるアヌビス達が気の毒に思えるほどだった。

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