【良作】モータルコンバット(2021年)_容赦のないアクションと変な話(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
SF・ファンタジー

(2021年 アメリカ)
格闘ゲーム「モータルコンバット」の再映画化で、動ける俳優たちによる華麗なアクションや、容赦のない残酷描写など、見せ場には気合入りまくりで見ごたえがあった。一方、話は滅茶苦茶で、あまりに滅茶苦茶すぎて逆に楽しめるという次元に突入しているので、ある意味こちらにも注目していただきたい。

※時間がなかったので、いつもの”ですます調”をやめていて変な感じかもしれませんが、ご了承ください。

感想

容赦のないアクションが良い

欧州で人気の格闘ゲーム『モータルコンバット』の映画化。

1995年にも、後に『バイオハザード』シリーズ(2002~2016年)を手掛けるポール・W・S・アンダーソンが監督を手掛けていて、そちらは中学時代に鑑賞したのだが驚くほど面白くなかった。

中坊が見てもつまらないゲームの実写化って、いったい誰のために作られてるんだよと思ったものの、どういうわけだか3週連続全米No.1ヒットとなり、2本の続編も作られた模様。私は見ていないが。

そんなしょっぱい思い出しかない『モータルコンバット』だが、今回は『ソウ』『インシディアス』とゴリゴリのホラー人材であるジェームズ・ワンが製作に加わっており、バイオレンス描写は見違えるレベルになっている。

殴られれば血が飛び散る、刃物で斬りつけられれば傷口パックリ。体を真っ二つに切断されたり、どてっ腹に空いた穴から向こうの景色を見せるという『地獄の謝肉祭』(1980年)的な場面があったりと、ゴア描写の創意工夫や躊躇のなさが凄い。

そして、ハサシ・ハンゾウ役に我らが真田広之、強敵サブゼロ役に『ザ・レイド』のジョー・タスリムと、動ける役者を配置していることから、格闘や剣術にも見ごたえがあって実によろしい。

その他、ソニア・ブレイド役には『Meg ザ・モンスター』(2018年)でジェイソン・ステイサムの奥さん役を演じたものの、興行的理由から途中で中国人女優にヒロインの座を奪われるという不遇を受けたジェシカ・マクナミーを配役。

フィルモグラフィーを見るに、彼女には特にアクションの素養があるようには思えないものの、本作では実に良い動きで盛り上げてくれる。美人でタンクトップ姿というのも眼福であった。

そして、1995年版では主人公だったリュウ・カン役には『パワーレンジャー』(2017年)でブラックレンジャーを演じたルディ・リンを配役。

パッと見は若い頃の堂本光一と堂本剛を合体させたようなマイルドなイケメンだが、体はバッキバキでブルース・リー並の体脂肪率かと思ってしまった。こちらもある意味眼福。

この通り、良い弾が揃っているので、アクションのレベルは全般的に高い。

特に真田広之vsジョー・タスリムは達人同士の戦いということで、動きのみならず、場の緊張感らしきものも伝わってきて、実に見ごたえがあった。

トーナメント試合をする気なし

と、アクション映画としては充実していて面白かったのだが、話はかなり滅茶苦茶。

あまりにも滅茶苦茶すぎて途中から笑って見たので、そういう目で見れば盛り上がれる。中途半端におかしいくらいなら、これくらいおかしい方がスカッと気持ちいいよねと言える、それくらい話が変。

まず設定が凄い。

人間界の守護神ライデン(浅野忠信)と魔界の王者シャン・ツン(チン・ハン)が、それぞれ戦士を率いてモータルコンバットという格闘トーナメントをしているのだが、ライデン側が10連敗すると地球の覇権がシャン・ツンに移るとのこと。

そんな重要な試合が人知れず行われていることがまず凄いし、シャン・ツンは10連勝しないと目的を達成できないって、あまりにもルールが魔界に不利すぎて笑う。せめて勝ち越した側とかにできなかったのかね。

ただ、そんな圧倒的な優遇があるにも関わらずライデン側は9連敗中で、もう後がない。って、どんだけ弱いんだよと。

そんな負けチームを率いておきながら、浅野忠信もよく偉そうな顔していられるなと思ったりで。もう監督交代した方がいいんじゃないの?

で、ライデン側は崖っぷちではあるのだが、10戦目で圧倒的に強い選手が出てきて盛り返すという予言があって、どうもそれがライデンもシャン・ツンも本気にするくらい精度の高い予言らしいので、双方がこの強い奴を探すというのが本作の骨子。

なんだが、神様も真に受けるほど精度の高い予言があるのなら、もう試合する必要なくね?とも思うわけで、基本設定がもうボロボロ。

そして、シャン・ツンは10戦目をやると負けると思ってるので、ライデンチームの本拠地を直接襲って試合をできないようにしようとする。タイトルが『モータルコンバット』なのに、モータルコンバットをするつもりがないというのがまた凄い。

ライデン側はこの襲撃で大打撃を受けるのだが、じゃあこちらはモータルコンバットに向けて正々堂々と体制の立て直しをするのかと言えばそうでもなく、「それならこっちもやってやるわい」ということで、今度はシャン・ツン側の選手を一人ずつ襲って消すことにする。

しかも最強のサブ・ゼロには単体では勝てそうにないので、他の奴を全部倒した後で、全員で襲い掛かろうという卑怯にも程がある作戦を立てる。

不意打ちとはいえチームvsチームの戦いには持ち込んでいたシャン・ツンと比較しても、ライデン側の戦略の姑息さが光っていて、一体どちらが悪者なのかが分からなくなる。

よくこんなに出鱈目な話を考えられたものだと、一周回って感心した。

主人公が空気

そんな話なので、中心人物は10戦目で出現すると言われている最強の戦士ということになる。

『デッドプール2』でX-フォースのメンバーの一人を演じたルイス・タン扮するコール・ヤングがこれに該当するのだが、登場時点のコールはネタにされるほど弱い総合格闘家という設定がなかなか興味深い。

人間の格闘界でも弱い部類に入るコールが、ライデン側の切り札として覚醒するという『ドラゴンボールZ』の孫悟飯的な話になるのかなと思って見ていたのだが、コールが最後までパッとしないので、話に筋が通っていない。

ライデンチームからスカウトされたコールは、みんなから期待のルーキー扱いされて修行に励むのだが、全然強くならない。

で、ライデン監督から「やる気ないなら帰れ」と言われ、それは野球部とかでよくある帰っちゃいけないパターンなのに、コールは「短い間でしたがお世話になりました」と言って帰ってしまう。

で、家族のところに帰ったら帰ったで案外簡単に覚醒するので、コールの成長譚という要素はほぼほぼ消えている。

しかも、覚醒したコールが圧倒的に強いかというとそうでもなく、サブ・ゼロに追い込まれて絶体絶命のところを、スコーピオンとして蘇ったご先祖様ハンゾウに助けられるし、最終決戦はほぼハンゾウが戦うのでコールの出番がないし、最後の最後はハンゾウとコール二人がかりでサブ・ゼロを倒すという卑怯な戦略に打って出るしで、全般的にコールに見せ場がない。

主人公なのに空気。こんなにひどい扱いを受けたコールにはちょっと同情したほどだが、彼のドラマに筋が通っていないことが作品のクォリティに直結しているので、もっと頑張って欲しいところだった。

パワーアップのしかたが斜め上過ぎる

あと変だなと思ったのが、戦士たちのパワーアップのしかたが全般的におかしかったこと。

戦士としての覚醒と言われると、肉体に変化が起こったり、感覚が研ぎ澄まされたり、技を会得したりということをイメージするのだが、本作のパワーアップはそんなものではない。

例えばコールはゴロウ王子との戦闘中に覚醒するのだが、その瞬間、体からダサいデザインの鎧が湧いてきて、上半身だけがフルアーマーになる。

そして、武器もモリモリと出現してくる。思ってた覚醒と全然違ったので驚いた。

また序盤でコールを逃がすために両手を失ったジャックスはライデンの寺院で治療を受けている。

坊さんたちが彼の面倒を見ているので、東洋の秘術で彼の腕を再生するのかと思いきや、ロボットアームを取り付ける。坊さんとロボットアーム、この取り合わせに驚いた。

そしてロボット・アームになったジャックスは、シャン・ツン軍団との格闘の最中に覚醒するのだが、失った腕が再生するなどの肉体の変化かと思いきや、貧弱だったロボットアームがごつくてかっこよくなるという変化だったので、「そっちかい!」とつっこんでしまった。

まぁ滅茶苦茶なのだが、ネタ映画だと思って見れば楽しめるので、本作は真面目に見過ぎないことが重要なのである。

スポンサーリンク
公認会計士のB級洋画劇場