【駄作】ハイランダー2 甦る戦士_設定ブチ壊し続編(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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(1991年 アメリカ)
カルト的な人気を博した『ハイランダー 悪魔の戦士』(1986年)の続編だけど、急な設定変更により「ハイランダーの悲劇の物語」はぶち壊しだし、チャンバラも随分と雑になった。余計なことしかしていない、これぞダメ続編の見本のような映画。

感想

昔、金曜ロードショーで見ただけど、あまりのつまらなさに再見してこなかった映画。Amazonプライムで本日12/30限りで配信終了とのことだったので、慌てて見た。

なお本作には複数バージョンあって、金曜ロードショーで放送されたのは90分の劇場公開版、配信で見たのは109分のディレクターズ・カット版。

長くなることで面白くなる映画もあるけど、本作の場合はただでさえ面白くない映画が20分も延びて、余計にしんどくなっただけだったが。

一応、前作『ハイランダー 悪魔の戦士』(1986年)と繋がった話にはなっているんだけど、ディストピアSFの趣が入ったり、唐突な異星人設定を付け加えられたりとちょい足しが多すぎたためか、その後のシリーズではなかったことにされている。

1999年の地球はオゾン層が完全に破壊されており、全人類が皮膚病のリスクを負っていた。

この危機に対し、前作のラストにて叡智と財力を手に入れたコナー・マクラウド(クリストファー・ランバート)は、地球をすっぽりと覆うレーザー・シールドを開発して多くの人命を救ったが、それと引き換えに地上は昼間を失った。

時は移って2024年、シールド開けろと迫るエコテロリスト ルイーズ(ヴァージニア・マドセン)が、こんな世界にした張本人であるマクラウドに接触してくる。

時を同じくして、マクラウドと同族のカターナ将軍(マイケル・アイアンサイド)は、マクラウドに向けて2名の刺客を放ってくる。彼らの母星での500年前のトラブルの幕引きが、その理由らしい。

ルイーズの目の前で刺客を倒してみせたことが影響したのかどうか定かではないが、本来は敵対者同士であるはずのマクラウドとルイーズは豪快に発情し、路上でおっ始める。

ここから二人はカターナの追撃をかわしつつ、シールド開放に向けての活動を始めるというのがざっくりとしたあらすじだけど、設定やプロットが錯綜していて分かりづらいったらありゃしない。

前作においてハイランダーは不死の特性を持った謎の民族のような扱いだったけど、本作では異星人ということにされている。

彼らの母星はカターナ将軍による圧政に苦しめられており、これに対抗する組織を率いていたのがマクラウドと、その師匠筋のラミレス(ショーン・コネリー)だったが、反乱は挫折してマクラウドとラミレスは地球への島流しに遭っていたという設定が、唐突に挿入される。

カターナ将軍は惑星の統治者ということで知性面でも肉体面でも優れた強敵であることを期待するのだけど、これがマイケル・アイアンサイドが演じてきた数多くの悪役の中でも、もっとも頭の悪いキャラに成り下がっている。

地球に来ていきなりやったのが、子供みたいに地下鉄を暴走させることで、知性の欠片も感じさせられない。その後にもタクシーの運ちゃんにウザ絡みしたりと意味不明な行動が多く、為政者という設定と、その実やってることの頭の悪さとの乖離が、ストーリーにも混乱をもたらしている。

それはマクラウド側にも言えることで、レーザーシールドの開発者であるマクラウドが、エコテロリストと協力してその破壊に乗り出すという展開は、直感的にわかりづらい。開発者としての影響力を行使して、しかるべき人たちに正式に申し入れれば済む話じゃないかと思えてならないのだ。

さらに、ダメ元でオファーしてみたら通ってしまったかのようなショーン・コネリーの存在も、ストーリーからは完全に浮いていて邪魔にしかなっていない。コネリーがスーツを仕立てる場面だけなぜかお天気で、昼間がなくなった世界という設定が守られていなかったし。

加えて、『ブレードランナー』(1982年)を多分に意識したディストピアSFでありながら、要所要所で下らんコメディ要素が入ってくるあたりのテイストのまとまらなさ加減も面倒くさかった。

ラッセル・マルケイ監督はストーリーなんぞどうでもよくて、かっこいいチャンバラを撮れれば良かったのかもしれないが、肝心の見せ場もイマイチだった。

ジェットパック装備の刺客vs反重力スケボーのマクラウドの見せ場は「吊ってます感」全開で、2年前の『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989年)にはまったく及ばない完成度だし、剣劇も鈍重で迫力に欠ける。

クライマックスのマクラウドvsカターナなんて「え、もう終わり?」と言いたくなるほどのアッサリ加減だったし。

この通り、まったく褒めるところのない駄作だが、制作過程でプロデューサーと監督が完全な対立関係となり、演出以外の部分で関係者の労力が使われてしまったことが、その原因らしい。

自分のあずかり知らぬところで劇場版を作られたラッセル・マルケイ監督は憤慨し、上映開始後15分でワールドプレミアから退席してしまうほど荒れていた。

一時はクリストファー・ランバートも降板を考えたが、契約の縛りで出演を継続せざるを得なかったらしい。

本編よりもメイキングの方が気になる映画だけど、日本版Blu-rayに収録されているのは複数バージョンの本編のみで、メイキングドキュメンタリーは未収録のようだ。

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