(2023年 アメリカ)
3億ドルもの製作費がかけられた空前絶後の10作目。ストーリーにまとまりはないが、ジェイソン・モモア、ブリー・ラーソンら新キャストの魅力と、途方もないことになった見せ場の物量・熱量で何とかなっている
感想
今回が初鑑賞(@Amazonプライム)。
あまりの評判の悪さに警戒心があったものの、阿呆みたいに肥大化したアクションの連続と、ムキムキ男達の更なる増員で、個人的には十分アリな内容だった。
第5作『MEGA MAX』を見ていて、悪党の金とはいえドムとブライアンにそれを奪う大義がなさすぎるだろという感想を持ったんだけど、案の定、そのしっぺ返しを受けるというのが本作の概要。
『MEGA MAX』の悪役レイエスには息子がいたのだが、ファミリーの金を奪われた上に、父親まで殺されたというので、ドム達に対する復讐を開始するというのが、ざっくりとしたあらすじだ。
本作の主人公ともいえるレイエスの息子ダンテ役には『アクアマン』(2018年)のジェイソン・モモア。
DCEUの一翼を担った存在感と、かつてアーノルド・シュワルツェネッガーからコナン役を引き継いだ経歴を持つほどの肉体で、「ドムをもってしてもこいつには勝てないんじゃないか」と思わせるヴィラン役を熱演。
さらに新規投入されたのが秘密工作機関「エージェンシー」の工作員テス(ブリー・ラーソン)とエイムス(アラン・リッチソン)。
ブリー・ラーソンは『ルーム』(2015年)でアカデミー主演女優賞を受賞した実力派にして、MCUではキャプテン・マーベルを演じているスター。ここにアクアマンvsキャプテン・マーベルが実現したわけだ。
アラン・リッチソンはAmazon製作の連続ドラマ『ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~』(2022年)の主演で、原作通りのムキムキ大男ぶりが絶賛されている。
モモア、リッチソン、そして前作でメンバー入りしたジョン・シナと右を見ても左を見てもムキムキだらけで、お肉の食べ放題状態だ。筋肉マンがこれだけ揃うだけで、アクション映画としての説得力が格段に違う。
女性陣も負けてはいない。
前作、前々作のヴィランであるサイファー(シャーリーズ・セロン)もまたダンテに襲われ、ドム一家とは「敵の敵は味方」状態になる。
とはいえ赤ん坊だったリトルB(ドムの息子)をさらう、ドムの元カノ エレナを殺すなど、過去の悪行の数々が「状況が変わったので水に流そう」とも言っていられないレベルだったので、ファミリー入りは保留となっていた。
そんな折、レティ(ミシェル・ロドリゲス)と拳を交えたことで打ち解け、二人は行動を共にすることに。
『ICE BREAK』のホブスvsデッカードもそうだったけど、殴り合いで過去の経緯を有耶無耶にするというのが、本シリーズの伝統らしい。
なおここからは私の推測だけど、「実は生きていました」と言って次回作にてエレナがひょっこり帰ってくるのではないかと思っている。ミスターノーバディに匿われてたとか適当なことを言って。
そういえばミスターノーバディも生死不明の状態が続いているが、カート・ラッセルのギャラが折り合えば戻ってきてくれることだろう。
ストーリーはシリーズ中もっともまとまりがない。
- ダンテを倒すべくリオに向かうドム
- ジェイコブとリトルBの叔父さん&甥っ子コンビの逃避行
- エージェンシーの隔離施設から脱出するレティとサイファー
- お尋ね者になったローマン、テズ、ラムジー、ハンの珍道中
4グループが別々に動いているので勢いがないし、ローマン、テズ、ラムジー、ハンのパートはふざけているだけで特に見せ場もなかった。
加えて次回作と前後編になる予定で本作だけでは何も解決しない、後編に向けた下準備に過ぎないくだりも多いなど、作劇面での不利も多かった。
そんなストーリー面での不備を補うべく、見せ場はやりすぎのさらに上をいっている。製作費は3億ドルともいわれており、常にどこかでボッカンボッカン爆発が起こって大変なことに。
ローマなんて半壊させられるし。しれっと「死者はいませんでした」なんて報道が挟まれるけど、絶対にそんなことなんてないでしょ。
またジェイコブが隠し持っていた車がキャノン搭載という物騒にも程がある仕様で、本シリーズのファンならばグっと来ずにはいられない。
ドム、ジェイコブ&リトルB、エイムスが合流するクライマックスの見せ場は熱量・物量共に最高レベルに達しており、バカバカしくも楽しいアクションに目が釘付けになった。
当初、本作にはジャスティン・リン監督が戻ってくる予定だったが、意見の相違を理由に離脱。
そのあとを引き継いだのが『トランスポーター』(2002年)のルイ・レテリエ監督だったが、カーアクションの演出を得意としてきたレテリエは、ちゃんと本作のルックスを作り上げている。
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