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クライムアクション
クライムアクション

(2017年 アメリカ)
ドムが敵の手に落ちる第8作。お話の方はいつもに輪をかけて適当だが、新監督F・ゲイリー・グレイのアクション演出が冴え渡っており、見せ場の楽しさはシリーズ随一と言える。

感想

これも映画館に見に行ったけど、特に面白いとは感じなかったので、その後は一度も見返してこなかった。

ただし今回のワイスピ短期集中特訓でシリーズの見方も分かってきた状態で見ると、これが随分と面白く感じられるようになった。シリーズ中でも上位に入る出来ではないだろうか。

今回の敵はサイバーテロリストのサイファー(シャーリーズ・セロン)

『EURO MISSION』でオーウェン・ショウを、『SKY MISSION』でモーゼ・ジャカンディを操っていたというシリーズ通しての黒幕、仮面ライダーで言う岩石大首領的な大悪党。

何度もドムファミリーに煮え湯を飲まされ続けてきた彼女は、ついにドム当人を配下に置くことにする。

かつてドムと良い仲になったが、元カノ レティ(ミシェル・ロドリゲス)との復縁で潔く身を引いていたエレナ(エルサ・パタキー)が闇に子供を出産していたとのことで、エレナとドムジュニアを誘拐し、ドムを脅迫したのである。

不本意ではあるがサイファーの手先となって動くドム。

サイファーの狙いは、まずベルリンの武器商人の手元にあった電磁パルス兵器、そしてNY訪問中のロシア外相が持っている核ミサイルの発射スイッチ。

これらをもって、過激派に占拠されているロシアの海軍基地を襲って原子力潜水艦を奪い、核ミサイルで全世界を脅迫するという、実に壮大かつ回りくどい計画を実行に移す。

とにかくサイファーの計画が分かりづらいのが本作の欠点で、初見時にはよく理解できなかった。ま、理解できたところで面白さが増大するような映画でもないが。

あとサイファーの凄いのが、これだけの計画をドム一人にやらせるということである。

サイファー直属の部下もいるが、彼らの仕事は専らドムを監視することで、計画の実行を担うのはドムたった一人。

そして、困難なミッションを一人でクリアーしていくドムも凄い。第1作時点ではDVDプレイヤーを盗むちんけな犯罪者に過ぎなかったが、今では世界トップクラスの工作員である。

強力なドムを敵に回した元ファミリー達がどうしたのかというと、前回の悪役デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)を味方に加えた。

これまでも新キャラを貪欲に取り込み続けたファミリーだが、ファミリーの一人ハン(サン・カン)を殺したショウを受け入れるのはさすがにどうだろう。

この疑問に対しては、次回作にてかなり強引な解決策が提示されるのだが、本作時点ではまったく納得できなかったなぁ。

キャラの使いまわしの強引さで言えば、エレナの扱いも酷かった。

ドムのパートナーという点でレティとは立場が重複するため、ヘタに残しておくと「過去の女関係を清算しないドム最悪~」となりかねない微妙なポジションにいる彼女。

死んだはずのキャラが実は生きていたという展開を迎えることの多い本シリーズでは例外的に、消えてしまってくれた方が有難い存在なので、ストーリー上の必然性がさほどない場面でアッサリと殺されてしまう。

都合良く消えてくれる元カノ エレナと、レティとの愛を再確認するドム。これはなかなか酷い展開だと感じた。

そんなわけでお話の方は無茶苦茶だったんだけど、見せ場はそんな不満を補って余りあるほど凄い。

何せ製作費は2憶5000万ドル、史上最も金のかかったアクション映画のひとつと言えるだろう。

のっけからカーチェイスと爆破の連続でおなか一杯だが、特に凄いのがハッキングした車を暴走させるという『ターミネーター3』(2003年)のアップグレード版ともいえる一大カーチェイスだ。

雪崩のように車の大群が迫ってくるという、とんでもないものを見せられる。

本作の監督は『交渉人』(1998年)、『ミニミニ大作戦』(2003年)のF・ゲイリー・グレイ。本シリーズでは珍しくベテラン監督の当番である。

グレイはジャスティン・リンのスタイルを引き継いでシリーズのルックスを守りつつも、カットを細かく割りすぎないことで見せ場は随分と見やすくなった。

また俯瞰とアップの使い分けのうまさには舌を巻いたが、これによりアクションの迫力と、壮大なスペクタクルの両方を同時に味わうことができた。

圧倒的にうまい人が監督したことで、荒唐無稽な見せ場も映画の構成要素としてきちんと機能している。実によくできたアクション映画だった。

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