暗殺者(1995年)【凡作】ランボーvsデスペラードは後半失速(ネタバレあり・感想・解説)

(1995年 アメリカ)
警察を軽くあしらうほどの暗殺者達の実力、卓越した技能と頭脳を駆使した応酬戦が描かれる前半部分は素晴らしい出来だったのですが、ラストに向けて計ったようにつまらなくなっていくという残念な映画でした。見る価値はあるのですが、後半が足を引っ張るので鑑賞後の満足度は高くありません。

あらすじ

ベテランの暗殺者ロバート・ラス(シルヴェスター・スタローン)は引退を考えていたが、退職金代わりの大仕事の場にミゲル・ベイン(アントニオ・バンデラス)という若い暗殺者が現れ、獲物を仕留められた。ミゲルの目的はNo.1のラスを自らの手で仕留めることであり、ラスはミゲルとの対決を余儀なくされる。

スタッフ・キャスト

製作はジョエル・シルバー

1952年生まれ。『48時間』(1982年)、『コマンドー』(1985年)『プレデター』(1987年)、『ダイ・ハード』(1988年)と、80年代の面白いアクション映画にはたいてい関与しておられる偉人。

リチャード・ドナーとは『リーサル・ウェポン』シリーズで、シルヴェスター・スタローンとは『デモリションマン』(1993年)で一緒に仕事をしています。

ただし、あまりに強烈な個性からハリウッド界隈では恐れられてもおり、『トゥルー・ロマンス』(1993年)の悪徳プロデューサー、リー・ドノヴィッツや、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(2008年)の金に汚いプロデューサー、レス・グロスマンは、ジョエル・シルバーがモデルになっています。

監督は『リーサル・ウェポン』のリチャード・ドナー

1930年生まれ。元はニューヨーク大学で演劇を学んだ俳優だったのですが、テレビドラマの演出アシスタントを経て『宇宙船X-15号』(1961年)で映画監督デビュー。ただしキャリアの初期はテレビでの仕事がほとんどであり、「トワイライト・ゾーン」(1964年)、「逃亡者」(1963-1967年)、『刑事コジャック』(1973-1978年)など、多くの有名テレビドラマの演出を手掛けてきました。

映画界での仕事が本格化するのは『オーメン』(1976年)からであり、続く『スーパーマン』(1978年)がその年の全米年間興収No.1の大ヒット。ドラマ『サンフランシスコ物語』(1982年)、コメディ『おもちゃがくれた愛』(1982年)、ファンタジー時代劇『レディホーク』(1985年)、少年たちの冒険映画『グーニーズ』(1985年)と、ジャンルを選ばない職人的な器用さで重宝され、『リーサル・ウェポン』(1987年)は3本の続編が製作されるほどの人気シリーズとなりました。

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原案は『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟(現姉妹)

兄ラリー(現ラナ)は1965年、弟アンディ(現リリー)は1967年シカゴ出身。

共に大学中退後に大工をしながらコミックや脚本を書き、本作『暗殺者』と『マトリックス』の脚本がほぼ同時期に100万ドルで売れたことから、注目の脚本家となりました。

実は本作はブライアン・ヘルゲランドによって原型を留めないほど書き換えられたため、ウォシャウスキー兄弟はクレジットから自分達の名前を外すよう要求したのですが、脚本家協会の規定でそうはならず、原案として名前が残り続けています。

監督デビュー作となるフィルムノワール『バウンド』(1996年)が高評価を受け、『マトリックス』(1999年)の圧倒的な成功でその名を全世界に轟かせました。

『マトリックス リローデッド』(2003年)と『マトリックス レボリューションズ』(2003年)は評価こそ割れたものの興行的には大成功し、現在は『マトリックス4』(2021年公開予定)を製作中。妹のリリーは脱落し、ラナ・ウォシャウスキーの単独クレジットとなるようです。

脚色は『L.A.コンフィデンシャル』のブライアン・ヘルゲランド

1961年ロードアイランド州出身。脚本家になる前は漁師をしていたという変わり種で、レニー・ハーリン監督作品『エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃』(1988年)で初めてのクレジットを得ました。

90年代前半には脚本の直し屋として活躍しており、マット・リーヴスが書いたオリジナル脚本を大ヒット作『沈黙の戦艦』(1992年)の続編に書き替える作業を行い、これは『暴走特急』(1995年)となりました。

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ウォシャウスキー兄弟による本作のオリジナル脚本はエッジが立ちすぎているとして、リチャード・ドナー監督が登場人物をより好感の持てる性格に変更し、暴力描写も控えめにするよう要求し、ヘルゲランドがそのオーダー通りに書き直したということです。

リチャード・ドナーとの関係性は深く、ヘルゲランドのオリジナル脚本『陰謀のセオリー』(1997年)はドナーの手で映画化され、『リーサル・ウェポン4』(1998年)の脚本にもノークレジットで参加しています。

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1997年には『L.A.コンフィデンシャル』(1997年)でアカデミー脚色賞を受賞しましたが、同年の『ポストマン』(1997年)でラジー賞最低脚本賞。同一人物がアカデミー賞とラジー賞を同年に受賞するという珍しい事例となりました。

撮影は名匠ヴィグモス・ジグモンド

1930年ハンガリー出身。ブダペストの王立映画演劇アカデミーで学んだ後にカメラマンとなりましたが、ハンガリー騒乱に巻き込まれてアメリカに亡命。

亡命後には語学の問題もあってなかなか職に就けなかったものの、技術力の高さや作業の効率性が次第に評価されるようになり、『脱出』(1972年)、「愛のメモリー」(1973年)、『続・激突!/カージャック』(1974年)、『ディア・ハンター』(1978年)などを手掛けるようになりました。『未知との遭遇』(1977年)でアカデミー撮影賞受賞。

国際撮影監督協会は、栄佐撮影市場最も影響を与えた人物の一人としてジグモンドの名を挙げています。

主演は僕らのスタローン

1946年ニューヨーク出身。1970年に俳優としてデビューするもパッとせず、ロジャー・コーマン製作の『デス・レース2000年』(1975年)でのマシンガン・ジョー役でようやく二番手の役を掴み取り、自ら脚本を書いた『ロッキー』(1976年)でブレイクしました。

『ロッキー』『ランボー』のシリーズ化で80年代には世界一のマネーメイキングスターとなりましたが、90年代に入ると同業者アーノルド・シュワルツェネッガーの猛烈な追い上げに遭いました。

ただし本作製作時点では依然としてスターとしての動員力への期待も高く、1500万ドルのギャラを受け取って出演しています。

スタローンが演じたロバート・ラス役には当初ショーン・コネリーが考えられており、その他にアーノルド・シュワルツェネッガーやマイケル・ダグラスも考慮されていました。

メル・ギブソンがこの脚本を評価しており、監督・主演するという話もあったのですが、結局『ブレイブハート』(1995年)を選択しました。

共演は『デスペラード』のアントニオ・バンデラス

1960年スペイン出身。ペドロ・アルモドバル監督の『セクシリア』(1982年)で映画デビューし、以降はアルモドバル監督作品の常連となりました。

『マンボ・キングス/わが心のマリア』(1992年)でハリウッド進出し、『フィラデルフィア』(1993年)、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994年)といった話題作に出演。ロバート・ロドリゲス監督の『デスペラード』(1995年)で人気を博しました。

後年の『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(2014年)でスタローンとの再共演を果たしました。

バンデラスが演じたミゲル・ベイン役には、他にケビン・ベーコン、トム・クルーズ、ジョニー・デップ、ウディ・ハレルソン、ウェズリー・スナイプスらが考慮されていました。

感想

プロの攻防戦が描かれる前半の興奮

本作の冒頭はこうです。

葬儀参列のため15年ぶりに公の場に姿を現した大物政治家を仕留めようと、暗殺者のロバート・ラス(シルヴェスター・スタローン)が葬儀に潜入するのですが、別の殺し屋ミゲル・ベイン(アントニオ・バンデラス)によってターゲットを横取りされます。

ベインは現場に到着した警察によってアッサリと逮捕されるのですが、連行中のパトカーの中で手錠を外し、警察官を殺害して逃走。

一方ラスは逃走にタクシーが利用される可能性が高いと踏んで、タクシー運転手に身分を偽装して罠を張ります。

意外性に溢れ、また知能と技術の応酬戦であるこの冒頭は素晴らしい出足でした。警察官すら軽くあしらわれるほどのプロの暗殺者達の実力を、荒唐無稽になり過ぎない絶妙なチューニングで見せています。

一流脚本家を配置した成果はここに表れています。我々の住む世界の裏側には、実はこういう人たちがいるのかもしれない。そうした説得力があるのです。

ついにラスとベインがまみえた際にも、いきなり対決が始まるのではなく、しばらく会話をしてお互いの腹を探り合うという密かな緊張感も最高でした。

キャラクターの闇とか病みが足らない

ただしジュリアン・ムーア扮するハッカーのエレクトラが登場した辺りから、物語は月並みになってきます。

エレクトラというキャラクター名は、エレクトラ・コンプレックスから来てるのかなと思います。これは女性が母親を憎み、父親を思慕する心的傾向を指すものであり、本作のエレクトラも生育過程に何らかの問題のあった女性という設定があったものと思われます。実際、猫を溺愛し、隣人の部屋に設置した隠しカメラの映像を見ることが趣味という点からも、アブナイ人であることは間違いないし。

しかし演じているのがジュリアン・ムーアなので、心に闇を抱えた人物に見えてきません。取ってつけたようなフシギちゃんぶりにちょっと無理も感じたし。

闇が足らないのは主人公ラスも同じくで、若かりし日のラスは当時No.1であり友人でもあったニコライという暗殺者を殺害してまでNo.1に登り詰めた非情な男だったはずなのですが、エレクトラとバディを組んだラスはただの良い人になってしまいます。

これでは、仮にラスが警察やFBIの人間でも成立する話にもなってしまい、裏稼業に生きてきた男を主人公にした意義がかなり薄れてしまいます。

ウォシャウスキー兄弟がクレジットから自分達の名前を外すよう主張したことからも、本来の脚本にあった闇や病みが相当に薄められたのではないかと推測します。

後半が混乱している上に面白くない

ミゲルを仕留めるためにラスとエレクトラが罠を張る後半部分は、並みのアクション映画以下となります。

ミゲルが若い頃の自分の跡を追っていることに気付いたラスは、かつてラスがニコライを殺害してNo.1になった現場にミゲルをおびき寄せることにします。ミゲルはかつての自分と同じ行動をとるはずであり、その際にできる隙を突いてミゲルを仕留めようというのです。

ここでの作戦が分かりづらいので、本来はハラハラドキドキしなければならない場面のはずなのに、まったく手に汗握らないという事態に陥っています。

加えて、ラスとミゲルのバトルが本編中もっとも地味で面白くないので、視覚的にも満足いくものにはなっていません。 実はニコライが生きていて、ラスとミゲルを戦わせているのはニコライだったというオチにも何だか取ってつけた感があったし、ラストは本当に酷い出来でした。

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