【凡作】ダークエンジェル(1990年)_ラングレン版プレデター(ネタばれあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(1990年 アメリカ)
はるばる人間狩りに来たエイリアンとドルフ・ラングレンが戦うというプレデター風アクション。さほど面白いわけでもないが、馬鹿みたいな威力のエイリアン銃の描写など、見所はちゃんとある。なおジェームズ・キャメロン制作の連続ドラマとは何の関係もない。

感想

ドルフ・ラングレン全盛期の主演作の一つで、おそらく中学の時に日曜洋画劇場で見たと思う。

その時にはさして印象に残らず、またドル作品はシュワ・スタほどリピートされていなかったので、その後30年も見てこなかったのだが、最近、ふと思い出す瞬間があって妙に見たくなった。

しかし調べてみると、現在、本作は鑑賞困難な状態にあることが分かった(2003年に倒産したヘラルドが日本国内での権利を持っていた関係だろうか?)。

DVDは20年前に一度発売されたっきりで、現在では3万円近いプレ値が付いている。ドル好きの私をもってしても、さすがに躊躇する値段だ。しかも頼みの午後ロー様でも放送された形跡がない。待っていても地上波放送される見込みは低いということだ。

しかし見られないとなると余計に見たくなるのが人の心理であり、私は秘奥義レーザーディスク漁りを発動させた。

ヤフオクで探すと中古LDは問題なく売られており、300円で落札させていただいた。中古DVDだと3万円の映画がLDだと300円・・・。この前の『キングコング2』(1986年)と言い、古いB級映画を探す際にLDプレーヤーを持っておくと本当に心強い。

ロン毛のムキムキが剣を振るう『コナン・ザ・グレート』(1982年)に対応した『マスターズ/超空の覇者』(1987年)、角刈りのムキムキがマシンガンで無双する『コマンドー』(1985年)に対応した『レッド・スコルピオン』(1988年)と、80年代末のドルフ・ラングレン作品はジェネリック版シュワルツェネッガーという感じだった。

で、本作では武闘派のムキムキがエイリアンと戦う『プレデター』(1987年)に対応しており、二番煎じもいい加減にしろよという感じである(なお『プレデター』で編集を務めたマーク・ヘルフリッチが本作も手掛けている)。

ヤッピー犯罪組織を追う刑事ジャック・ケイン(ドルフ・ラングレン)が、人間の仕業とは思えない犯行現場に出くわし、人間狩りに来ているエイリアンの存在に気付くというのがざっくりとしたあらすじ。

なおヤッピーとは”young urban professionals”の略で、MBA持ちで若くして大企業の重役職に就く若者を指す(たいてい倫理観の欠落した小賢しいクソ野郎として描かれる)。1980年代後半から1990年代前半の映画でたまに出くわす人種なので(『ウォール街』、『ロボコップ』『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』etc…)、若い人は覚えておいていただきたい。

主人公が刑事で、舞台は大都会、背景に麻薬戦争となると、同年公開のご本家『プレデター2』(1990年)とまったく同じ話ってことになるのだけれど、意図的に寄せていったのか、たまたま似てしまったのかはよく分からない。

本作の製作直前、監督クレイグ・R・バクスリーと主演ドルフ・ラングレンは、ジョエル・シルバーのもとで本作とは別のSFアクションコメディ映画を撮る予定だったんだけど、共同プロデューサー同士が揉めて撮影中止となった。

ジョエル・シルバーは『プレデター』(1987年)シリーズのプロデューサーでもあるので、このコンビが『プレデター2』の企画にも触れていた可能性があると思ったり思わなかったりで…。

そんな二番煎じ感溢れる本作ではあるが、共同脚本としてクレジットされているレオナード・マス・Jr.なる人物は、後に『ジュラシック・パーク』(1993年)『ミッション:インポッシブル』(1996年)『スパイダーマン』(2002年)などを手掛けてハリウッド屈指の脚本家となるデヴィッド・コープである。

そう聞くと一気にありがたみが増してきましたな。

人間の脳内物質目当てに死体の山を築く悪玉エイリアンを追いかけるドル刑事。

エイリアンが割とショボい目的で地球に来訪してくるのが80年代SFアクションの特徴だったけど、本作も例に漏れずで、エイリアンにとって人間の脳内物質は麻薬にあたるので、悪玉エイリアンは原材料採取のために遠路はるばる地球にやってきたとのこと。

麻薬業者となれば取締官もいるもので、エイリアン側の捜査官もこいつを追いかけて地球にやってきていたという、こちらは『ヒドゥン』(1988年)っぽい設定が置かれている。もしくはウルトラマンの第一話か。

なんだけどエイリアン刑事は途中で殉職し、自分が持ってきた武器をドル刑事に託すという、これまた『プレデター2』みたいな展開を迎える。やっぱ本作の製作陣は『プレデター2』をチラ見してただろ。

そうして本家『プレデター2』が失敗したように、本作も捜査官vsエイリアンvs犯罪組織の三すくみの構図をうまく娯楽に転換できていない。

クライマックスではようやっと主人公・犯罪組織・悪玉エイリアンの三者が対峙するという構図が生まれるのだけれど、犯罪組織がいとも簡単に蹴散らされ、戦いはドル刑事vs悪玉エイリアンに収れんされてしまうので、せっかく置かれている状況がうまく機能していない。

深海モンスターを前に、敵対し合っていたサルベージ船長と海賊団が一時的に手を組む『ザ・グリード』(1998年)を見習ってほしいところだ。

その他、マッチョで暴力的なドル刑事と、頭で考えるタイプのFBI捜査官スミス(ブライアン・ベンベン)の凸凹コンビは、『48時間』(1982年)『リーサル・ウェポン』(1987年)といったバディ刑事ものの基本フォーマットを踏襲したものだし、ドル刑事が検視官の恋人とうまくいっていないというプロットは『ダイハード』(1988年)の影響だと思われる。

そんなわけで当時のアクション映画の定石がことごとく織り込まれており、これだけの要素をたったの90分にまとめてみせたあたりにデヴィッド・コープの手腕が現れているのだろうが、とはいえ「うまくまとめた」程度でとどまっている。

この辺りは監督の演出力不足も原因だと思われるが。

監督のクレイグ・R・バクスリーはスタントマン出身で、スタントコーディネーター、第二班監督と徐々に地位を上げてきて映画監督にまで上り詰めた人物。

アクション映画を知り尽くしている人物だけに現場掌握力は高くてプロデューサーからは重宝されていると思われる一方、クリエイティブ面でのトレーニングを受けてきた人物ではないので、彼が手掛ける作品の質はどれもそれなりだ。

本作のような込み入ったプロットの作品ではなく、『プレデター』第一作のようなシンプルな作品の方が本質的には合っていたのかもしれない(なおバクスリーはスタントコーディネーターとして『プレデター』(1987年)に参加している)。

ただしバクスリーの演出は悪いところばかりではない。

何せ彼の監督デビュー作は『アクション・ジャクソン 大都会最前線』(1988年)である。

同作は刑事もののプロットをとりつつも、戦争映画としか思えないほどの火薬量で見る者の度肝を抜いた作品。

その過剰な爆破演出は本作においても健在であり、エイリアン銃を撃つとボカボカ爆発が起こるという景気の良い見せ場は最高としか言いようがなかった。

爆破の炎で画面全体が真っ黄色になる瞬間は一度や二度ではないし、走るエイリアンの後ろで車が次々と爆発する場面なんて、相当危険な撮影をしているということが見ている側にも伝わってきた。

そんなわけで決して出来の良い映画ではないが、見るべきところはあるし、憎めない魅力もある。これはこれで大事に見続けてあげたい映画だ。

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