【凡作】レリック_死体に気合入りまくり(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(1997年 アメリカ)
人間のキャラクターにもモンスターにも魅力がなく、おまけに画面が暗すぎて何が起こっているのか分からないという、何とも困ったモンスターパニックだが、激しく損壊した死体の描写だけには異様なこだわりがあって見ごたえがあった。最大の見どころが死体というのも酷い話だが、そういう映画。

感想

記憶に残らないモンスター映画

劇場公開時にはそこそこ宣伝がなされており、認知度の高い作品だった。

が、同時期にギレルモ・デル・トロ監督のモンスターパニック『ミミック』(1997年)もあって、多くの映画ファンが「私が見たのはどっちだったっけ」と混乱した。

それだけインパクトの薄い映画だったということでもあるのだが、かく言う私もLDだかVHSだかで本作を見たっきりで、四半世紀近く本作を見返して来なかった。そんな映画。

なのだが、Amazonプライムの「もうすぐ配信終了」に本作が入っており、しかも24時間以内に終了という切羽詰まった状況だったことから、慌てて視聴した。

感想は四半世紀前と同じで、相変わらずパッとしないモンスター映画でしかなかった。

キャラクターにもモンスターにも魅力がないし、いろいろとカットされたのかつながりがおかしい部分も多々ある。モンスターが建物の構造を無視してあっちやこっちから出没しすぎで、瞬間移動しているとしか思えない。

そして致命的だったのが画面が暗すぎることで、アクションも俳優の表情も読み取れないほどだった。

しかも悪いことに通常の映画以上に日本語字幕のフォントが大きく、ただでさえ暗い画面が字幕の照度で余計に見づらくなるという弊害も起こっていた。

見続けることにここまでストレスを感じるモンスター映画は『AVP2』(2007年)並みだったが、画面を暗くしてでも誤魔化したいことでもあったのだろうか。

研究者×信心深い刑事

博物館を舞台にしたことが本作の新奇性であり、ペネロープ・アン・ミラー扮する主人公はモンスターの正体にアカデミックに迫っていこうとするのだが、これを面白く見せることにも失敗している。

モンスター分析においてはDNA解析など当時最先端のテクノロジーが用いられるものの、マイケル・マン監督の『刑事グラハム/凍りついた欲望』(1986年)のように測定行為を丁寧に描いているわけでもないので、さほど際立った見せ場になっていない。

そもそもモンスターの正体に魅力がないので、その解明プロセスにどれだけこだわっても意味がなかったようにも思えるし。

加えて、研究者である主人公に迷信深い刑事を絡ませることの面白みも発揮できていない。

物事の捉え方の違いから当初は反発し合う二人だが、通常の科学が通じないモンスターを相手にすることでお互いを補完し合う関係になるというドラマが志向されていたと思うのだが、これが有効に機能していないのだ。

感性の違いを発端にしたコンフリクトが起こりそうで起こらないし(刑事の因習を研究者が鼻で笑う程度)、お互いを認め合うというバディ映画でありがちな展開も織り込めていない。

これでは対照的な二人を主人公に据えた意味がない。

脚本家に『ミスティック・ピザ』(1988年)や『ベートーベン』(1992年)などコミカルなドラマを得意とするエイミー・ジョーンズが含まれていることからも、主人公二人のやり取りが重要な構成要素とされていたことは伺えるのだが、これがまったく機能していないというのは肩透かしだった。

モンスター×70年代風パニック

後半になると美術館を舞台にしたモンスターパニックに変化する。

現場に閉じ込められるのはシカゴ市長をはじめとした町の有力者たちであり、人に指示を出すことに慣れきった彼らは刑事の指示を素直に聞きやしないという『タワーリング・インフェルノ』(1974年)的な状況となる。

…のだが、これも有効には機能していない。

際立ったキャラクターがいない上に、画面が暗くて人物特定が困難なので、誰だか分からない奴がたまにワーワー騒いでいるだけ。

そのうち、生存者たちは地下の脱出ルートに進むグループと、その場で救助を待つグループとに分かれるという『ポセイドン・アドベンチャー』(1971年)的な展開を迎えるのだが、これもまた面白くはなっていない。

前述の通りモンスターのフットワークが異常なまでに軽く、結局のところどちらのグループもモンスターに襲われることになるので、結果から振り返ると誰が正しかったというわけでもないから。

道を分けるのであれば、結果に優劣をつけるべきではなかっただろうか。

死体への異様なこだわりだけは良し

そんなわけで不備の多い作品ではあるのだが、唯一素晴らしかったのが死体への異様なこだわりである。

ブラジルから漂着してきた貨物船を刑事が調べた際に、船底から大量の死体が発見される。その死体の迫真性には度肝を抜かれた。ここまでリアルな死体にはなかなかお目にかかれない。

次に美術館の警備員がモンスターに襲われた後の場面だが、これまた死体の描写が物凄い。

体は鋭い爪で切り裂かれ、首はもぎ取られ、頭蓋骨を砕かれて脳みそが取り出されている。

この壮絶な状況をはっきり目で見せてくるのだから恐れ入った。

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