(2012年 フランス・アメリカ)
前作でこらしめたマフィアの家族が復讐にやってくる続編。ただし獲物を追ってこそのブライアンであり、追われる側に回ると魅力半減。

感想
公開前には誰からも期待されていなかったが、ふたを開けると観客からの全面的な支持を得て、全米で1億4500万ドルもの収益を上げた『96時間』(2008年)。
あまりに期待されなさ過ぎてシリーズ化前提の契約はなされておらず、続編にリーアム・ニーソンが戻ってくるかどうかは不透明で、一時期はミッキー・ロークを代役に据えることも検討されていたらしい。
前作のパリであんなひどい目に遭っておきながら、より治安の悪そうなイスタンブールへの家族旅行に出かけるブライアン一家。
元妻レノーアは依然として再婚相手との婚姻関係にはあるので、形式的には家族旅行とは言えないのだが、ブライアン(リーアム・ニーソン)、レノーア(ファムケ・ヤンセン)、キム(マギー・グレイス)の3人は実質的に家族として扱われている。
そこに、前作でブライアンにひどい目に遭わされたマフィアの親父が復讐に現れ、ブライアンとレノーアは拘束。唯一追っ手から逃れたキムの機転でブライアンが反撃を開始するというのがざっくりとしたあらすじ。
続編になると、主人公をトラブルに巻き込むためかなり強引な設定が置かれることが多いが、例に漏れず本作も、前作にあった納得感が薄れている。典型的なダメ続編である。
前作では、「海外旅行はやめとけ」とすぐには首を縦に振らないブライアン(リーアム・ニーソン)と、親父の娘ラブを逆手に取りやや強引に出かけようとする娘キム(マギー・グレイス)、そして現地のイケメンに一瞬でなびいたキムのバカな友達という関係性があって、相対的にこの家族の落ち度は薄まっていたのだが、今回イスタンブール旅行に誘うのはブライアンその人なので、どうしても共感の度合いは下がってしまう。
そして一応は報復の連鎖というテーマが置かれてはいるのだが、マフィア側の逆恨みがひどすぎるような気もする。
今回の復讐親父の息子とは、前作でブライアンの電流拷問を受けて口を割った後に、電流流しっぱなしで放置という惨い処刑をされた野郎らしい。
確かにあの殺され方は惨かったが、そうは言っても彼らは罪のない若い女性を誘拐してヤク漬けにしたうえで、闇市場で売り捌いていたのだ。「あれはあれで大事な息子だった」と言われたところで、「ブライアンが来なくても、そのうち誰かに殺されてただろ」としか言いようがない。
こういう商売をやっている以上、社会からの恨みを買ったり、場合によっては命を奪われても仕方ないと腹を括ってこその任侠道ではなかろうか。代々マフィアをやっておきながら、おかしなところでセンチメンタルになるもんですねと、こちらにも共感できなかった。
そんなわけで敵・味方双方のドラマに納得感が薄かったので、映画としての面白みは前作よりもかなり落ちた。
ではアクションはどうだったかというと、こちらも前作から落ちたと思う。
前作の魅力って、愛する娘のためにあらゆるロックを解除した殺人マシーンが、何の躊躇もなく暴力をふるうという点にあったと思うんだけど、本作ではブライアン自身が拘束されてしまうので、その風情がない。
誘拐犯から身を隠す娘に対して「多分お前は捕まる」と凄まじい死刑宣告をした前作に対応して、今度は娘に向かって「これからパパとママは捕まる」と、常人なら一生言わないであろうセリフを言う場面には笑った。
また、自分たちが監禁されている場所を特定するため、市街地で手りゅう弾を爆発させて距離や方位を測定するというはた迷惑にも程があるテクニックにも笑ったけど、これらもスポットで、面白さが継続していかないもどかしさがあった。
やはりアクションには、エモーションによる裏打ちが必要なのだ。
しかし本作では基礎となるドラマに不備があるうえに、救出対象が別れた妻なので、娘を探した時のような必死さがない。「最悪、仕方ないか」と思っていそうな空気すら漂っている。これではダメだ。