【良作】インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア_腐女子向けホラー(ネタバレあり・感想・解説)

サスペンス・ホラー
サスペンス・ホラー

(1994年 アメリカ)
トム・クルーズとブラッド・ピットのBLが描かれた超貴重作。出演者は美しいし、時代を再現した衣装やセットは素晴らしいし、愛憎入り混じるお話は興味深いし、総じて見応えのある作品でした。ホラー映画なのに怖くないことは欠点ですが。

作品解説

難航した映画化

本作の原作はアン・ライス著の小説『夜明けのヴァンパイア』(1976年)。

この映画化に最初に着手したのはパラマウントで、小説出版前の1976年4月の時点で映画化権を押さえており、原作者自身が脚色。

ルイ役には当時人気だったジョン・トラボルタ、レスタト役にはルトガー・ハウアーが想定されていました。ハウアーは、小説執筆時点でアン・ライスがレスタトのモデルとした人物だったようです。

ですが企画が難航した上に、ジョン・バダム監督の『ドラキュラ』(1979年)、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『ノスフェラトゥ』(1979年)、コメディ映画『ドラキュラ都へ行く』(1979年)ら類似企画とのバッティングを避けるためプロジェクトを一時休止としているうちに、トラボルタとハウアーが年を取り過ぎてしまうという問題が起こりました。

結果、企画は中止。

その後、ワーナーの子会社ロリマー・プロダクションズに売却され、そのロリマーは1993年に解散したことから、親会社ワーナーブラザースの手に渡りました。

ワーナーは『クライング・ゲーム』(1992年)を大成功させたアイルランドの映画監督ニール・ジョーダンに監督を依頼し、ジョーダンは自ら脚本を書いていいことを条件に、これを引き受けました。

クレジット上の脚本家はアン・ライス一人ですが、ジョーダンによる大幅な書き換えがなされたようです。

脚本に関してもうひとネタ。アン・ライスはハリウッドのメインストリームが同性愛の映画を忌避する傾向にあることを憂慮して、異性愛に置き換えたバージョンも執筆していました。

実際、パラマウントでは同性愛と小児愛に難色を示されてスタジオの重役たちの反応が悪かったようだし。

ルイ役を女性に変更。歌手のシェールをキャスティングするというビジョンで、シェールは映画の主題歌として”Lovers Forever”という曲も作っていました。

ただしプロデューサーのデヴィッド・ゲフィン自身が同性愛を公言する人物だったこともあり、同性愛の何が悪いってことでシェール関係の企画はすべてボツに。

なお”Lovers Forever”は2013年にリリースされたシェールのアルバム収録曲として復活しました。

トム・クルーズ起用に原作者激怒

本作はキャスティングを巡ってひと悶着あった映画としても有名。

ルイ役はニール・ジョーダン監督就任前からブラッド・ピットに決まっており、特に異論も出なかったのですが、問題はレスタト役でした。

プロデューサーのデヴィッド・ゲフィンがアプローチしたのはダニエル・デイ・ルイスでしたが、ルイスは興味を持たず断られました。

一方、原作者ライスがレスタト役に希望したのは『ワーロック』(1989年)のジュリアン・サンズでしたが、一般的な知名度がないので却下。

ならばとライスはジョン・マルコヴィッチ、ピーター・ウェラー、ジェレミー・アイアンズ、アレクサンドル・ゴドノフと多くの俳優の名を挙げたものの、ジョーダン監督は歳が行き過ぎているとして全員却下。

その後、プロデューサーと監督の打合せでトム・クルーズの名が浮上し、デヴィッド・ゲフィンはその案に大乗り気。脚本を送ったところクルーズ側の反応も良かったのですが、これに大反対したのが原作者ライスでした。

子供っぽいトム・クルーズはどう考えてもレスタトではないし、どうしてもトム・クルーズを使うと言うなら、ブラピと役を交換すべきと提案したのですが(それはそれで面白そう)、その案も採用されませんでした。

結果、ライスはありとあらゆる場でトム・クルーズを批判するようになり、ゲフィンが連絡を取ろうとしても代理人弁護士が出てくるほどの深い溝ができました。

しかし完成した作品を見たライスは、映画を傑作であると褒めちぎると同時に、レスタト役のトム・クルーズを絶賛。謝罪の新聞広告まで出しました。

トムとブラピが不仲だったらしい

また、撮影現場ではトム・クルーズとブラピの不仲があったと言われています。

その後のキャリアを見ても、第一線で娯楽作に出演し続けるトム・クルーズと、製作者としてアカデミー賞受賞作を連発するブラピでは映画に対するスタンスがまったく異なっており、その違いが衝突に繋がったのかなと思います。

製作当時で言えば、トム・クルーズは監督から言われた通りにやる穏健なタイプ、ブラピは演出や脚本にも口出しする芸術家タイプだったとか。

現場での一例をあげると、役柄に入り込むブラピは時代劇なんだからということでデオドラント剤を使わず、その結果、体臭が漂ってくるようになったのでトム・クルーズが不快感を示しました。

その他、身長の低いトム・クルーズが高身長のブラピに嫉妬したとか、ゴーカート対決を引きずったとか、いろんな不仲説が報道されていました。

後に二人は『フォードvsフェラーリ』(2019年)で共演するという話があったものの実現せず、またブラピがアカデミー助演男優賞を受賞した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)では、当初トム・クルーズがキャスティング候補にあがっていました。

ブラピ、いやいや演じ続ける

共演者同士の不仲に加え、撮影環境も過酷だったため、ブラピは本作の撮影にいい思い出がないようです。

演じる役柄が最初から最後まで陰気で、そのテンションを5か月も維持することがしんどかったようだし、特殊メイクも大変だったとのこと。

本作のバンパイア達は白い肌に血管が透けて見える顔にメイクされるのですが、血管を浮き立たせるため数十分間逆さづりにされるということを、毎日やられていました。

そこにカラコンを装着し、薄暗いセットで演技をさせられる。

これが耐えられなかったというわけでゲフィンに降板を相談したところ、違約金4000万ドルが発生すると言われて、いやいや演技を続けたようです。

他方で凄かったのがトム・クルーズで、本作のために8kg減量、毎日3時間半かけての特殊メイクと、かなりの負荷をかけられたのですが、プロに徹してやり切りました。

興行的には大成功した

本作は1994年11月11日に全米公開され、11月公開作としては史上最高の初動記録で全米No.1を獲得。全米トータルグロスは1億52万ドルで、バンパイア映画として史上最高の売上を記録しました。

国際マーケットでも同じく好調であり、全世界トータルグロスは2億2366万ドルに達しました。6000万ドルの製作費と比較しても、高収益の映画だったと言えます。

感想

腐女子向けホラー

ジャンルはホラーで、血もいっぱい流れるのですが、怖い、気持ち悪いという一般的なホラー映画とは趣がかなり異なります。

映画界で吸血という行為は性行動のメタファーであり、本作も同じくなのですが、それを男性同士でやっていることが本作の特徴。トム・クルーズにブラッド・ピットにアントニオ・バンデラスですからね。

また人間に心奪われたバンパイアが、永遠の伴侶を求めて自分の血を分け与えるというロマンス要素が強めに出ていることも、特色のひとつ。

そして、バンパイア側は愛するがゆえにわが血を与えるのだが、受け取った側が必ずしもそれを歓迎するのではなく、「なぜ自分をこんな状態にしたのか」と相手を呪ってくる。

こうした愛憎劇もポイントとなっており、本作はスプラッターを見たいコアな男性ファン向けではなく、イケメン達のドロドロの愛憎劇を眺めたい腐女子向けのホラーだといえます。

トム、ブラピに片思い

1791年、お産で妻子を亡くした農場主のルイ(ブラッド・ピット)は海よりも深く落ち込んでいました。

そこにバンパイアのレスタト(トム・クルーズ)が現れ、最初は狩りの対象としてルイの血を吸うのですが、元より美少年好きのレスタトはルイに惚れてしまい、彼を仲間にしようとします。

自暴自棄だったルイは、どん底の今よりはマシだろうくらいの軽い思慮でOKするのですが、いざパートナーになってみると二人の関係がなかなかうまくいかないというのが本作のあらすじ。

夜しか行動できない、かつ、人間と比較してやたら長寿のバンパイアは基本孤独であり、その孤独から解放されたいレスタトは、狩りのパートナーとしてルイを選んだというわけ。ルイと一緒に人間を狩り、二人で血を吸えば、さぞかし楽しかろうと。

しかしルイは何時まで経っても人間の血を吸いたくないと言い、血を吸う自分を軽蔑した目で見てくるものだから、価値観を共有して楽しく暮らせると思ってたレスタトは、次第にストレスが溜まってきます。

ここで面白いのがルイとレスタトの関係性で、表面上は奔放なレスタトがルイを振り回しているように見えるのですが、実際のところ、振り回しているのはルイの方なんですね。

ルイの行動が気に喰わなければレスタトは離れて行けばいいのに、決してそうはしない。一方でルイはレスタトを求めていないにも関わらずです。

困り果てたレスタトは、ルイの気分を変えるために少女クローディア(キルステン・ダンスト)を仲間に加えます。彼女を二人の間の娘に見立て、カップルが無理なら家族で行動するというモデルに変えたわけです。

最初はレスタトになついていたクローディアですが、何十年経っても大人になれないことに不満を持ち、自分をこんな体にしたレスタトを恨むようになります。

ただし彼女がバンパイアになる原因を作ったのはレスタトではない。これが面白いところです。

空腹に耐えられなかったルイが思わずクローディアの血を吸ってしまい、このまま死なせるか、バンパイアにするかの二択しかなくなったところで、レスタトが彼女をバンパイアにしたのが始まりでした。

しかしレスタトはそのことをクローディアには伝えておらず、全部自分の思惑であるということにしていた。ゆえにクローディアからの恨みを一身に買ってしまったわけですが、その根底にあるのがルイへの愛情であるという辺りがいじらしいですね。

最終的にレスタトは二人に殺されてしまうのですが、それは愛情があるのにうまく家族を愛せないお父さんのようでもあって、実に気の毒に感じました。

バンデラス、ブラピに片思い

レスタトの呪縛を断ち切ったルイ&クローディアは同族を探すためヨーロッパに渡り、やがて最年長のバンパイア アーマンド(アントニオ・バンデラス)に出会います。

アーマンドはバンパイアグループをまとめるリーダーであり、みんなの前では威厳ある態度をとるのですが、やはりルイには惚れた様子で、二人っきりになると「一緒に生きよう」とか言います。

この時のアーマンドの口説き方が独特で、要約すると「ヨーロッパのバンパイアは古臭くて後先がない。ルイ君のように新鮮な感覚を持つ人こそ仲間にしたい」と、それらしい御託を並べながら迫っていきます。

何とかして若い子と不倫できないかとじたばたするおっさんみたいで面白かったですね。

当然のことながら、首を立てには振らないルイ。

するとアーマンドはルイとクローディアを切り離せばうまくいくと思い、レスタト殺しの罪で二人を処刑すると見せかけて、ルイだけを生存させます。

クローディアを亡くして荒れるルイはバンパイア達を殺害して回り、最後に残ったのはアーマンドとルイだけ。

ここでアーマンドは「もう二人っきりだし、仲良くしよう」と言って再度迫っていくものの、結局はフラれてしまいます。

仲間全員を犠牲にしてまでルイとの関係を求めたのに、結局はフラれるアーマンドが切なかったですね。もっと切ないのはルイに焼かれ、首をはねられた無関係なバンパイア達ですが。

趣味に生きるのが一番

人間でもなく、バンパイア社会に馴染むこともできないルイは一人で生きるようになるのですが、映画が発明されてからは映画オタクになり、『風と共に去りぬ』や『スーパーマン』や『テキーラ・サンライズ』を見に足しげく映画館に通います。

趣味を持てば心も落ち着くもので、そこから先には血生臭いエピソードもなくなります。

愛だの伴侶だの考えず、一人で趣味に生きるのが一番ということなのでしょう。この結論にも興味深いものがありましたね。

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