(1992年 アメリカ)
第一作の荒んだ空気に惹かれた私としては、ここまでアットホームになったリッグスには落胆しかありませんでした。ただしアクションを撮ることがうまい人材が集まった作品なので、アクション映画としての見応えはあります。
リッグスとマータフは偶然遭遇した強盗を逮捕するが、その強盗は防弾ベストをも貫く特殊貫甲弾コップキラーを所持していた。コップキラーの出元を探るリッグスとマータフは、元刑事のジャック・トラヴィスという男に辿り着く。
『リーサル・ウェポン』(1987年)の生みの親は脚本家のシェーン・ブラックでしたが、『リーサル・ウェポン2/炎の約束』(1989年)の脚本がワーナー、ジョエル・シルバー、リチャード・ドナーによって原型を留めないまでに改変され、プロダクションの過程と完成した作品の両方に不満のあったブラックは、本作より不参加となりました。
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その代役が『1』『2』にもリライトで参加してきたジェフリー・ボームであり、加えてB級アクション映画界の職人脚本家ロバート・マーク・ケイメンも参加し、いよいよ本作は『リーサル・ウェポン』が本来持つ良さの失われた映画となりました。なお、レイア姫ことキャリー・フィッシャーもスクリプトドクターとして参加しています。
『1』『2』の撮影を手掛けたスティーブン・ゴールドブラットは本作より降板し、当時ハリウッド随一の撮影監督だったヤン・デ・ボンが就任しています。
1943年オランダ生まれ。オランダ時代にはポール・バーホーベン監督作品の常連で、トム・クルーズ主演の青春映画『栄光の彼方に』(1983年)辺りからハリウッド映画も手掛けるようになりました。1980年代後半から1990年代前半にかけての仕事は『ダイ・ハード』(1988年)、『ブラック・レイン』(1989年)、『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年)、『氷の微笑』(1992年)という物凄い状態となり、その勢いで、レニー・ハーリンに監督を断られた『スピード』(1994年)のオファーを受けて監督デビュー。こちらも奇跡的な出来で注目の監督となり、続く『ツイスター』(1996年)の大ヒットでハリウッドトップクラスの監督になったものの、『スピード2』(1997年)での失速以降はロクな映画を撮っていません。
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なお、2018年に公開された『MEG ザ・モンスター』は、2005年頃にヤン・デ・ボン監督で進められていた企画でした。
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奥さんを亡くして自暴自棄になった殺人マシーンこそがリーサル・ウェポンだったのですが、この二つの要素が本作からは完全に消え失せています。リッグスが奥さんを亡くしたことやベトナム帰りであることには一言も触れられなくなりました。性格は底抜けに明るくなり、もはや職場のムードメーカー。同僚から気味悪がられて麻薬課を追い出された第一作の姿は影もありません。加えて殺人スキルも失われ、ただの頑張り屋さんとなっています。
もっとも違和感を覚えたのは冒頭の爆弾解体場面であり、爆弾処理班が向かっている最中だと言うのにリッグスは爆弾の仕掛けられたビルに独断で入っていき、知識もないのに爆弾解体に挑み、失敗して爆発させてしまいます。爆弾処理というプロの仕事を軽く見た姿勢には、自身も格闘や狙撃のプロであることから来る敬意というものが欠けており、リッグスがアマチュアリズムの人間になってしまったことにはガッカリでした。
第一作では点と点を線で結ぶ捜査が比較的しっかりと描かれていたのですが、本作ではそうした丁寧さはなくなっています。リッグスとマータフがパトロールをしていると偶然にも強盗現場に出くわすし、レオ・ゲッツは偶然にもお尋ね者のジャック・トラヴィスと知り合いで、レオがトラヴィスに年間シートを融通したというアイスホッケーの試合に行くと偶然にもそこにトラヴィスがいます。マータフがリッグスを馴染みのハンバーガー屋に連れて行くと、偶然にも店の真ん前でギャング同士の違法な取引が始まり、そのギャングは偶然にもマータフの息子の友達で、トラヴィスから渡された銃を持っていました。ここまで偶然性に引っ張られた物語は、もはや刑事ものではありません。
加えて捜査方法も手荒なものとなっており、本部への報告や捜査令状の取得といった手続きはすっ飛ばされ、リッグスが怪しいと睨んだ場所には躊躇せず押し入っていきます。さすがに雑すぎるでしょ。
そんなわけで『リーサル・ウェポン』として見ると全然ダメだったのですが、本作より参加した脚本家のロバート・マーク・ケイメンと撮影監督のヤン・デ・ボンのスキルが唸りまくっており、『リーサル・ウェポン』ではない別物として見ると、これがなかなか楽しいB級映画となっています。
見せ場のバリエーションはシリーズ随一。ビルの大爆破に始まり、銃撃戦、カーチェイス、格闘と見せ場はフルコース状態で、よくぞこれだけ詰め込んだものだと脚本家の構成力には感心しました。白眉は中盤のカーチェイスであり、舞台が地下鉄からハイウェイへと展開していくのですが、閉鎖空間から開放空間へのシームレスな移行がなかなか斬新で、測ったようにエスカレートしていく様には興奮させられました。
このカーチェイスではアクション映画の巨匠ヤン・デ・ボンの手腕も光っています。『1』『2』を撮ったスティーブン・ゴールドブラットは空撮などで素晴らしいスキルを見せる一方、カーチェイスにおけるスピード感の演出には失敗していました。そこに来て本作のヤン・デ・ボンは2年後に『スピード』(1994年)を撮る人というだけあって、カーチェイスの撮影では抜群の手腕を披露しています。ヤン・デ・ボンの力により、見せ場のレベルは前作よりもツーランクほど上のものになっています。
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