(2012年 アメリカ)
往年のアクションスターが一堂に会した、夢のような大作だった。「こんなに凄いものを見せてくれてありがとう」と、鑑賞中に何度もスタローンに心の中でお礼をした。それほど素敵で、ファンの感性に寄り添った最高のアクション映画だった。
本作は2012年8月17日に全米公開され、2週連続No.1を獲得。全米トータルグロスは8502万ドルとアクション映画としては好調といえる数字だったが、1億ドル稼いだ前作から15%ほど落ちた。
しかし国際マーケットでは前作以上の好調ぶりで、全世界トータルグロスは3億1497万ドルで、前作の2億7447万ドルを15%近く上回った。
前作は好きだし、確かに盛り上がった。しかし不満がなかったわけではない。
シュワ、ウィリスという大物二人が完全に添え物扱いだったし、ラングレンは途中退場するしで、アクションスターの饗宴と言われたものの、レジェンド級で見せ場に積極関与していたのはスタローンとジェット・リーだけだった。
食べ放題に行ったのに、目当てのローストビーフが一人一皿と言われた時のような気分になった。
そこに来て本作だが、アクションマニア達の不満はほぼ解消したどころか、お土産まで渡されたほどのものとなっている。さすがはスライ、僕たちの思いを完全に理解してくれているのである。
物語の終盤、ヴァンダムが率いる軍団の車列の前に立ちふさがるのは、スタローン、シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリスである。この画は何度見ても震える。
続く大銃撃戦では、チャック・ノリスも加勢にやってくる。
シュワと並んで銃を乱射するウィリスは「お前は戻って来すぎなんだよ」と言い、シュワは「イピカイエー」と返す。
ヴァンダムの回し蹴りをスタローンが喰らう。
日曜洋画劇場を毎回楽しみにしていた頃の自分に、将来こんな映画ができると言っても、決して信用しなかっただろう。それほどのことが目の前で起きているのである。
感無量とはこのことだった。
キャストの一般的な知名度という点では続編の『3』の方が上なのだが、90年代アクション映画のレジェンド饗宴という趣旨をもっとも忠実に実現しているのは本作である。
己の顔と人脈を最大限に駆使して本作を実現したスタローン、かなり困難だったであろう撮影スケジュールをやりくりして素晴らしいアクション大作に仕上げてくれたサイモン・ウエストには、感謝してもしきれない。
それほど素晴らしい作品だった。
一方で、前作の良かった部分はそのまま残っている。それはモテない中学生のような鬱屈とした空気である。
分厚い装甲にバカでかい機関銃を積んだ物騒にも程がある車両でネパールの軍閥を皆殺しにしたイントロに続き、帰国後にはいつもの打ち上げ。
たまり場だったツール(ミッキー・ローク)の店は閉店したらしく、一般人もいる普通のバーに集まっているのだが、エクスペンダブルズは女っけなしで小さなテーブルに固まっている。
心なしか一般人のノリがしんどそうにも見受けるのだが、そんな彼らの姿に思春期の自分を重ね合わせた観客も多いのではなかろうか。私自身、自分の中学時代を思い出した。
常に男子だけで固まり、教室の片隅でランボーとかプレデターの話ばかりしていた。たまに掃除時間などで女子と口を聞くことがあれば、物凄い誇張をして仲間達に報告した。
まぁ何とも地に足の着いた日々を送っていたわけだが、いい歳をしたエクスペンダブルズがまんまそんな感じだったので、とても親近感がわいた。
そんな面々の中でも異質なのがクリスマス(ジェイソン・ステイサム)で、仕事の打ち上げなのにわざわざ彼女を連れてきている。
これには、我々の仲間内で唯一彼女のいた西原という男を思い出した。
彼女が出来てからというもの、西原はいついかなる場面でも「彼女が、彼女が」と言うようになり、日に30回は「自分には彼女がいる」という事実を西原から聞かされることとなった。
その頃はみんなで下校するのが習慣だったが、西原はたまに彼女を連れてくるものだから、その時にはいつもの楽しい話題も控えめになり、なんか変な空気になった。
仕事の打ち上げに彼女を連れてくるクリスマスは、西原と全く同じ失敗を犯しているのである。
しかし、これを受けた面々は「いちいち彼女なんか連れてくんな」とは言えない。隊長のバーニー(シルベスター・スタローン)すら、「お前の彼女のノリはどうなんだろうなぁ。俺としてはちょっとなぁ…」程度の遠回しの指摘しかできない。当然、クリスマスはそんな意見など意に介さない。
我々も、西原の彼女ネタにはひたすら辛抱し続けた。が、そのことをもって西原を嫌うこともなかった。西原こそが正解であり、我々も早くあの境地に追い付かねばならないのだろうという認識は持っていたからだ。
かと言って、どうすれば彼女ができるかなんて、その時の我々には皆目見当も付かなかったが。エクスペンダブルズの面々もきっとそんな心境で、自分の生き方に対するうしろめたさいたいなものもあるのだろう。
そんなエクスペンダブルズのモテない男子ノリが如実に表れたのが、次なるミッションの道中である。
話の流れで中国の女工作員を輸送機に乗せざるを得なくなったのだが、これが若くて美人なので、全員どうしていいのか分からなくなっている。
本を読んで無関心を装っている者、ただ沈黙を貫いている者など、部室のようないつもの賑やかさとは打って変わって、担任がキレた直後の教室のように静まり返っている。
そんな中で、意を決して女子とのコミュニケーションを試みるのがガンナー(ドルフ・ラングレン)だが、かと言って何の話をすればいいのか分からず、会話は数秒で終わった。
気まずくなってルービックキューブをいじり出すガンナー。
これまた、「大学デビューだ」と張り切って隣に座る女子という女子に話しかけまくったが、ことごとく会話が弾まず「休憩時間よ、早く終わってくれ!」と内心願っていたかつての自分を思い出した。
同性同士の会話という楽な道を選択し続けた人間は、いざという時にこうなってしまうのである。
そんなエクスペンダブルズだが、いろいろ拗らせた中年だけでは後先ないと考えたのか、バーニーは若手のリクルートにも力を入れている模様。
それで隊に在籍しているのがリアム・ヘムズワース扮するビリーである。
曰く、フランス人の彼女がいて、看護師として国際的な救護活動に参加しているものだから、自分も何かやらなくちゃという使命感を持ったのが、エクスペンダブルズへの志望動機らしい。
ミッションのたびに軍閥ひとつを壊滅させ、看護師の元に大量の怪我人を送り出す側に在籍してどうするんだ、お前は頭どうかしちゃってんのかと思ったが、さすがのビリーも志望動機とのミスマッチに気付いたらしく、バーニーに退職を申し出る。
残念がるバーニーだが、本人の希望とあらば仕方ないということで、今度のミッションで最後にするという条件でまとまる。なかなかホワイトな経営者ではないか。
が、「女が待っている」「今回で最後」という死亡フラグがぶっ刺さった状態となり、ビリーが死ぬのはほぼ確となる。
で、実際に死ぬのだが、衝撃的なのはこの後。
「なぜ若い者が死ななきゃならんのだ!」と憤ったバーニーは、おもむろにビリーが恋人に残したラブレターをみんなの前で読み上げ始める。
何というデリカシーの無さだろうかと思ったが、その場にいる誰もバーニーを止めたりはしない。むしろ感極まっているくらいである。
こういうガサツなところが、エクスペンダブルズのエクスペンダブルズたる所以なのだろう。
こうして真っ先に若手を失ったエクスペンダブルズだが、以降の見せ場にもこの傾向は反映される。
年寄りほど「強くてね~、カッコよくてね~」(少年時代の貴乃花風)という演出で貫かれているのである。
ステイサム、クルーズ、アドキンスら、現役組ももちろん頑張っている。特にステイサムのナイフアクションはキレッキレだし、アドキンスとのタイマンにはグッとくるものがあった。
しかし、彼らの活躍はさして大きく扱われておらず、スタ・シュワ・ウィリスの大御所が良いところを持っていく。
そのさらに上をいくのがチャック・ノリスで、撮影時点で71歳だったノリスが、チートの如く暴れ回る。
エクスペンダブルズすら物陰に身を隠している状況で、敵の軍団を一瞬にして壊滅させる、バーニーからも伝説の男として尊敬されているなど、もはや神の領域である。
年上が絶対的に優れていて偉いという序列も、やはり学生ノリのようだった。
巷には年齢を重ねることを恥じたり、若い人に年寄りが迎合するような風潮があるが、たまにはこういうのも良いと思う。
エクスペンダブルズシリーズ
【良作】エクスペンダブルズ_タフガイのギャップ萌え
【傑作】エクスペンダブルズ2_夢実現!ありがとうスタローン
【良作】エクスペンダブルズ3_メルギブが最強すぎる
【凡作】エクスペンダブルズ4 ニューブラッド_キャスティングが弱い