(2001年 アメリカ)
ヴァンダムが凶悪殺人犯とそのクローンを一人二役で演じたSFサスペンス。クローン人間が自己の存在意義に悩むなんてくだりは一切なく、良いヴァンダムが悪いヴァンダムを倒して終わりという割り切り加減が、さすがはヴァンダムである。

感想
本作のDVDは長年うちの棚に置いてあって(多分10年以上)、すっかり見た気になっていたんだけど、今回再生してみると見ていないということに気付いた。そんな影薄映画。
あんまり面白くなかったけど、短い上映時間もあって見ていられないほど酷くもない。暇つぶしにはなるがそれ以上のものでもない。
ヴァンダムが扮するのは未婚の母ばかりを狙う連続殺人鬼。殺害後の現場に火をつけるので、警察やマスコミからは「トーチ」のあだ名で呼ばれている。
そしてこの事件の担当ではあるが、依然として犯人逮捕の糸口を掴めないでいるライリー刑事(マイケル・ルーカー)に、国家安全局の役人が接触してくる。
犯行現場に残されたDNAから犯人をクローン再生し、そのクローンの動きから犯人の行動パターンを予測してはどうか。
大規模な被害をもたらすテロリストならともかく、連続殺人鬼一人のためにこれだけの技術と金を使うのはどうかと思うが、とりあえずそういうことらしい。
最初は「何言ってんの」と相手にしないライリーだったが、自宅にまでトーチからの脅迫電話がかかってくるに至り、この科学捜査への参加を決意する。
SF設定が置かれてはいるものの、その他のテクノロジーは現実のものであり、SFではなくサスペンスアクションとして全体が組み立てられている。この辺りはジョン・ウー監督の『フェイス/オフ』(1997年)みたいな塩梅だった。
SFに慣れたピーター・ハイアムズではなく香港出身のリンゴ・ラムを監督に選んだのも、こうした製作意図を反映したものだと思う。
その一方でSFっぽいタイトルやジャケットにしたために、印象がチグハグになってしまっている。これは配給会社の戦略ミスだろう。
話を本編の内容に戻す。
最終段階でのトラブルから完全に仕上がる前に生まれてきてしまったので、レプリカントはめっちゃ阿呆だった
阿呆のレプリカントを押し付けられたライリーが、こいつにあれこれ教え込もうとするのが中盤の展開となる。
ライリーはいい歳こいて未婚で母との実家暮らし。そんなライリーがレプリカントを引き取ることで父性に目覚めるというドラマが、脚本レベルでは置かれていたようなんだが、ヴァンダムの演技力やリンゴ・ラムの大雑把な演出のために、そうしたドラマ要素は完全に没却している。
レプリカントが言うことを聞かなければ殴る蹴るの暴行を加えるライリー。
もはや猿回しの猿状態なんだが、人情の機微みたいなのをまるで表現しないヴァンダムの演技力と相まって、本当に猿に見えてくる。
そしてこの設定であれば善悪の揺らぎというか、レプリカントもまた殺人衝動に悩まされ、ライリー刑事との関係性の中でこれを乗り越えるというドラマが置かれるべきではあるが、本編でそのような展開は一切挟まれない。
鬼刑事にしごかれた善のヴァンダムが、悪のヴァンダムを追い詰めてめでたしめでたしという、非常に割り切った内容に終始しているのだ。
ヴァンダムが自我に苦しむクローンを演じることは不可能であると踏んだリンゴ・ラムの采配が光っている。
そんなラムの手腕が発揮されるのは、ついに善ダムと悪ダムがまみえるクライマックスである。
カンフー使いの悪ダムに対し、体操の動きを習得した善ダムのアクロバティックな格闘は見る価値ありだし、救急車を用いたカーアクションは低予算ながらも迫力満点だった。
ドラマ的には物足りないが、ヴァンダム主演のVシネだと思えばそれなりに満足はできる仕上がりである。

