(1986年 アメリカ)
いかつい邦題とは裏腹にマイルドで見やすい80年代全開の娯楽作。登場人物が全員阿呆すぎるとか、復讐ものなのに湿っぽさゼロとか、指摘される問題はいろいろあれど、カッコいい車と可愛いヒロインを見られるのだから、怒る気も失せてくる。

出来はイマイチだが妙な味のある映画
昔々、日曜洋画劇場でよく放送されていた映画。
そんなに面白くはないが、やってれば見てしまう、そんな一作である。
「処刑ライダー」という何度も口に出したくなるキャッチーな邦題が効いているのだろうか。
ちなみに原題は生霊を意味する”The Wraith”だが、これは車のレースともかかっているらしい。
この度、日曜洋画劇場版の吹き替えが付いたBlu-rayを買ってまで見返したが、やはり何とも言えない味のある映画だ。
アメリカの田舎町に、一方的に賭けレースを挑んでは負けた相手の車を奪う悪質な暴走族がいる。負けた奴も泣き寝入りせず警察に駆け込めばいいのにそうしないので、こいつらは幅を利かせまくっている。
そんな田舎町にふらっと現れたのがチャーリー・シーン。
当時の若手スターの筆頭格だったチャーリー・シーンはさすがの存在感で町でも目立ちまくるのだが、自身の素性については多くを語らない。
時を同じくして真っ黒なボディのスーパーカーに乗った謎のライダーも姿を現すようになり、暴走族に対してレースを挑んでは、一人また一人と事故死に追い込んでいく。
謎のライダー=チャーリーってことは容易に察しが付くわけだが、この街の住人達だけはバカボン並みに勘が悪く二人の関係に気づかない。
察しが悪いと言えばヒロイン役のシェリリン・フェンも同じく。
現在の彼女は暴走族のリーダーであるジョン・カサベテスの女として扱われている。
シェリリンさん自身はリーダーに対する好意を表明していないものの、当たり前のようにリーダーの車の助手席に座っているのだから、傍からはどう見てもリーダーの彼女だ。
そんなシェリリンさんにもかつては相思相愛の彼がいたんだけど、2人に横恋慕したリーダーに彼氏を殺されたという過去がある。
が、シェリリンさんは「元カレの殺害犯=暴走族のリーダー」という誰でもわかるような図式に気づいておらず、だからこそあっけらかんとリーダーの女を続けられているというわけだ。

そしてここまで読んでいただけた方にはお察しのことだろうが、「チャーリー=処刑ライダー=シェリリンの元カレ」で、チャーリーは地獄より復讐に舞い戻ってきたのである。
なんだが、チャーリー側の心境があまりにも説明されないので、良くも悪くも復讐ものらしい湿っぽさがない。
カッコいい車が田舎町を猛スピードで突っ走ってヒャッハーな暴走族を退治するという、実にシンプルな構図に落ち着いているのだ。
本作の製作に当たってチャーリー・シーンを確保できたのはたったの一日だけだったという。
当時のチャーリーは『プラトーン』(1986年)の撮影にかかりっきりだったのだ。
主演俳優を僅か一日しか拘束できなかったとあれば、撮影されず落とされた場面が大量にあったであろうことは容易に察しが付く。
その結果、エモーショナルな場面がことごとく抜け落ちた何とも奇妙な復讐劇となったわけだ。
ただし悪いことばかりではなく、湿っぽくなり過ぎず軽くて見やすい作風となり、「明日は学校か~」という憂鬱な日曜の夜に見るにはちょうど良い塩梅となった。
この度見返しても、無駄のないタイトな作風にはそれなりに惹かれるものがあり、80年代に量産された青春映画の一作と捉えれば、これはこれで悪くない仕上がりとなっている。
カッコいい車に、可愛いヒロイン、必要なものはちゃんとそろってるじゃないか。
なお、『プラトーン』よりも一足早く公開された本作を見たオリバー・ストーンは、本作の出来の悪さが、同じくチャーリー・シーン主演の『プラトーン』の評価にも影響するんじゃないかとめちゃくちゃ焦ったらしい。
