【凡作】ダーティハリー3_極左過激派vsハリー(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1976年 アメリカ)
娯楽に振り切った第3弾だが、敵が阿呆すぎてハラハラドキドキさせられない。演出もこなれていないため見せ場にあるべき興奮もなく、ありきたりなアクション映画に落ち着いたという印象。タイン・デイリー扮する相棒だけは良かった。

大御所スターリング・シリファントが脚本を担当

批評は割れたが大ヒットとなった『2』に続き、ワーナーはダーティハリーの第3弾を企画。

『真夜中の大捜査線』(1968年)でアカデミー賞を受賞し、また『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)『タワーリング・インフェルノ』(1974年)でハリウッドのヒット請負人となった脚本家スターリング・シリファントが雇われた。

シリファントによる脚本のタイトルは『ダーティハリー&モア』、ハリーとアジア人女性モアがコンビを組むという内容だった。イーストウッドは女性の相棒というアイデアを評価したものの、全体的に人物描写に偏り過ぎで見せ場が少ないと感じた。

そこから時をさかのぼること数年前、映画学校に通う学生だったゲイル・モーガン・ヒックマンとS.W.シュアーは、ダーティハリー1と2に深い感銘を受けて勝手に第三弾の脚本を執筆。当時アメリカ社会を騒がせていたシンバイオニーズ解放軍をモデルとする左翼過激派組織が、サンフランシスコ市長を誘拐するという内容だった。

とはいえ学生二人ではこの脚本をどう売り込んでいいのか分からず、とりあえずイーストウッドが経営するレストランに脚本を置いて帰るという荒業に出た。

まぁふざけた話ではあるが、驚いたことにこの方法で脚本はイーストウッドの手に渡り、改善の余地はあるがいくつかのアイデアは大いに評価された。

そしてシリファント版に不満のあったイーストウッドは、2つの脚本を折衷させることに。

シリファントによる作業を経て、それでも見せ場が少ないと感じたイーストウッドは、『ダーティハリー』第一作の脚本家の一人であり『マンハッタン無宿』(1968年)や『恐怖のメロディ』(1971年)といったその他のイーストウッド作品も手掛けてきたディーン・リーズナーに最終的な推敲を依頼し、脚本が完成した。

前作でのテッド・ポストとの衝突に懲りていたイーストウッドは本作を自分で監督するつもりでいたが、同時期に製作中だった『アウトロー』(1976年)の監督フィリップ・カウフマンが途中降板し、残りの作業をイーストウッドが引き継いだことで、本作を監督する余裕がなくなった。

そこで気心の知れた第二班監督ジェームズ・ファーゴを監督に昇格させて、作品を完成させた。

共演のタイン・デイリーによると、本作の製作中にイーストウッドが監督と揉めることはほとんどなかったらしい。

国内初公開で驚異的な6,000万ドルの興行収入を記録、海外ではその2倍となり、当時のクリント・イーストウッドにとって最高の興行収入を記録した。

新相棒ケイトの存在感が光る

「法と正義」というテーマは『2』の時点ですでに出涸らし状態だったためか、本作は娯楽に振り切っている。

コミカルな描写と見せ場は増加し、バズーカ砲を所持した悪党の活躍で景気の良い爆破も加味。ハリーの衣装チェンジも頻繁で、全般的にライトな仕上がりとなっている。

今度の敵は左翼過激派組織。

エロいお姉ちゃんを使ってガス会社のトラックを奪う序盤には「おっ」っと思ったが、その後はまぁグダグダで、阿呆の集まりにしか見えなくなる。

彼らの存在に深い意味はなく、ただハリーの敵対者としてのみ存在している記号的な悪人たちなので、まぁこの程度の感想に留まるのは仕方ないか。

一方、興味深いのはハリーの相棒。

毎度空気のような存在感でスポットライトを浴びる暇もなく退場していくハリーの相棒達だが、今回のみ例外的にキャラがよく立っている。

来るべき選挙に備え多様性を訴えたい市長の肝いりで、殺人課に女性刑事ケイト(タイン・デイリー)が配属される。彼女こそがハリーの新相棒だ。

押し付けられた相棒に当初は辟易とするハリーだったが、そのうち名コンビになっていくのが、本作のドラマの骨子となる。

演じるタイン・デイリーはスターリング・シリファントの激推しで、3度断った後に本作への出演を承諾した。人気脚本家シリファントの目に狂いはなく、大スター イーストウッドを相手に、彼女は実に味わい深い演技を見せる。

当初、ハリーは現場経験のないケイトを軽視するのだが、良くも悪くもマイペースなケイトはそんな塩対応などどこ吹く風。次第に法律の知識などハリーにはない強みを発揮するようになる。

ハリーの塩対応は決して彼女が女性だからではなく、ただの役立たずと見做していたからなので、彼女が使えると分かればその意見を尊重する。こうした過程を経て、二人は強力なコンビとなっていくのである。

なお元の脚本ではハリーとケイトは恋仲に発展するはずだったが、デイリーの反対により削除されたという。

結果、プロ同士の信頼関係という軸が明確になったので、この判断は正しかったと言える。

本作での演技が評価されたデイリーは、1981年よりテレビドラマ『女刑事キャグニー&レイシー』に主演。同作は7シーズン125話が放送される人気シリーズとなり、デイリーはプライムタイムエミー賞を4度も受賞した。

ただし、そんなデイリーの演技力をもってしても全体の不出来を救うことはできず、タイトな上映時間であるにもかかわらず、本編はまぁグダグダ。

監督の手腕にも問題があったのか見せ場にもキレがなく、中盤の長い長いチェイスシーンは見ていて飽きてきたし、クライマックスにもハラハラさせられなかった。

『ザ・ロック』(1996年)に先駆けること20年前にアルカトラズ島を舞台に籠城戦を描いたという先見性があったにも関わらず、これを生かせなかったことが悔やまれる。

≪ダーティハリー シリーズ≫
【良作】ダーティハリー_素晴らしきアンチヒーロー
【凡作】ダーティハリー2_白バイ軍団vsハリー
【凡作】ダーティハリー3_極左過激派vsハリー
【凡作】ダーティハリー4_ハリーは脇役
【凡作】ダーティハリー5_ダーティじゃないハリー

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