ザ・ロック【良作】マイケル・ベイの最高傑作(ネタバレあり・感想・解説)

(1996年 アメリカ)
音楽と映像が混然一体となった見せ場はMTV出身監督ならではの完成度だし、アクションでドラマを語るということもできており、2時間たっぷり楽しませてくれます。見てくれ重視の映画なのでたまにおかしな部分もありますが、つっこんだら負けだと思って観てください。

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あらすじ

部下を極秘作戦で亡くし、国家からの恩給も追悼の言葉も得られなかった海兵隊のハメル准将(エド・ハリス)は、合衆国に対して反乱を起こす。彼は軍事施設から毒ガス搭載のミサイルを強奪し、アルカトラズ元刑務所に観光客を人質にとって籠城。1億ドルの身代金を要求する。

これに対して国防総省はネイビーシールズの出動を決定し、サポートとして元アルカトラズの囚人であるジョン・メイソン(ショーン・コネリー)と、FBIの化学兵器担当スタンリー・グッドスピード(ニコラス・ケイジ)も同行することになる。

スタッフ・キャスト

製作はジェリー・ブラッカイマー

『トップガン』(1986年)、『アルマゲドン』(1998年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年)と、80年代から2000年代にかけてアクション映画界を席巻した大プロデューサーです。

金を稼げない映画には価値がないを信条に(本作Blu-rayの特典映像でそう発言しています)、スペックと呼ばれるオリジナル脚本の山の中から観客に受けそうな話を選び出し、大人数の脚本家にブラッシュアップさせ、優れた映像感覚を持つMTV出身の監督に撮らせるという方法でヒット作を量産してきました。本作もそんな作品群の中の一つです。

監督はマイケル・ベイ

元はトニー・スコットにオファーされていたのですが、断られて『バッドボーイズ』(1995年)一本しか撮った経験のないマイケル・ベイが監督となりました。MTV出身で本作撮影時点では30歳という若手だったのですが、オスカー俳優が複数人出演する異色のアクション大作を見事にまとめています。

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特にショーン・コネリーは若いマイケル・ベイを高く評価しており、撮影中にディズニーとベイが揉めて会議に呼び出された際にはコネリーも付いて行って幹部達の度肝を抜き、「彼は良い仕事をしているから自由にやらせろ」と説得したという逸話も残っています。

大勢の脚本家

ブラッカイマー作品の例に漏れず、本作にも大勢の脚本家が関与しています。

『ダブル・ジョパディ』(1999年)のデヴィッド・ウェイスバーグとダグラス・S・クックによるオリジナル脚本を、主にテレビ界で活躍するマーク・ロスナーがリライト。さらに『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)のアーロン・ソーキン、『ダイ・ハード3』(1995年)のジョナサン・ヘンズレー、『バンクジョブ』(2008年)のディック・クレメントとイアン・ラ・フレネが各々の得意分野を担当しています。さらに、クェンティン・タランティーノが脚本の一部を担当しているとの話もあります。どこを担当したのかは明らかにされていませんが、グッドスピードによるビートルズ関係のやりとりはタランティーノらしいなと感じました。

マイケル・ベイによると、本作はほぼジョナサン・ヘンズレー(ノークレジット)の作品だということですが。

演技派俳優勢揃い

アカデミー賞受賞者ショーン・コネリーとニコラス・ケイジがバディを組み、アカデミー賞ノミネート経験者エド・ハリスが敵将ハメル役。スタローンやシュワルツェネッガーの全盛期において、ここまで演技派で揃えたアクション映画はかなり目新しいものでした。

ニコラス・ケイジが演じたFBI捜査官役は当初シュワにオファーされていたのですが、80ページ程度で手書きのメモも入っているような草稿だったので、シュワには断られてニコラス・ケイジがキャスティングされました。

なお、翌年ケイジが主演した『フェイス/オフ』(1997年)でも当初シュワが想定されていたキャスター・トロイ役にニコラス・ケイジがキャスティングされました。

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撮影監督はニコラス・ケイジのいとこ

撮影監督のジョン・シュワルツマンは『アルマゲドン』(1998年)、『パール・ハーバー』(2001年)とマイケル・ベイのキャリア初期を支え、近年は『ジュラシック・ワールド』(2015年)も手掛けています。

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シュワルツマンの継母はタリア・シャイアであり、タリア・シャイアはニコラス・ケイジの父のオーガスト・コッポラの妹です。つまり、シュワルツマンとケイジは血の繋がりはないものの、家系図上はいとこということになります。

感想

マイケル・ベイのベスト作品

破壊大帝マイケル・ベイの30歳の時の作品ですが、MTV出身監督ならではのド派手な映像とハンス・ジマーによる印象的なスコアのハイレベルな融合や、有名俳優の使いこなし方の良さなど、すべての面でうまくいった作品だと言えます。ベイの演出意図が恐ろしいほどハマっており、彼のベスト作品は本作ではないでしょうか。

象徴的なのが中盤におけるサンフランシスコでのカーチェイスで、ショーン・コネリー扮する囚人メイソンが娘に会いに行きたいがためだけにハンビーで市内を暴走するという、よくよく考えてみれば無茶苦茶な見せ場です。

しかし、音楽のサビの如く2時間強の映画の中でここに大きな見せ場があるべきという演出意図がハマったことや、観客の目を楽しませるカーアクションになっていたこと、メイソンが戦う動機付けやニコラス・ケイジ扮するFBI捜査官グッドスピードとの信頼関係を育むきっかけとなる場面であったことなど、2時間の作品においては必要なパーツとなりえており、この荒唐無稽な見せ場はちゃんと機能しています。アクションでドラマを語るというのはこういうことなんでしょう。

以下、何度も見ている作品であるがゆえに文句もいろいろと書きますが、基本的には評価している作品であるという前提で読んでください。

組織論を追及したおもしろさ

この映画は、やはりハメル准将の映画なんでしょうね。仲間思いであるからこそ蜂起を決意した堕ちた天使ぶりが切なく、これを演じるエド・ハリスも悲壮な決意を背負ったエリート軍人役を見事に演じています。

興味深いのは、ハメルの敗因を組織作りとマネジメントに失敗したからという説明にしていることであり、今回の蜂起にあたって旧来からの腹心だけでは手が足らず、経験豊富だが個人的な信頼関係のない軍人2名をグループに入れたことが組織崩壊の原因となっています。

後半、ペンタゴンに要求が通らずリーダーの権威が失墜したことを契機として、この2名がクーデターを起こして組織を乗っ取るのですが、ハメルほどの優秀な軍人がメイソンとグッドスピードというたった2名に負けたとすることは不合理であり、組織の内部分裂が敗因になったという点には「なるほどな」と思いました。

加えて、メイソンはハメルが掌握しているうちはこの組織が暴走することはないと踏んでいたのですが、組織のトップが入れ替わったことで危険なテロ組織に変貌し、本気で潰しにかからねばならないと決意させるというアクション映画としての大きな転換点にもなっています。この辺りも、実によく考えられています。

ハメル准将がミサイルを発射しそうにない

と、ハメルを褒めた後に言うのもアレですが、人格者として描かれているハメルが悪役では、ミサイルが発射されるんじゃないかというハラハラ感はありませんね。もし映画にスリルを求めるのであれば、ハメルは相応しくなかったんじゃないかと思います。

加えて、ハメルほどの優秀な軍人が、到底通るとは思えない要求を合衆国に対して突きつけるという点にも無理があります。極秘作戦で死亡した部下達の名誉を回復し、遺族に恩給を配りたいというそもそもの目的と、実際やってることとの間に乖離ありすぎでしょ。

製作陣もこれらのことは気にしていたらしいのですが、闇落ちした善人というハメル像には惹かれるものがあったようで、結局弱点はそのままにして製作に踏み切ったようです。

ハメルの軍隊に不備が多すぎる

あとハメルの軍隊なんですが、管理体制に不備ありすぎません?

彼らの作戦の要は毒ガスを積んだミサイルなんですが、敵が侵入してきたという逼迫した状況であるにも関わらず、ミサイルにはたった2名の護衛しか付けていません。その結果、メイソンとグッドスピードにアッサリと護衛を倒され、誘導チップを破壊されてミサイルを無力化されるのだから、随分とうっかりさんだなと思います。

メイソンとグッドスピードを拘束した後にも見張りを付けておらず、どうぞ逃げちゃってください状態だし、ここで逆転の隙を作っておかないと映画が進まないだろみたいな制作サイドの都合が透けて見えてきます。これにはちょっと冷めますね。

でも面白いので見ましょう

と、文句を言いたい部分もありますが、細けぇことはどうでもいいタイプの映画ではあるので、あまり深いことは考えずに見ましょう。ほぼ間違いなく楽しめるので。この映画を面白くないと言っている人は見たことがありません。

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