【良作】アサインメント_硬派なスパイアクション(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(1997年 カナダ・アメリカ)
地味だが緊張感に溢れる隠れた名作。派手なドンパチこそないが、わずかなミスが命取りになりかねないという緊張感の連続で、イヤ~な汗をかかされる。また危険な任務に送り込まれる者と、送り出す者との間のドラマもしっかりと構築されており、こちらも見ごたえ十分だった。

作品解説

カナダ出身の映画人達によるポリティカルスリラー

本作は1970年代に悪名を馳せた実在のテロリスト カルロス・ザ・ジャッカルを題材にしたポリティカルスリラー。カルロスはシルベスター・スタローン主演のアクションスリラー『ナイトホークス』(1981年)のモチーフにもなっている。

当初のタイトルはシンプルに『ジャッカル』だったが、同時期にユニバーサルがブルース・ウィリス主演で『ジャッカル』(1997年)を製作中だったことから、タイトルの重複を避けるため仕事を意味する『アサインメント』に改題された。

なお、カルロス・ザ・ジャッカルという名称はフレデリック・フォーサイスの小説『ジャッカルの日』(1971年)に由来するらしい。

『ワイアット・アープ』(1994年)や『告発』(1995年)などで知られるカナダ人脚本家ダン・ゴードンが脚本を書き、同じくカナダ出身の映像派クリスチャン・デュゲイが監督した。

クリスチャン・デュゲイは、これまたカナダ出身のデヴィッド・クローネンバーグの跡を継いで『スキャナーズ2』(1991年)、『スキャナーズ3』(1992年)を監督した人物。

大作やヒット作の類を撮ったことはないが、フィリップ・K・ディック原作の空気感を最も忠実に表現できているとされる『スクリーマーズ』(1995年)や、テレビ映画ながら優れた人物描写が評価された『ヴァージン・ブレイド ジャンヌ・ダルクの真実』(1999年)などを手掛け、90年代には通好みの監督として知られていた。

2000年代に入ると『アート・オブ・ウォー』(2000年)や『EX エックス』(2002年)といった駄作を連発し、やがてテレビ監督に落ち着いてしまうのだが、それは後のことである。

本作が製作されたのはデュゲイの全盛期であり、張り詰めた空気感や、リアリティの醸成など、その手腕は本作でも十分に発揮されている。

拡大公開を見送られてしまう

当初、本作は全米で拡大公開される予定なのだが、どういうわけだか限定公開に切り替えられてしまう。

それを受けてカナダの配給業者も拡大公開を諦め、広く知られることもなくひっそりと公開されてしまった。

感想

徹底した人格改造

DVDがリリースされた直後に見て、あまりの緊張感に圧倒された映画。その後何度も見ているが、見る度に凄い完成度だなと感心する。

PLOや日本赤軍とも関わり合いがあったとされる実在のテロリスト カルロス・ザ・ジャッカルの逮捕劇に着想を得たフィクション。

カルロス(エイダン・クイン)は度重なるテロによって国際的に悪名を馳せていたが、70~80年代にかけては当時の冷戦構造をうまく利用して東側諸国に保護されていたので、西側諸国は手の出しようがなかった。

そんな折、モサドはエルサレムでカルロスと思われる男を発見し捕らえるのだが、彼はアメリカ海軍アニバル・ラミレス少佐(エイダン・クイン/二役)だった。

モサドですら見間違えるほどのそっくりさんの存在を確認したCIAは、アニバルを替え玉に使ってソ連とカルロスとの関係にヒビを入れ、KGBに始末させる作戦を立案する。

ただしモサドとCIAは周到であり、ただ顔が似ているというだけでは海千山千の工作員やテロリストたちを騙し切ることはできないと分かっている。カルロスの側近ならば、ほんの些細な違和感からも異変を嗅ぎとるだろうから。

そこで彼らはアニバルをカルロスそのものに変えようとする。

これが本作最大の見せ場なのだが、彼らはカルロスの生い立ちにまでさかのぼり、その人格に影響を与えたことをアニバルに疑似体験させることで、カルロスならばどう反応するのかを刷り込み、咄嗟の反応に至るまでカルロスと寸分違わぬものにしようとする。

アサインメント(仕事)というタイトルは実に逆説的で、これはただの仕事ではなく、完全な人格改造を伴った非常に危険なミッションなのである。

この執念、やりすぎ感にはまことに恐れ入ったし、正義の人だったアニバルが悪と同化していく過程はスリリングこの上なかった。

ついに潜入に入ってからも、偽物であることを敵に悟られるかもしれないという緊張感が走り続けており、派手なドンパチ以上の見ごたえがあった。

おじさん2人が激シブ

そしてアニバルと、彼を鍛えるおじさん2人の関係性にも要注目。

一人はCIA職員ジャック・ショー(ドナルド・サザーランド)で、彼はパリ支局勤めの時代にジャッカルのテロに遭遇しており、以来、ジャッカル逮捕に執念を燃やしている。

当初はアニバルを作戦のための有効なコマ程度にしか見ていなかったのだが、訓練課程を見守ることでアニバルとの信頼関係を構築するようになり、そのうちジャッカル逮捕よりもアニバルの安全を気にするようになってくる。

もう一人はモサドの作戦責任者アモス(ベン・キングスレー)で、訓練課程や作戦行動においては主導的な役割を果たしている。

彼はショーほど個人的な感情を表に出しておらず、大事な任務としてアニバルに関わっているのだが、部下を安全に帰らせなければならないという責任感から、アニバルへの配慮をしている。

片や屈折した父親、片や厳しい上司。この二人のおじさんが激シブだし、アニバルが二人の思いに応えようとすればするほど、彼は危険に迫っていくという倒錯した構図がドラマを盛り上げる。

国際的な諜報戦を扱ったスパイスリラーとしても、男の師弟関係を描くドラマとしても、本作は傑出した作品ではなかろうか。

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