【良作】野獣教師_必修科目はベトナム戦争(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1996年 アメリカ)
『プラトーン』のトム・ベレンジャーが圧倒的戦闘スキルを持つフロリダの坂本金八に扮する闇鍋アクション。舞台となる学校の常軌を逸した荒れ具合や、それに対抗する野獣教師の躊躇のない暴力、そして学校を舞台にしたドンパチなど、いろいろとネジがぶっ飛んでいました。

作品解説

監督は『F/X 引き裂かれたトリック』のロバート・マンデル

本作を監督したのはロバート・マンデルで、その代表作は映画の特殊メイクアーティストが巨大な陰謀に巻き込まれるサスペンス『 F/X 引き裂かれたトリック』(1986年)です。

また、無名時代のブレンダン・ フレイザー、マット・デイモン、ベン・アフレックらが出演したドラマ『青春の輝き』(1992年)も手掛けており、サスペンスと青春ドラマの両面のキャリアを買われて、本作に就任したものと思われます。

90年代半ば以降はテレビ界に軸足を移しており、『X-ファイル』の記念すべき第一話や、『プリズン・ブレイク』『LOST』などの人気作の演出を手掛けています。

主演は軍人俳優トム・ベレンジャー

野獣教師を演じるのはトム・ベレンジャー。

1949年シカゴ出身で、長い下積み生活の後、オリバー・ストーン監督の『プラトーン』(1986年)での鬼軍曹バーンズ役でブレイクしました。

80年代後半から90年代前半にかけては主演級の俳優となり、リドリー・スコット監督の『誰かに見られてる』(1987年)や大ヒット作品『メジャーリーグ』(1989年)などに主演。

ただしライフワークだと言えるのは1993年に第一弾が公開された『山猫は眠らない』(1993年)シリーズであり、2020年までに製作されたシリーズ全8作中6作で、職人気質のスナイパー トーマス・ベケット役を演じています。

アクションの脇役でお馴染みの顔が大集結

本作には、90年代のアクション映画でよく見かけていた顔も大集結しており、「あ、あの人だ!」という発見も鑑賞の楽しみになっています。

  • アーニー・ハドソン(ローレイ校長):『ゴーストバスターズ』(1984年)の一人。『クロウ/飛翔伝説』(1994年)ではエリックの協力者であるアルブレヒト巡査部長を演じた素敵な人だが、今回は…。
  • ダイアン・ヴェノーラ(野獣教師の恋人ヘツコ):『ヒート』(1995年)でアル・パチーノの奥さん役を演じ、『ジャッカル』(1997年)でブルース・ウィリスを追うロシア内務省コスロヴァ少佐を演じた強い女性。
  • グレン・プラマー(野獣教師の同僚ダレル先生):『スピード』(1994年)でキアヌ・リーブスにスポーツカーを強制接収され、『スピード2』(1997年)でジェイソン・パトリックにレジャーボートを強制接収された気の毒な人。今回も気の毒な目に遭う。
  • レイモンド・クルス(野獣教師の部下①):軍人役を得意とし、『沈黙の戦艦』(1992年)ではセガールと、『今そこにある危機』(1994年)ではハリソン・フォードと共に戦った頼れる男。『ザ・ロック』(1996年)ではエド・ハリスに仕えました。
  • ルイス・ガスマン(野獣教師の部下②):80年代から90年代にかけては『ブラック・レイン』(1989年)や『カリートの道』(1993年)などクライムアクションによく出ていたが、いつの間にかスティーヴン・ソダーバーグやポール・トーマス・アンダーソンのお気に入りになっていた野獣教師の出世頭。
  • ウィリアム・フォーサイス(野獣教師の部下③):『アウト・フォー・ジャスティス』(1991年)では組の指示を受け付けない狂犬ヤクザとしてセガールと対峙し、『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』(2005年)では殺人一家を追い込む暴力保安官ワイデルを熱演。過剰な人間、狂った人間を得意としており、本作でもその魅力を発揮します。

感想

ゴールデン洋画劇場で話題になったやつ

本作に初遭遇したのはゴールデン洋画劇場で、私が高校生の頃。その直球勝負な邦題ゆえか、月曜の学校では物凄く話題になっていました。

ヤンキーを二階の窓から放り投げる、銃撃&爆破で校舎を豪快に破壊するなどのアクションが阿呆な高校生には深く刺さり、「2階から落ちても人は無事なものなのか」「うちの学校でヤクを隠すとしたらどこがいいか」などなど、一日中野獣教師ネタで盛り上がったのでした。

そんな思い出の映画なのですがソフト化には恵まれず、90年代にVHSが出たっきりでディスク化がなされなかたっために、再見困難な状態が何年も続いていました。

数年に一度「昔見た野獣教師をもう一回見たいなぁ」と思うことがあり、Amazonの中古VHSをポチリかけたこともあるのですが、今回テレ東さんがやってくれましたよ。

2021年11月6日のサタシネ枠で放送。しかも懐かしのゴールデン洋画劇場の吹替版。

この機会を絶対に逃してはならんと感じた私は、家にある三台のHDDすべてで予約録画するという万全の体制で臨み、トムベレ先生の魂の授業を拝聴いたしました。

必修科目はベトナム戦争

傭兵シェイル(トム・ベレンジャー)の恋人で高校教師のヘツコ(ダイアン・ヴェノーラ)が暴漢に襲われ、学校の不良たちと揉めてることが原因かもねなんて言うので、シェイルが代理教師として高校に潜入することがざっくりとしたあらすじ。

原題の”The Substitute”は代理教師を表しています。

舞台となる高校のインパクトが物凄くて、ここはクラブですかという程そこら中でヒップホップが流れており、トイレは落書きだらけ。ガラの悪い生徒達が跋扈する病んだアメリカ(©水野晴朗)の集大成のような施設となっています。

そんな手の付けられない不良達に野獣教師が挑むのですが、ガチの殺人マシーンが街の不良レベルに格の違いを見せつけるドラマには男の浪漫が宿っていますね。

教室がどれだけ荒れていても野獣教師はどっしりと構えており、普通の教師とは一味も二味も違った気迫で不良達を着席させ、授業を開始します。

テーマは「ベトナム戦争と俺」

ベトナムの地理から始まり、弾を喰らった話とか、チャーリー・シーンが部下だったとか、ウィレム・デフォーと仲悪かったなどの実体験(半分嘘)でガチ勢の重みを見せつけ、ヤンキーまでがその話に黙って耳を傾けます。

そしてベトナム戦争は北と南のシマ争いだという野獣教師史観が入り、その竹を割ったような解釈にはヤンキーたちも納得するしかないのでした。

一応、野獣教師の専門は国語ということになっているのですが、自分のしたい話をする、学習要領なんて知ったことかという姿勢も含めて、男の浪漫を感じました。

学校の先生が突然権限行使して教室のテレビをつけ始めるようなものでしょうか。

鉄拳制裁から銃弾制裁へ

かくして荒れた教室を平定した野獣教師は、学園を蝕む病巣へと迫っていきます。

すると、校長が不良グループを動かして学校をドラッグの流通経路にしていたことが判明。

ここからは学園ものを超越してヨゴレ校長の率いる犯罪組織と、野獣教師率いる傭兵部隊とのガチの戦闘へと発展していき、鉄拳制裁から銃弾制裁へと雪崩れ込んでいきます。

学校を舞台にドンパチし、ロケット砲も炸裂。もうやりたい放題です。

トム・ベレンジャーの動きがもっさりしていてスローモーションかと思ったとか、傭兵が圧倒的な力でねじ伏せるのかと思いきや意外とどっこいの勝負とか、ちょいと残念な要素もあったものの、学校で銃撃戦をするというぶっ飛んだ発想の時点で嬉しくなったので問題ありません。

スポンサーリンク
公認会計士のB級洋画劇場