【傑作】12モンキーズ_90年代SFにおける最大の収穫(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
SF・ファンタジー

(1995年 アメリカ)
ブルース・ウィリスとブラッド・ピットという異色タッグによるSFドラマ。タイムトラベルものでありながら過去の改竄はできないというユニークなルール設定が光っている。また脚本の構成が驚くほどよくできており、すべての伏線が綺麗に回収される結末には驚くしかない。

フランス映画『ラ・ジュテ』(1962年)のリメイク

映画プロデューサーのロバート・コスバーグは、クリス・マルケル監督のSF短編『ラ・ジュテ』(1962年)が長編SF映画の土台になりうると考えた。

コスバーグはマルケルを説得してリメイクに向けた筋道を作り、その提案を受けたユニバーサルがリメイク権を購入。こうして本作の企画はスタートした。

ロバート・コスバーグは『コマンドー』(1985年)の共同プロデューサーにも名を連ねる信頼できる男だが、本作においては製作総指揮としてクレジットに名前を残しているだけで、プロダクションにはほとんど関与していないらしい。

実質的に現場を仕切っていたプロデューサーはチャールズ・ローヴェン。後に『ダークナイト』3部作や『オッペンハイマー』(2023年)などを手掛け大物となる人物である。

ローヴェンは『サルート・オブ・ザ・ジャガー』(1989年)でも組んだデヴィッド・ピープルズを脚本家として起用。ピープルズは『ブレードランナー』(1982年)や『許されざる者』(1992年)を手掛けてきた名脚本家である。

ピープルズの執筆した脚本は興味深く知的なもので、ハリウッドでこれを演出できる監督は限られている。ローヴェンはテリー・ギリアムに白羽の矢を立てた。

ギリアムは『未来世紀ブラジル』(1985年)の製作時に血みどろの争いを繰り広げたユニバーサルからのオファーに驚いたが、10年で経営陣は入れ替わっており、新社長ケイシ―・シルバーはギリアムへの支持を表明。『ブラジル』を巡ってギリアムと対立した社員に干渉させないこととした。

またギリアムは『ブラジル』で意に反した再編集をされたという苦い経験から、本作の最終編集権を握ることを希望。ユニバーサルは、製作費を低額に抑えることと、大スター ブルース・ウィリスの起用を条件に同意した。

当初ギリアムが考えていたのは「コール役:ニック・ノルティ×ゴインズ役:ジェフ・ブリッジス」の組み合わせだったが、スタジオ側の要求を飲む形で「コール役:ブルース・ウィリス×ゴインズ役:ブラッド・ピット」に落ち着いた(その他、ニコラス・ケイジやトム・クルーズも候補だったがギリアムが断ったらしい)。

当時のギリアムは人気監督で多くの俳優は彼との仕事を望んでいたことから、ブルース・ウィリスは通常よりもギャラを低く抑えることに承諾し、またブラピは『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994年)や『レジェンド・オブ・フォール』(1994年)が公開される前だったので比較的低額のギャラで契約できた。

最終的にかかった製作費は2900万ドル。同年にウィリスが主演した『ダイ・ハード3』(1995年)の9000万ドル、ブラピが主演した『セブン』(1995年)の3300万ドルと比較しても際立って低い金額に収まった。

商業的大成功

1995年末の限定公開を経て1996年1月に全米公開されると3週連続興行成績No.1を獲得し、全世界で1億6800万ドルを売り上げる大ヒットとなった。

また批評面でも成功をおさめ、ブラッド・ピットがゴールデングローブ賞とアカデミー賞の候補となった。うちゴールデングローブ賞では助演男優賞を受賞。ブラピが大きな映画賞を受賞するのはキャリアではじめてのことだった。

寂寥感漂うSFドラマ

私は高1だったが、公開時にはかなり話題になった映画。

と同時に、大きな混乱も生んだ映画。

複雑に入り組んだ内容とは裏腹に、ブルース・ウィリス主演のSF大作として売られていたので、これを見た当時の観客達は混乱した。

「思ってたのと違った」「訳わからんかった」「結局誰が悪かったん?」・・・私の周囲の高校生の理解力ではこんな感想ばかりだったと記憶している。

1996年のパンデミックで世界人口の99%が死滅し、生き残った1%は汚染された地上を離れ、地下で細々と暮らしている未来。

科学者たちはタイムマシンを使って囚人たちをパンデミック前の世界に送り込んでいるのだが、『ターミネーター』(1984年)や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)とは違い、過去の改変はできない。科学者たちはただ原因を探るためだけに囚人を過去に送り込んでいるのだ。

歴史をどう改変するのか、あるいは元に戻すのかがタイムトラベルものの醍醐味であるが、本作はその方向を向いていない。

破局という結末が変えられない中で進行していく物語にはハリウッド大作らしからぬ寂寥感が漂い、このドラマの中で七転八倒する主人公たちの姿にも、どこか冷めた目を向けてしまう。

主人公は2035年の囚人ジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)。
「我々がやった」という落書きを残した12モンキーズと呼ばれる秘密結社こそが、1996年のパンデミックの元凶ではないかという推測の元、コールは過去に送り込まれて12モンキーズの謎を探る。

そこで出会うのが後の12モンキーズリーダー ジェフリー・ゴインズ(ブラッド・ピット)。
ゴインズは著名なウイルス学者の息子だが、父の動物実験に対する過激な反対運動を企てたため、精神病院に入れられていた。

そして90年代の世界で身元不明のコールを担当することとなるのが精神科医のライリー博士(マデリーン・ストウ)。彼女がコールの旅の同伴者となる。

ブルース・ウィリスやブラッド・ピットの演技に注目が集まりがちだが、スーパー美人でありながら幸薄さの漂うマデリーン・ストウが、作品の雰囲気づくりに大きく貢献している。思い切ってストウ扮するライリー博士を主人公にしても良かったのではないだろうか。

当初、ライリーは、タイムトラベルだの人類滅亡だのを唱えるコールを妄想性障害だと考えていたのだが、コールと過ごしているとあまりにも不思議なことが連続するものだから、彼の言うことを信じ始める。

コールはただの精神病患者なのか、それとも本当のタイムトラベラーなのかというミステリー要素を置いても面白かったと思う。

円環のように繋がっていく物語 ※ネタバレあり

12匹の猿が為す円から飛び出そうとする一匹の猿。

これは12モンキーズのロゴマークであると同時に、コールの立場を暗示しているようでもあった。

過去を改竄することはできない設定であるため、起こる事象はすべて歴史として組み込み済であり、時間を旅するコールの物語は円環のように繋がっていく。

精神病院でコールの話した内容が、後のゴインズの着想の元になる。

パンデミックの遠因を作ったのは自分ではないかと思い苦しみ、その苦痛から逃れるため「すべては妄想だった」で片づけようとするコール。

これは変えられぬ運命から時に目を背け、時に突き抜けようとする男の物語なのだ。

そして人類滅亡を信じ始めるライリー博士との間で立場の逆転が起こり、旅の当事者はコールからライリーにバトンタッチする。この動的な物語が面白い。

最終的に、12モンキーズはただの迷惑集団であり、パンデミックとは無関係だったことが明かされる。

『12モンキーズ』というタイトル自体がミスディレクションだったという壮大なギミックには心底驚かされた。

そしてコールの旅は、幼少期のコールがタイムトラベルをしてきた自分の死を目撃していたという衝撃的な形で幕を閉じる。

このオチは元ネタ『ラ・ジュテ』に由来するものだが、この美しくも壮絶な幕の閉じ方には何度みても痺れる。

すでに高い評価を獲得してはいるが、そんなもんじゃないほど凄い映画じゃないかと思う。

少なくとも、90年代のSF映画では一番の完成度じゃないかな。 それほど好きな映画。

スポンサーリンク