トータル・リコール (2012年)【駄作】見せ場の連続なのに手に汗握らない(ネタバレあり・感想・解説)

(2012年 アメリカ)
21世紀末の世界大戦の影響で地上の大半は居住不可能になり、生き残った富裕層はブリテン連合に、労働者層はオーストラリアのコロニーに居住していた。コロニーの労働者ダグは夢で繰り返し見る謎の美女に憑りつかれており、そこから記憶旅行サービスへも関心を持ち始める。

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©Sony Pictures

予告編だけの監督・レン・ワイズマン

レン・ワイズマンを知ったのは2003年の監督デビュー作『アンダーワールド』であり、『ブレイド』や『マトリックス』をさらに洗練させたかのような同作のビジュアルには圧倒的な引きがあって予告の時点でかなり見たいと思ったのですが、本編の内容は予告の数十秒で見た映像が2時間近く続くだけで面白くも何ともなく、激しく落胆させられました。

『インデペンデンス・デイ』『メン・イン・ブラック』『GODZILLA』に美術部門担当として加わり、その後CMやPV界で名を馳せるようになったという経歴が示す通り、この人は一瞬で心を掴むビジュアルの構築にはかなりの実力を持っています。

ただし2時間という長編の物語を紡ぐということ、物語の流れの中でアクションを見せるということは不得意としているために、映画本編はたいてい面白くありません。現在はダイ・ハード6の制作準備に入っているようなのですが、嫌な予感しかしません。

ご都合主義の嵐

主人公は何を目指しているのか、なぜ今戦闘が始まったのかという基本情報の整理すらできていないままにドンパチが始まるので、そこに観客の感情は乗っかりません。

そしてどれだけの多勢に囲まれても主人公側は一発も被弾せずに危機を切り抜けるのですが、かと思えば、ここはいったん敵の手に落ちないと話が進まないという場面になると取っ捕まるという、制作側の事情が透けて見えるような都合の良い見せ場ばかりなので余計に観客側の温度感は下がっていきます。本作全体が、見せ場の連続なのに手に汗握らないというアクション映画の末期症状みたいな状態となっています。

借り物だらけのビジュアル

本作の世界は連邦とコロニーという2つの地域・国家から形成されているのですが、資本家が生活する連邦は『マイノリティ・リポート』、労働者階級が生活するコロニーは『ブレードランナー』の世界であり、フィリップ・K・ディック映画化企画の先輩格2作品のビジュアルをここまで臆面もなく拝借するものかと悪い意味で驚かされました。

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他方で、肝心のバーホーベン版『トータル・リコール』の世界観からの影響は希薄であり、同作に対してはわざとらしくぶっこんだ小ネタで仁義を切っているだけという妙な状態となっていることが可笑しかったです。

そういえば連邦とコロニーって宇宙世紀っぽい名称だなと思ったのですが、これは日本の配給会社が僕たち向けに気の利いた訳をしたというわけではなく、オリジナルでも” the United Federation of Britain”と” the Colony”であって特に他意はないようです。

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ディレクターズカット版は話が違う

本作にはディレクターズカットが存在しているので、こちらについても触れておきます。

  1. 冒頭の夢の場面が長く、クエイドとメリーナがキスをする場面が追加されている。
  2. 劇場公開版では全カットされていたイーサン・ホークの出演シーンが復活し、コリン・ファレルはコロニー潜入用に整形手術をされた後の顔であり、クエイド(=ハウザー)の本来の顔はイーサン・ホークであるという設定が加わった。
  3. メリーナはマサイアスの娘であるという設定が加わった。
  4. 記憶マシーンにかけられる直前、確実に現実世界であると認識できる最後の場面でクエイドの腕に押されたスタンプが今のクエイドにはなく、これがリコール社の夢だったことが明示される。

上記がディレクターズカット版での主な復活場面であり、1~3についてはあってもなくてもどちらでも良い情報かなと思いました。本編に対して影響を及ぼしているわけでもないのにイーサン・ホークがカットされた理由が分からなかったくらいです。

ただし4はかなり重要な点かなと思います。現実に起こったことっぽい印象だった劇場版とは180度印象が変わりますから。そして、上記で述べた通りのご都合主義的な見せ場の連続も、「これはリコール社の夢です」という注が入ったおかげで腑に落ちたので、私としては作品の持つ欠点を補うこちらのオチの方がありかなと思います。

なおこのディレクターズカット版、初回盤Blu-rayには劇場公開版と同時収録されていたのですが、再生に不具合があったためかその後出回った廉価版は劇場公開版のみの収録となっており、現在では鑑賞可能な手段が限られているようです。初回盤Blu-rayを持っている方は手放せませんよ。

まとめ

1990年のポール・バーホーベン版も随分と大味なアクション大作だと思っているので、過去作品を過度に神格化した上でリメイクを腐す気はないのですが、それでもアクション映画としてただただ面白くなかったという点で低評価となりました。

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コメント

  1. nic より:

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    はいまひとつだったのですね(/。\)

  2. children-of-men より:

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    >nicさん
    コメントいただきありがとうございます。
    バーホーベン版も決して最高の出来だとは思ってないんですけど、脂の乗り切った時期のシュワとバーホーベンには異常な勢いがあったのは確かで、リメイク版にはそういう有無を言わせないものがなかったように思います。