【駄作】ブーメラン_エディがトレンディ(ネタバレあり・感想・解説)

その他
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(1992年 アメリカ)
エディ・マーフィによる都会のラブコメディだが、同時代にフジテレビが作ったドラマのようなノリで、あの時代には全世界的にこの手のノリが流行っていたことが分かった。現代の目で見るとま~ったく面白くはないが。

感想

あの吹替を復活させてほしい

中学時代にゴールデン洋画劇場で見て、まったく面白くなかったと記憶している。エディ・マーフィは何気に駄作率が高い。

その後の人生では特に触れてこなかった作品だが、2022年4月にテレ東サタシネ枠での放送があったので、とりあえず録画していた。

ただし翌日に確認すると、ゴールデン洋画劇場でお馴染みの下條アトム版吹替ではなくソフト版の山寺宏一吹替えだったので、何となく見る気をなくしたまま1年ほど放置の状態だった。

エディ・マーフィが長く契約状態にあったパラマウントはディスクメディアに消極的で、他社が複数の吹替版を収録した商品をどんどんリリースしているトレンドに逆らい、馴染みの吹替を復活させてくれない。

エディ・マーフィの顔を見た瞬間に下條アトムの声が脳内再生されるゴールデン洋画劇場世代にとって、この状況にはなかなか厳しいものがある。

山寺宏一さんも上手ではあるんだけど、これは上手い・下手の問題ではない。聞いた瞬間に「これはエディの声じゃない」と脳が反応してしまうのだ。

テレ東さんには頑張ってもらって、国宝ともいえる下條アトム版吹替えをできるだけ多く復活させていただきたいところである。

そんなわけで見るタイミングを逸していた録画だったが、このGWは家族が帰省してペットたちの世話のために私だけが居残り、暇だったので晴れての鑑賞となった。

エディのトレンディドラマを一体誰が見たいんだ

映画の内容は都会のラブコメディというやつだが、その内容のなさは上記のチラシに集約されている。

さすがエディ

ビバリーヒルズやN.Y.

楽に生きてる感じです。

チラシの記載を見るだけでは、どんな話なのかサッパリ分からない。まったく無関係なビバリーヒルズという地名をフィーチャーするあたり、大ヒット作『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)と何としてでも結び付けたいという目論見を感じる。

ページ下部にはご丁寧に『ビバリーヒルズ・コップ』のエディの写真まで付け加えられており、観客に何を訴求すべきか考えあぐねた宣伝担当者の苦悩が伺える。

『48時間』シリーズや『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズでアクションコメディをやり尽くしたエディは、80年代後半から90年代前半にかけて新境地開拓に躍起になっていた。

この時期の悪あがきが人気凋落に繋がり、『ナッティ・プロフェッサー』(1996年)や『ドクター・ドリトル』(1998年)での再浮上までの低迷期を招いてしまうのだから因果なものだ。努力がすべて報われるわけではないという人生の真理の一端が垣間見えてくる。

そんな迷走期ど真ん中に製作されたのが本作であり、なんとエディは得意のマシンガントークを封印している。

自ら笑いを取りに行かないエディを誰が見たいんだと思うところだが、この時期にはまだ大スターとしての威光は健在であり、全米で7000万ドル、全世界で1億3000万ドルを稼ぐ大ヒットとなった。

本作で落胆させられた客が後にエディ離れを起こしたのだろう。

エディ扮するマーカスは化粧品会社の広告宣伝部長として辣腕をふるっているが、会社の買収元より送り込まれてきた女上司ジャクリーン(ロビン・ギヴンズ)に重要ポジションを奪われてしまう。

当初は対立するマーカスとジャクリーンだが、やがてお互いを意識するようになるという、日本だと三上博史や浅野温子あたりが出演しそう内容である。これをエディがやる意味があったんだろうかと首をかしげざるを得ない。

女たらしのマーカスはナイスバディのジャクリーンの外観に惹かれるんだけど、そのうち心の交流を求めるようになる。

主人公は健全な成長を遂げたと言えるのだが、対するジャクリーンが曲者で、職場恋愛なんて面倒臭いし体の関係だけでいいのよという姿勢を崩さない。

世の男性の多くは「なんて素敵な彼女なんだ!」と思うところだが、心の交流を求めるエディにとってはそのことが不満で、次第に心が離れていく。

そこに伏兵として現れるのがジャクリーンのアシスタントのアンジェラで、当初、マーカスはアンジェラなど眼中になかったんだけど、本命のジャクリーンとのすれ違いの中でアンジェラに気持ちが移っていく。

シナリオ上では、派手で洗練されたジャクリーン vs 芋っぽいが純朴なアンジェラという構図があって、女性の好みの変化でマーカスの心の成長が描かれるという構図になっているんだけど、問題は、アンジェラを演じているのがハル・ベリーだということだ。

若い頃のハル・ベリーの美しさは尋常ではなく、どう見ても芋っぽい子ではない。いの一番にアンジェラを選ばなきゃおかしいだろ。

そんなわけで基本的な構図が成立していないので、このドラマが本来持つべき意義を失っている。

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