【良作】メン・オブ・ウォー_ラングレンの最高傑作(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
MEN OF WAR, Dolph Lundgren, 1994, © Dimension Films
軍隊・エージェント

(1994年 アメリカ)
戦闘マシーンのドルが任務を放棄して原住民を守るというほぼ『アバター』(2008年)な話なんだけど、腕の立つ脚本家が複数参加しているおかげで人間ドラマがうまくまとめられており、侮れない仕上がりとなっている。ドル単独主演作では一番面白いと思う。

作品解説

遅れてきた80年代アクション

本作の脚本が書かれたのは1980年代初頭のことで、映画監督ジョン・セイルズの手によるものだった。

セイルズは『セコーカス・セブン』(1980年)や『真実の囁き』(1996年)などで評価され、ジム・ジャームッシュと並んでNYインディーズの雄と称された監督だが、雇われで脚本を書いて監督作の製作費を捻出するというサイクルを持っていた。

その筋で『ピラニア』(1980年)や『ハウリング』(1982年)を手掛け、ノークレジットではあるが『アポロ13』(1995年)や『ミミック』(1997年)にも参加しており、そんな中で執筆されたのが本作の脚本である。

権利を保有していた製作会社が倒産したこともあり、80年代には陽の目を見ることはなかったのだが、90年代初頭にこの古臭い脚本がドルフ・ラングレン主演作として突如復活した。

ただしプロデューサー達は、内省的な要素も強かったジョン・セイルズの脚本に対し、ドルフ・ラングレンの演技力では太刀打ちできないと考えており、脚本の書き直しが必要であると判断した。

のちに『バレット・モンク』(2003年)や『カンフーパンダ』(2008年)を手掛けるイーサン・リーフ&サイラス・ヴォリスがリライトに雇われてドラマは群像劇に変更され、元はクライマックスにしかなかったアクション要素が増強された。

撮影は1993年9月から12月にかけて行われ、1994年1月に映画は完成。

当初はソニーピクチャーズ傘下のトライスターが配給する予定だったが、試写の結果が良かったことからミラマックス傘下のディメンション・フィルムが配給権を買い取った。

しかしミラマックス社長ハーヴェイ・ワインスタインは、ドルフ・ラングレンでは集客が見込めないと考えて1年間も作品を棚ざらしにした上で、1995年12月にビデオスルーでリリースした。

フランスなど一部の国では劇場公開されてヒットしたし、オリジナル脚本を書いたジョン・セイルズからもラングレンの最高傑作であるのと評価を受けていたにも関わらず、この冷遇である。

最高傑作がビデオスルーに落とされたラングレンはお気の毒としか言いようがない。

感想

ランボー×コマンドー

初見は10代の頃で、結構気に入ったので300円の中古レーザーディスクなども購入していた。

数年前にはHDマスター版と称されたDVDが出ているのを発見し、たったの500円だったので有難く購入させていただいたが、この度Amazonプライムに上がっているのを発見。初のフルHDでの鑑賞となった。

画質ははっきりと向上しており、タイで行ったというロケーションの美しさも格別のものがあった。需要的に厳しいのかもしれないが、Blu-rayでもぜひリリースしてほしい作品である。DVDからはオミットされた大塚明夫さんの吹き替えも込みで。

内容はドル版ランボー。

元軍人のニック・ガナー(ドルフ・ラングレン)は昼間っから飲んだくれる生活を送っていたが、ある時いけ好かないヤンエグ(死語)から、「君に頼みたい仕事があるんだけど」と声をかけられる。

それは鉱物資源が眠る孤島での採掘権に関わるもので、原住民たちとの交渉では埒が開かないものだから、武力での脅しをかけたいという内容だった。

いい金になりそうなので、かつての部下たちをスカウトして現地に向かうニックだが、島民たちは底抜けに良い奴らだった。完全に情が移ったニックは、島を守るため雇い主に反旗を翻すというのが、ザックリとしたあらすじ。

人情のために戦う殺人マシーンという、アクション映画好きならば何度見てきたのか分からないほどの定番ストーリーではあるが、定番であるがゆえの抜群の安定感がある。王道ストーリーはきっちりと面白かった。

加えて、人間ドラマもうまくまとめられている。

雇い主にニックを紹介したのは元上官であるメリック大佐(ケビン・タイ)であり、二人の間には親子のような信頼関係がある。『ランボー』(1982年)におけるジョン・ランボーとトラウトマン大佐のようだ。

90年代アクション映画あるあるで、孫子の「兵法」への言及によってキャラクターの知的レベルを示すという描写があるが(『パッセンジャー57』『グリマーマン』etc…)、例に漏れず本作でもニックとメリックは会話に孫子の知識を織り交ぜており、両者ともに知性派であることがよく分かる。

そしてメリック大佐にはもう一人の腹心キーファー(トレヴァー・ゴダード)がいるのだが、一方こいつは力押ししか知らない完全なバカ。孫子の話題にも付いて来られない。

よってメリックはキーファーを全く評価していなくて、「馬鹿とハサミは使いよう」くらいの感覚で付き合っていることが、序盤の会話から伺える。

まさに不肖の弟という感じであるが、キーファー自身にも自分が軽く見られているという自覚はあるらしく、一方メリックから目をかけられているニックに対する激しい敵対心と嫉妬心を抱いている。

この辺りは『コマンドー』(1985年)におけるジョン・メイトリックスとベネットの関係性のようだった。

後半にてキーファーは、寝返ったニックに代わって島への侵攻を指揮することとなるのだが、従来から燻っていた3者の愛憎関係と相まって、戦闘には何とも言えない緊張感が漂っている。

アクションと人間ドラマがうまく絡められているのだが、これは脚本のリライトを担当したイーサン・リーフ&サイラス・ヴォリスの功績だと推測される。

二人の代表作『カンフーパンダ』(2008年)にも弟子の育成に失敗したカンフー・マスターが登場したが(名優ダスティン・ホフマンが声を担当)、本作はその原型と見ることができるのだ。

傭兵内の人間ドラマが面白い

兎にも角にもニックは全国で部下を集めて7人の部隊で島に乗り込む。黒澤明の時代より、7人は集団アクションの基本単位だ。

上述した通りニックは途中で心変わりするのだけど、面白いのがここで部隊が分裂するということだ。

6人いる部下のうち、ニックに従うのが3人、雇い主との契約続行を決めていったん島を出るのが3人。契約続行組は敵として島に戻ってくることとなる。

味方が分裂するという展開を迎えるアクションはありそうでなかったので新鮮だったし、両者の関係性も興味深い。感情的な確執があるわけではなく、「お前そっちなんだ」程度の感覚なのだ。

彼らは傭兵なのでひたすらドライで、明日の敵となる知り合いに対しても特段根に持ったりしない。

これは師匠メリックも同じくで、ニックがあちら側に付いたという事態を受け、推薦者としての責任もあるので自らが現場に出てくるんだけど、彼の目的はあくまで任務遂行。

裏切ったニックを罰してやるみたいな行動をとることはなく、「できればニックが黙って島から出てってくれればいいのにな」くらいに構えている。

なので終盤にて雇い主が殺されて、もはや金なんてビタ一文受け取れない事態となると、「やめやめ、もう帰るぞ」という態度になる。

他方、私情のみで動いているのがキーファーであり、他の傭兵達との対比によって、なぜこいつがメリックから評価されていないのかがよく分かる。

雇い主が殺されても「俺とニックの決着はまだだ!」みたいな態度でファイティングポーズを緩めることはなく、メリックからは心底呆れられる。

舐めてた原住民が実は武闘派だった

もう一点、本作にはアツイ点がある。それは「舐めてた原住民が実は武闘派だった」という点である。

ニック達が上陸した当初、島の原住民たちは「争いごとを知らない呑気な人たち」という風情で登場する。傭兵たちがどれだけ凄もうが、銃をぶっ放そうがまったく動じない。

その時点では「平和ボケの境地かな?」なんて思うわけだが、実は喧嘩慣れしすぎて腹が座りまくった人たちだったということが分かる。

キーファーら第二陣が攻めてくると分かった時点で、原住民たちはウォーペイントをして戦闘民族に戻る。

いざ実戦となると銃を持った敵相手にもまったく怯まず、仮にニックがいなくても自力で勝てたんじゃないかというほどの活躍を披露。

島の内部には洞窟があって、その入り口にはご丁寧に洞窟の地図が書いてあるんだけど、なんとこれがまったくのデタラメ。

洞窟まで誘い込んだ敵を道に迷わせて最終的には餓死させるという、とてつもなく残虐かつ胸のすく戦略であることが分かる。物凄い奴らだ。

ドルに守られる一方かと思われた原住民が実は強かったという意外性も最高だった。

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