【凡作】レッド・スコルピオン2_話はマズイがアクションはイケる(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(1994年 アメリカ)
レッド・スコルピオンは団体名だったという、驚きの後付け設定が披露される続編。新しいレッド・スコルピオンには前作のドルに匹敵する個性こそないが、ジョン・ウースタイルのアクションのレベルは高く、多くを期待しなければそれなりに楽しめる。

感想

レッド・スコルピオンの公式続編

10代の頃に地上波深夜枠で見て、「話はマズイがアクションはイケる」とまぁまぁ気に入った映画。

その後に300円くらいで中古レーザーディスクを買って、アクション場面だけを何度も見たが、当時使っていたLDプレイヤーが壊れたタイミングでソフトも処分してしまい、その後は本作も忘却の彼方に消えていた。

最近、第一作『レッド・スコルピオン』(1989年)のBlu-rayを買ってそこそこ楽しめたものだから、ついでに続編も見たくなってきたのだが、本作はDVD化がなされていない。

本国アメリカでも未DVD化なので、今後のソフト化の見通しは絶望的だろう。

そこで30年近く前のレーザーディスクやVHSを探したところ、amazonで中古VHSが1円で売られていたので、ありがたく購入させていただいた。

本作を知って誰しもが思うのが、「本当に『レッド・スコルピオン』の続編なの?」ってことである。本来無関係な映画をヒット作の続編ということにする手法はかつて日本の配給会社がよく用いており(『サスペリアPART2』『沈黙の要塞』)、ドルが出てこない本作でもそれを疑うところだ。

しかしご安心いただきたい。原題も”Red Scorpion 2″だし、本編中に前作の内容に言及する場面もあって、これは公式が製作したれっきとした続編である。

訓練教官いわく、「ソ連軍には赤いサソリ団(=レッド・スコルピオン)という特殊部隊があったのだが、ソ連崩壊と共に消滅」、「ニコライ(ドルフ・ラングレン)は最後にして最強の隊員だった」とのこと。

前作のニコライはソ連軍に反旗を翻し、ブッシュマンにサソリの入れ墨を入れられてレッド・スコルピオンとして生まれ変わったはずなんだけど、その辺りの経緯はシリーズ化にあたってなかったことにされたらしい。

前作の内容を覚えてる奴なんて誰もいないだろうという、公式の豪快な割り切りを感じた。

90年代の特攻大作戦

今回の赤いサソリ団は、アメリカ政府の国家保安委員会内で設立される。

時のアメリカ政府は白人至上主義者と結びついた宗教カルトに頭を悩ませていた。90年代前半の社会問題だったネオナチと武装カルトを作劇に取り込んだ設定のようで、宗教カルトがFBIとの大銃撃戦を繰り広げた末に81名もの死亡者を出したブランチ・ダビディアン事件(1993年)をモチーフにしたのだろう。

そういえばセガールの『沈黙の陰謀』(1998年)もブランチ・ダビディアン事件を下敷きにしていたが、あの事件をモチーフにした映画は総じて出来が悪いという特徴がある。

本作の宗教カルトを率いるのは『ディアハンター』(1976年)のジョン・サヴェージで、この教祖様は政界進出を狙っている。そこで全国にある教団支部にテロ活動をさせて社会不安を醸成し、政界進出の足掛かりを作ろうとしているのである。

随分と回りくどい作戦だなぁと思うのだが、本作の数年後に日本のオウム真理教が毒ガステロ事件を起こしたし、それ以前には教祖が選挙に出馬していたという経緯もあって、そのストーリーには先見性が認められる。

そして教祖様はヒトラーを崇拝しており、スピリチュアルだの骨董品収集だのに熱中していたヒトラーの真似をして、ベルリンから運命の槍を盗み出す。

日本ではロンギヌスの槍と呼ぶ方が通りがいいが、ゴルゴダの丘でイエスの脇腹を刺したとされる槍であり、これを持つことで世紀末覇者(©ラオウ)を名乗ろうとしているわけだ。

ただし世界遺産級の骨董品を盗み出したことで「あいつらはやりよる奴らだ」と公安から目を付けられ、対策チームが結成されるに至る。

作戦全体の指揮者は『スキャナーズ』(1981年)や『トータル・リコール』(1990年)でお馴染みのマイケル・アイアンサイド。個性派監督から愛される御仁だけあって相変わらず良い面構えをしているが、本作での登場場面は少ない。拘束時間数日の簡単なお仕事だったのだろう。

そんなアイアンサイドに代わって実質的な現場管理者を務めるのがジェニファー・ルービン。物凄い美人なんだけど、なぜだか売れなかった女優さんである。

当初、彼女は後方からの指揮にあたっていたが、隊員1名が死亡した後には現場に出るようになる。いわゆるプレイングマネージャーというやつだが、まったく意味のない場面でおっぱい見せてくれるなど、アイアンサイド不在を補って余りあるほどの頑張りを見せてくれて、とても満足できた。

そして残りの隊員たちは軍隊や警察などのはみ出し者が中心。

有能だが個性が強すぎるはぐれ者たちを組み合わせるという『特攻大作戦』(1967年)方式であり、本作は60年代コマンドものの趣も持っている。

なんだけど、アイアンサイドはチームの顔合わせも早々に任務に送り込むという無茶な作戦を立てて、案の定、隊員1名が死亡するという失敗に終わる。

そこでようやくチームの訓練を開始&作戦の方針を武力制圧から内部への潜入に切り替えることにするんだけど、現場部隊はともかくハッカーまでを同じ訓練でしごくことの意味が分からなかったし、潜入作戦に切り替えるのであれば、訓練内容が違うんじゃないかと思ったりもする。 

そんなわけでお話の方はてんで筋が通っていないのだが、アクションはなかなかイケる。

当時、ハリウッドでも流行りはじめていたジョン・ウースタイルのアクロバティックなアクションで、要所要所で二丁拳銃やスローモーションが挿入されるんだけど、模倣のレベルはかなり高くて楽しませてくれる。

マイケル・ケネディ監督はよく存じ上げない方なのだが、これだけのものが撮れることには驚いた。

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