【凡作】ディープ・ブルー(1999年)_面白そうで面白くない(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(1999年 アメリカ)
破壊王レニー・ハーリンによるモンスターパニックであり、遺伝子操作された狂暴サメの脅威と沈みゆく海底ラボからの脱出という素敵な組み合わせの作品ではあるのですが、これがどうにも盛り上がりに欠け、ハラハラもさせられませんでした。

あらすじ

海洋研究所アクアティカでは、アルツハイマー病を治すための新薬研究がなされていた。その内容はサメの脳を治療薬として活用するというものであり、そのために脳を大きくしたサメが飼育されていた。

ただし実験に出資しているキマイラ製薬は、2億ドルを投じても一向に成果の上がらないこの研究の打ち切りを決定。研究の中心人物であるスーザン博士(サフラン・バロウズ)にその旨を伝えると、週明けまでに研究成果を上げるので、最終実験だけをやらせてほしいと懇願される。

キマイラ製薬社長のラッセル(サミュエル・L・ジャクソン)は研究継続か否かを判断するために、スーザン博士のチャレンジを見届けることにする。

スタッフ・キャスト

監督は破壊王レニー・ハーリン

1959年フィンランド出身。名門ヘルシンキ大学在学中にテレビディレクターとなり、24歳で映画監督デビューという早熟ぶりを披露しました。

チャック・ノリスの息子マイク・ノリス主演の『死線からの脱出』(1986年)ではフィンランド映画史上最高額の製作費をかけたのですが、あまりに反共的な内容に物言いがついて上映禁止となりました。

その後ハリウッドに渡り、『プリズン』(1987年)と『エルム街の悪夢4』(1988年)という二本のホラー映画を監督。

その後は『エイリアン3』(1992年)の企画に1年ほど従事したものの脚本がまとまらずに降板し、『ダイ・ハード2』(1990年)『クリフハンガー』(1993年)の大ヒットでアクション映画の名手となりましたが、『カットスロート・アイランド』(1995年)『ロング・キス・グッドナイト』(1996年)の二本を大コケさせたことから

2016年より中国映画界に活動の場を移し、ジャッキー・チェン主演の『スキップ・トレース』(2016年)などを監督しています。

『ロング・キス・グッドナイト』のサミュエル・L・ジャクソン出演

1948年テネシー州出身。長い下積みの末、『星の王子 ニューヨークへ行く』(1988年)、『パトリオット・ゲーム』(1992年)、『ジュラシック・パーク』(1993年)などへの出演でちょいちょい見かける顔になり、『パルプ・フィクション』(1994年)で大ブレイク。

『ロング・キス・グッドナイト』(1996年)に続くレニー・ハーリン監督作への出演となります。『ロング・キス~』では氷が張る真冬の湖にダイブさせられるなど散々な目に遭わされたはずなのですが、懲りずにレニー・ハーリンとの仕事となります。

なお、本作ではLL・クール・Jが演じたコック役でオファーを受けていたのですが、別の役が良いということで彼が演じた実業家ラッセルというキャラクターが新規に作られました。

作品解説

プロダクション

本作は、脚本家のダンカン・ケネディが自宅近くのビーチで目撃したサメの襲撃事件にインスピレーションを得たものでした。

ケネディはスティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1975年)と重複しないようにという方針を立てて脚本を執筆し、その結果、頭が良くこちらの思考の先回りができるサメという設定を思いつきました。

『ジョーズ’87復讐篇』(1987年)のサメはそんな設定だったような気がしますが、ヒットしなかったのでケネディ的には無視してもいい先例だったのでしょう。

1994年にワーナーが脚本を購入したのですが、2年間は製作が進みませんでした。

その後レニー・ハーリンが監督に決定。ハーリンは『カットスロート・アイランド』(1995年)で海上撮影の恐ろしさを知っていたことからコントロールの利くスタジオセットでの撮影を希望し、『タイタニック』(1997年)のために建設されたフォックスのバハスタジオで撮影することにしました。

大規模なセットやVFXを要求される内容の割には少なめの予算しか与えられなかったようであり、従前はふんだんに金をかけまくる撮影を行ってきたハーリンも節約に努め、6000万ドルの製作費に収めました。

LL・クール・Jの肩に乗っているオウムは本物を使うのとパペットではどっちが安いのかを議論したり、序盤に登場する飛行艇はハリソン・フォード主演作『6デイズ/7ナイツ』(1998年)で使用されたお古を使ったりと、涙ぐましいコスト削減努力がなされました。

同年にゲイル・アン・ハードが製作した『ヴァイラス』(1999年)の製作費が7500万ドルだったことを考えると、ハーリンは随分と頑張ってコスト削減をしたことが分かります。

興行的には微妙だった

本作は1999年7月26日に全米公開されたのですが、とにかく競合に恵まれず、前週には客層モロ被りのヤン・デ・ボン監督『ホーンティング』(1999年)が公開されたばかりだったし、同週には社会現象を巻き起こした『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)が拡大公開され、メインの客層を相当食われました。その結果、初登場3位と低迷。

そして翌週には特大ヒット作『シックス・センス』(1999年)が公開され、完全に埋もれました。公開5週目にしてトップ10圏外へとフェードアウトし、全米トータルグロスは7364万ドル。

国際マーケットではやや取り戻したものの、それでも全世界トータルグロスは1億6464万ドルであり、6000万ドルという製作費を考えると物足りない結果に終わりました。

登場人物

  • スーザン(サフラン・バロウズ):キマイラ製薬の研究員であり、アルツハイマー治療薬を開発している。サメの脳細胞を原料として使うために海洋研究所アクアティカで脳を大きくしたサメを飼育しているが、成果が出ないことから会社より研究打ち切りを宣告されており、早く成果を出そうと焦っている。
  • カーター(トーマス・ジェーン):アクアティカでサメの監視員をしている。密輸での逮捕歴があって現在も仮釈放中の身であるため波風が立つことを恐れており、功を焦るスーザンからの無理な要求を飲まざるを得なくなる。
  • ラッセル(サミュエル・L・ジャクソン):大富豪でキマイラ製薬の社長。スーザンに対して研究予算打ち切りを宣告する一方で、彼女に最後のチャンスを与える度量も持っており、最後の実験に際しては自らアクアティカを訪問して実験に立ち会うことにする。冒険家としての一面もあり、サバイバルに対して一格言を持っている。
  • プリーチャー(LL・クール・J):アクアティカの料理人。口の悪いオウムを飼っており、常に肩に乗せている。敬虔なクリスチャンでピンチに際しては十字架のペンダントを握りしめ、また聖書の一節を引用してぼやいたりもする。
  • ジム(ステラン・スカルスガルド):アクアティカの研究員。天才的な頭脳を持つ一方で、風に向けて放尿するなど奇人のような一面も持つ。同じく研究員のジャンと付き合っている。
  • ジャン(ジャクリーン・マッケンジー):アクアティカの海洋生物学者。癖の強いアクアティカ所員の中ではもっとも一般人に近く、功を焦るあまり無理な実験をしたスーザンを非難した。
  • スコッグス(マイケル・ラパポート):アクアティカのスタッフだが、何を担当しているのか劇中定かではない。サメの脳細胞を抽出する実験ではコンピューターを操っていたことから、エンジニアか何かだと思われる。すぐにパニックに陥り、ストレスの余り批判や不満をすぐに口にする小心者として描かれる。
  • ブレンダ(アイダ・タトゥーロ):アクアティカで本土との通信係を担当している。太った体形の中年女性なのでサバイバル能力がなさそうだなと思っていたら、案の定、すぐに死んだ。演じるアイダ・タトゥーロはジョン・タトゥーロの従姉妹。

感想

脱出劇×モンスターパニック

敵は遺伝子操作により知能を高められたサメであり、舞台は沈みゆく海洋研究所。

クルー達はサメの追撃を交わしながら海洋研究所を脱出するという、あらすじだけ聞くと何とも熱いものを感じる海洋アクションであり、しかも監督は90年代にアクション監督として名を馳せたレニー・ハーリン。

公開時には、見る前から傑作であることを確信した映画だったのですが、実際にはイマイチ盛り上がりに欠ける内容でガッカリした記憶があります。

今回約20年ぶりに再見したのですが、初見時と同じく面白くないという感想を持ちました。

サメの暴れ方が中途半端

では、なぜこの映画が面白くないのかと考えると、主人公ともいえるサメの暴れ方が中途半端だったことが考えられます。

『ジョーズ』(1975年)と言い『海底47メートル』(2017年)と言い、サメは大海原のハンターであり、流線形のボディで素早く迫って来ることこそが、その恐怖の源泉でした。人間が自由に動けない海という極限の環境で、こいつに狙われるとひとたまりもないというわけです。

その点、本作の舞台は海洋研究所内部であり、浸水している建造物の廊下や吹き抜けをサメが泳いでやってくるので、そのスピードや巨体は生かされていません。むしろ狭い場所を無理やり進んでいるようで、サメさん達頑張ってるなぁという気持ちすら湧いてきたほどです。

おじゃましまんにゃわー

加えて、遺伝子操作を加えられたサメという設定も中途半端でした。

野生動物とモンスターのちょうど中間的な位置づけにあり、野生vs人間という対比構造が置かれているわけでもなく、かといって想像力の限りを尽くしたモンスターが出てくるわけでもなく、何とも中途半端なのです。

『ザ・グリード』(1998年)や『ヴァイラス』(1999年)といった、本当に突拍子もないモンスターが暴れる海洋アクションが連続していた時期だっただけに、尚のこと本作のサメは地味に感じられました。

死ぬ順番に意外性がない ※ネタバレあり

あとは人間キャラの死ぬ順番がほぼ予想通りだった点も、ハラハラ感を減衰させています。

レニー・ハーリン監督は本作のキャスティングにあたってリドリー・スコット監督の『エイリアン』(1979年)を参考にしたといいます。

同作では、知名度のあったトム・スケリットを船長役にキャスティングし、観客には彼がヒーローポジションにいるものだと思わせておいて、中盤で死なせるというサプライズを生み出しました。一方で他のキャラクターには観客にさほど顔と名前を知られていなかった俳優を使うことで、次の瞬間に誰が襲われるのか分からないサスペンスに繋げていました。

本作においては大スター サミュエル・L・ジャクソンと製作時点では顔の売れていなかった俳優達という固め方がなされているのですが、サミュエルが死ぬ場面は予告で散々使われたので、上映時点ではもはやサプライズでも何でもなくなっていました。これは作品そのものの落ち度と言うよりも広告宣伝のミスと言えるのですが、ともかく観客はこの場面で驚くことができないということになってしまいました。

その他のキャラクターに関しては、美男美女のスーザン(サフラン・バロウズ)とカーター(トーマス・ジェーン)はラスト付近まで生き残っているのだろう。他方で影の薄いジャン(ジャクリーン・マッケンジー)とスコッグス(マイケル・ラパポート)は早めに死ぬのだろうと思ってみていると、本当にその通りになるという芸のなさでした。

意外性を狙いながらも、これほどまでに観客の推測通りになるシナリオは一体どうなのと思ってしまいます。一番役に立たなさそうなスコッグスを終盤まで生かしておくとか、頼りになりそうなカーターを早い段階で殺してしまうとか、観客に対するサプライズの与え方はいろいろあったでしょうに。

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