【凡作】ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク_ほとんど人災(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(1997年 アメリカ)
危機の内容はほとんど人災と言えるほどで、感情移入できるキャラクターが皆無だったので人間側のドラマは見ていてしんどかったのですが、恐竜がいっぱい見られるので飽きることはありません。割り切ってみるべき映画。

作品解説

小説とはほぼ無関係

一応、本作のクレジット上は「マイケル・クライトン原作」とされているのですが、小説『ロスト・ワールド -ジュラシック・パーク2-』(1995年)の執筆と本作の製作はほぼ同時並行で進んでおり、設定やキャラクターの共有こそあれど、内容は別物となっています。

小説版は恐竜の進化論や、システムの複雑化によって恐竜は滅んでいったという科学的考察を交えた内容だったのですが、当映画版にそういった難しい部分はまったくありません。

史上最高のオープニング記録

1997年5月23日に全米公開。最初の週末だけで9016万ドルもの興行成績を上げ、前年の『ミッション:インポッシブル』(1996年)が持っていたオープニング記録を塗り替えました。

ただし第一作ほどの持続力はなく、2週目にして売上高は半減し、3週目にして『コン・エアー』(1997年)に敗れて首位陥落。

全米トータルグロスは2億2908万ドルで年間第2位(1位は『メン・イン・ブラック』)と金額的には十分だったのですが、「史上最も待ち望まれた続編」と言われた割に記録は伸びなかったというところです。

批評的には苦戦した

内容の稚拙さから酷評を受け、ゴールデンラズベリー賞で「最低続編賞」「最低脚本賞」「最低人命軽視と公共物破壊しまくり作品賞」の3部門にノミネートされました。

感想

錯綜した基本設定

前作から4年後。

運営会社インジェンは関係者に多額の口止め料を支払ってジュラシック・パークでの事故を隠ぺいしていたのですが、それに乗らなかったマルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)はメディアを通じてパークで起こったことを訴えようとし、逆に社会から嘘つきのレッテルを貼られていました。

インジェン創設者ジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)はジュラシック・パークでの事故が原因で社長の座を甥のピーター・ルドロー(アーリス・ハワード)に奪われ、現在は隠居生活中。

ルドローは会社を立て直すために「ジュラシック・パーク:サンディエゴ」の建設を決定し、現在は手つかずで野良恐竜達の島になっている育成地「サイトB」に恐竜捕獲隊を送り込もうとしています。

一方ハモンドは前作での経験から恐竜テーマパークの建設に反対であり、メディアを通じて実情を世間に訴えて計画を中止に追い込むことを画策しています。そのためにサイトBへ恐竜調査隊を送り込み、島の実態を撮影して来させようとしています。

インジェン社はジュラシック・パークを隠ぺいしたかと思ったら、再び商売の道具に使おうとしたり、実情を世間に訴えようとしたりと、何とも錯綜した基本設定で開始早々不安になってきました。

キャラクター造形が酷い

ハモンドが結成した恐竜調査隊は、古生物学者のサラ(ジュリアン・ムーア)、エコテロリストのニック(ヴィンス・ヴォーン)、装備担当のエディ(リチャード・シフ)で構成されています。

当初、マルコムは調査隊への参加を拒否していたのですが。古生物学者サラが恋人であり、かつ、すでに単独でサイトBに上陸済だったことから、サラを連れ戻す目的で調査隊に加わります。

さらにマルコムの娘ケリー(ヴァネッサ・リー・チェスター)が黙って調査隊の車に潜んでおり、サイトB到着後には調査隊と行動を共にすることになります。

彼らが今回の主要登場人物なんですが、ことごとく酷い行動をとるので見ていられませんでした。

サラはケガをしたティラノサウルスの子供を治療目的とは言えトレーラーに連れ帰り、怒った親からの襲撃を受けるわ、子供のティラノサウルスの血が付いた上着をそのままにしておいたことから二度目の襲撃の原因にもなるわと、自ら危険を呼び込むようなことばかりをするのでイライラさせられます。

当初は「恐竜は細かい変化にも影響されるから草木を踏み荒らすな、ゴミも捨てるな」とうるさいことを言っていたはずなんですが、自分が一番なっていないという。

ニックはもっとひどくて、檻の鍵を壊して意図的に恐竜を暴れさせ、キャンプを壊滅状態に追い込みます。今回出た死人のほとんどはこいつのせいと言っても過言ではありません。

また、捕獲隊のリーダーであるローランド(ピート・ポスルスウェイト)の猟銃からこっそりと弾を抜き取るという卑劣なことまでを行います。急場で弾が出なければローランドは絶体絶命の危機に陥るわけで、さすがにこれは抗議目的を越えた暴挙だと言えます。

そして彼ら恐竜調査隊の何が酷いって、これだけ捕獲隊への敵意をむき出しにし、その妨害工作ばかりを行いながらも、ティラノサウルスに襲われて以降は捕獲隊に助けてもらうということです。

スピルバーグがなぜここまで問題だらけのキャラクターを作り上げたのか、その意図はよくわかりません。もしも子供じみた主張ばかりをする現実のエコ・テロリストを揶揄する目的で意図的にこうしたのであれば、その高度な皮肉に感嘆せざるを得ないのですが。

恐竜はいっぱい見られる

そんなわけで人間側のドラマにはストレスしか感じないのですが、恐竜はいっぱい見られるのである程度はそこで取り戻しています。

恐竜による人間狩りだった前作からは一転し、車両や武器を使いこなす捕獲隊が恐竜を追いかける様は素晴らしいスケール感とスピード感で目を楽しませてくれるし、ティラノサウルスやヴェロキラプトルら肉食恐竜達の暴れっぷりには磨きがかかっています。

そしてクライマックスのサンディエゴ上陸はやはり燃えますね。巨大生物は大都市を蹂躙してこそナンボです。あの巨大なティラノサウルスがどうやって操舵室のクルーまでを皆殺しにしたのかはよくわかりませんが、そんな細けぇことはこの際気にしないってことで。

実はこの見せ場、スピルバーグはほぼ確定していた第3弾のために取っておくつもりだったのですが、最後にパンチが欲しいということで本作でクライマックスになったのでした。

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