ランボー3/怒りのアフガン【良作】見ごたえあるアクション大作(ネタバレなし・感想・解説)

(1988年 アメリカ)
本作の置かれた政治的微妙さはこの際置いておくとして、アクション映画としては非常に充実した内容となっています。世間的にはシリーズ中もっとも評価の低い作品らしいのですが、十分面白いアクション映画だと思いますよ。

© Tri-Star Pictures, Inc.,

あらすじ

タイの寺院で働くランボーの前に元上官のトラウトマン大佐が現れ、ソ連軍の侵略と戦うアフガニスタンの戦士に武器を届けるルート開拓の手伝いを依頼される。ランボーは断ったが、後にトラウトマンがソ連軍に拘束されたと知るや、ランボーはすぐにアフガニスタンへと向かった。

スタッフ

監督のピーター・マクドナルドって何者?

1939年ロンドン生まれ。1950年代より撮影技師として映画界で働くようになり、1979年代末から第二班監督も務めるようになって『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1980年)や『エクスカリバー』(1981年)などに参加しました。前作『ランボー/怒りの脱出』(1985年)にもノークレジットながら参加しています。

本作『ランボー3/怒りのアフガン』が監督デビュー作となるのですが、本作後には再び第二班監督に戻り、『バットマン』(1989年)、『デッドフォール』(1989年)、『ハリー・ポッター』シリーズ、『ボーン・アルティメイタム』(2007年)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)などに参加しています。

これだけ息の長いキャリアを誇っているということは、現場での仕事がめちゃくちゃによくできるということなのだろうと思います。

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撮影開始時点での本作の監督は『ハイランダー 悪魔の戦士』(1986年)のラッセル・マルケイでしたが、スタローンとの創作面での方向性の不一致により撮影開始後2週間で降板。その後、荒れた現場の立て直しに呼ばれたのが、現場掌握力の高いピーター・マクドナルドでした。

脚本はスタローン、他1名

前々作、前作に引き続き、スタローンが脚本を執筆しているのですが、もう一名シェルドン・レティックなる人物が脚本家としてクレジットされています。

レティックは1951年NY生まれ。海兵隊員としてベトナム戦争に従軍した後は、カメラマンになることを目指していました。しかし彼が脚光を浴びたのはベトナムでの経験を舞台化した”Tracers”の共同作者としてであり、本作への起用もこの経歴によるものと思われます。

本作後にはジャン=クロード・ヴァン・ダムの初期作品に頻繁に関わるようになり、『ブラッドスポーツ』(1988年)、『ライオンハート』(1990年)、『ダブル・インパクト』(1990年)の脚本を執筆しています。1998年にはヴァン・ダムと共同で『レジョネア 戦場の狼たち』の脚本を執筆し、本作のピーター・マクドナルドが監督を務め、また『ランボー/怒りの脱出』(1985年)のスティーヴン・バーコフが出演しています。

登場人物

  • ジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン):前作のラストでトラウトマンの元を去った後、タイの寺院の修復を手伝いつつ、必要な金は賭け試合への出場で稼いでいた。穏やかな生活ですっかり憑き物が落ちたようになっており、初対面のモーサから「実戦には参加したことがないね」と言われるほどだった。トラウトマンよりアフガニスタンへの武器供給路開拓任務への参加を要請されたものの、現在の平穏を守りたくて一旦は辞退。しかし、後にトラウトマンがソ連軍に捕らえられると、単身アフガニスタンへと乗り込んだ。
  • サミュエル・トラウトマン大佐(リチャード・クレンナ):ソ連軍の侵攻に抵抗するアフガニスタンの民兵達に、ヘリを撃ち落とすためのスティンガーミサイルを供給するルート開拓をおこなっていた。事前にランボーに参加を打診したが断られたため、単身アフガニスタンへ乗り込んだところ、ソ連軍に拘束された。大佐という立派な肩書の割には現場仕事が多いし、ランボー以外に部下がいる様子がない。
  • ザイセン大佐(マーク・ド・ジョング) :ソ連軍大佐で、トラウトマンがターゲットとした地域の司令官。残忍な性格と軍人としての抜け目のなさで悪名が高い。大佐という肩書にも関わらず自らヘリを操縦して前線に出てくるほどの現場主義者であり、敵とするには厄介だが、自軍からはめちゃくちゃに信頼されるタイプだと思われる。
  • モーサ(サッソン・ガーベイ):ムジャヒディンの一人で、ランボーの現地協力者。道案内役に徹しており、戦闘ではほぼ役に立たず、かと言って足を引っ張ることもない。
  • マスード(スピロス・フォーカス):ムジャヒディンのリーダー。「あなたの気持ちも分かるが、我々もいろいろ大変でねぇ」と言って、ランボーの提案するトラウトマン奪還作戦への参加を拒否した。実在した反ソ連ゲリラの司令官・アフマド・シャー・マスードがモチーフだと思われる。
    アフマド・シャー・マスード(Wikipedia)
  • ウーリ(シャビー・ベン・アロヤ):ソ連軍からの脱走兵で、基地の構造をランボーに教える。

感想

当時としては史上最高額の作品

前作『ランボー/怒りの脱出』も4400万ドルという尋常ではない製作費がかけられていましたが、同作の世界的な大ヒットによりその続編である本作の製作費はさらにオン。6300万ドルという、当時としては史上最高額の製作費が投入されました。

これがいかに凄い金額かというと、同年のアクション大作『ダイ・ハード』(1988年)の製作費が2800万ドル、翌年の大ヒット作『バットマン』(1989年)の製作費が3500万ドルであり、ちょうど両作を足したのと同じくらいの金額を本作一本で使い切っているのです。

金曜ロードショーでの初放送時に水野晴郎さんも熱く説明されていましたが、本作に登場するソ連軍のヘリや戦車はホンモノ。中東戦争でイスラエル軍が鹵獲した実機を撮影に使用するという、映画の撮影を越えたことをやっています。

この頃のカロルコは異常で、同年にシュワルツェネッガーが主演した『レッドブル』(1988年)ではハリウッド映画として初めて赤の広場での撮影を許可されており、映画の撮影にあたって政府レベルの交渉をしていました。

同年に製作した作品ながら、一方ではソ連政府に国内での撮影を許可してもらい、もう一方ではソ連と敵対している国から鹵獲した実機の使用を認められるなど、マリオ・カサールは一体何枚の舌を持っていたんだという感じです。

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政治的には微妙な作品

前々作・前作とベトナム戦争のトラウマをテーマにしてきたシリーズですが、第三弾になってついにベトナムから離れ、ソ連のアフガン侵攻をテーマにしました。

内容は、ソ連の侵攻に対して旧式の武装で対抗しているムジャヒディンにアメリカが非公式に武器を届けたくてトラウトマンがそのルート開拓をするという、現在の価値観で見ると結構微妙なものとなっています。

その当時のスタローンに知る由はないにせよ、敵の敵は味方という理屈で世界中に武器を配り、兵士を訓練してきた結果が2001年の同時多発テロ事件に繋がるのですから。

また本作公開の3か月前にソ連はアフガン撤退を表明し、作品に込めた主張がほぼ無に帰すというバツの悪いことにもなりました。

本来は喜ぶべきニュースではあるのですが、監督のピーター・マクドナルドは作品の興行成績への悪影響を懸念したと言います。ソ連軍がいかに悪い連中かを告発する内容の映画を、ソ連の撤退表明後にやったって説得力ゼロですからね。

マクドナルドの懸念は的中し、本作の全米興行成績は5300万ドルと、1億5000万ドル以上稼いだ前作の1/3程度にまで落ち込みました。

アクション大作としては合格すぎる出来

政治的メッセージがアレなのは仕方ないとして、アクション映画としては非常にハイレベルな作品となっています。

ただダラダラと爆破を見せられるだけでスリルや興奮とは無縁だった前作からは一転して、見せ場にきちんと流れがあり、見事なアクション大作として仕上がっているのです。

例えば前半でランボーが敵基地に潜入する場面。

当初は隠密行動で敵に見つかってはならないという緊張感が画面を支配しているのですが、敵兵士の放った銃声をきっかけに一大戦闘が開始され、そこからはバカバカしいほどに爆破が連続し、目を楽しませてくれます。

直前までの隠密行動とのコントラストが実に見事であり、銃声をきっかけにメインテーマが高鳴るという音楽による援護も良くて、アクション映画として当然の演出が教科書的ながらも実にうまくハマっていく感じが見ていて気持ちよかったです。

その後は最終決戦まで間断なく見せ場が連続し、飽きる暇がありません。

加えて、かけた金がきっちりと画面に反映されており、大規模な爆破は迫力満点だし、実機を使用したヘリチェイスにはその他のアクション映画にはない説得力がありました。

クライマックスのヘリvs戦車という前代未聞のチキンレースも、その奇抜なアイデアを見事に形にできていました。

≪ランボーシリーズ≫
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