【凡作】サマリタン_スタ版ラスト・アクション・ヒーロー(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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(2022年 アメリカ)
設定やドラマが不安定で面白い映画ではなかったが、御年70歳を過ぎても立派なガタイを維持し、アクションスターとしての風格も凄みもあるスタさんは最高だった。クライマックスの大暴れはぜひとも見ていただきたい。

感想

スタ版ラスト・アクション・ヒーロー

善のヒーロー サマリタンと悪のヒーロー ネメシスが死闘を繰り広げた歴史を持つグラニット・シティで、サマリタンのファンである少年サムが、同じ集合住宅に住むやたらガタイのいい老人ジョー(シルベスター・スタローン)こそ、かつてのサマリタンではないかと思うという話。

昨今ブームのアメコミを題材にした作品であるが、私などはアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年)を思い出した。

現実とフィクションが混在した世界において、少年とヒーローが出会い、困難を乗り切るという概要は、まさに『ラスト・アクション・ヒーロー』。

また『ラスト~』では少年が母子家庭にいて、彼の母親は善良ではあるが子供を放置しがちという設定が置かれていたり、ファンタジーとは対極的な現実の貧困問題が描かれたりしていたが、それらの特徴は本作においても引き継がれている。

そんなわけで私はスタローン版『ラスト・アクション・ヒーロー』として本作を鑑賞したのだが、あんまり面白くない点も『ラスト~』と共通していたのは残念だった。

エンドロールを除くと90分程度というコンパクトな作品ながら猛烈な中弛みを感じたので、やはり出来はよろしくないのだろう。

まず問題なのが、少年とスタローンとの間での化学反応が起こっていないということ。

この手の話においては少年の成長譚を物語の軸とすることが常套手段であり、戦う勇気や厳しい現実を受け入れる力を獲得するまでの過程において、老人がメンター的な存在として関与するという構造にすれば話にも一本筋が通る。

しかし本作にはそのような明確な方向付けがないので、二人のドラマがいつまで経っても発展していかない。

スタさんは「とにかく戦うな。どうしても追い込まれても戦わず逃げろ」という主張をする。その教えが少年に影響を与え、良い結末へと繋がっていくのかなと思いきや、結局は戦って解決することになるので教えが全然生きてこない。

そもそもこの少年、ヒーローにあこがれるという幼さの割にガチめの犯罪組織に関与するし、割と終盤になるまでヒーローと犯罪組織のどちらとも付き合うので、一体どういう行動規範を持つ人間なんだか理解に苦しんだ。

子供は子供なりのスジを持っているはずなのだが、彼からはそうしたものが見えてこないので、結局どういう奴なんだか分からなくなる。

犯罪組織の設定がいい加減すぎる

こうしたチグハグ感は少年のみに留まらない。

犯罪組織の設定もかなりいい加減で、登場時点ではケチな窃盗で小銭を稼ぐ小規模集団のようだった。13歳の少年を構成員として熱心に勧誘するくらいなので、よほど人材に困っていたのだろう。

それが中盤では警察の証拠保管庫を襲撃したり、発電所の破壊を計画したりと、かなりスケールの大きなことをできる組織に変容し、終盤では数十人もの武装した兵隊を繰り出してくる。

その時々で組織のポテンシャルが変わるのでは、悪役として有効に機能しない。

そしてリーダーのサイラスという男は悪のヒーロー ネメシスにあこがれており、サマリタンとの戦いで死亡したとされるネメシスの意思を勝手に推察し、引き継ごうとしている。

存命中のネメシスは大企業や金持ちばかりを狙っていたが、貧困層出身のサイラスにとっては社会の不均衡を正すヒーローとして映っていた。

そしてサイラスは志半ばで倒れたネメシスの思いを自分が完遂しようと、タイラー・ダーデンのようなテロ計画を立てるのだ。

サイラスは警察の証拠保管庫からネメシスの仮面とハンマーを盗み出す。

これによってネメシスの力を手に入れようとしているのだろうが、そもそもネメシスは生まれながらの超人という設定だったので、その武装を入手すればネメシスと同等の力を得られるというものでもない。

にもかかわらず、これを身につけて超人的な能力を持つスタさんに挑もうとしてボコボコにされるのだから、サイラスは阿呆である。

あと仮面をつけたサイラスは大衆を扇動して街に暴動を引き起こすのだが、暴徒が現れるのは夜だけで、昼間の場面になると街は元通りになり、そして次の夜になるとまた暴動が始まる。

日が昇ってお勤めが始まる時間帯になると勝手に収束するという物分かりの良すぎる暴動も、一体どうなのと思ったりで。

スタさんの討ち入りには燃えた ※ネタバレあり

そんなわけでさほど出来の良い映画ではなかったのだが、誘拐された少年の救出のためにスタさんが犯罪組織を襲撃する場面には燃えた。

スタさんがいよいよ本気出すと決めた瞬間の高揚感や、爆発物持参のうえトラックで乗り付けるというやり過ぎ感など、堪らないものがあった。

銃を持った数十人の敵を無双し、ラスボス サイラスに対しても一方的な試合運びで勝利を収める。その強さが最高だったし、御年70歳を過ぎても依然として強さに説得力があるスタさんという存在自体にも興奮してしまった。

スタさんこそネメシスだというどんでんにはぶっちゃけ察しがついていたが、それでもスタさんが正体を名乗る場面はかっこよかった。これぞ千両役者である。

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