(1988年 アメリカ)
ついにハリーが人気者になっちゃったシリーズ最終作。明るめの作風、派手なドンパチ、カンフー使いの相棒、多重人格、メディア批判と80年代風のアップデートを図ろうとして、豪快に失敗している。救いはコンパクトな上映時間で、サクっと見られるので酷い駄作にはなっていない。

突貫工事で製作された第5弾
そもそもシリーズは『3』で完結していたが、もうひと稼ぎしたいワーナーと、別の企画を通したいイーストウッドの間での合意形成がなされた時に、追加の続編が製作される。
長年にわたり、イーストウッドはジャズサックス奏者チャーリー・パーカーの伝記映画『バード』(1988年)の企画を温めてきた。念願の企画の製作費をワーナーに出させる代わりに、本作への出演を承諾したのだった。
問題だったのはスケジュールで、1988年2月に撮影開始、同年の7月には全米公開というとんでもないことになっていた。ワーナーはたまにこういう突貫映画を作る(『逃亡者』(1993年)、『リーサル・ウェポン4』(1998年)など)。
これまでは大物脚本家が関与してきたシリーズだが(第2作ジョン・ミリアス&マイケル・チミノ、第3作スターリング・シリファント)、本作では脚本に拘る余裕もなかったようで、『ファイヤーフォックス』(1982年)で科学技術コンサルタントを務めたダーク・ピアソンとサンディ・ジョー、そしてスティーヴ・シャロンによる脚本”The Dead Pool”が使用された。
そしてこのスケジュールに対応するには早撮りの監督が必要だったので、イーストウッドは長年の付き合いであるバディ・ヴァン・ホーンに監督を任せた(自身は『バード』で忙しかった)。
バディ・ヴァン・ホーンは長年イーストウッドのスタントダブルを務めてきた人物で、その後スタントコーディネーター、第二班監督と着実にステップアップし、イーストウッド主演の『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』(1980年)で監督デビューした人物。
こうして完成した作品なので案の定、評価は低く、興行成績は3800万ドルでシリーズ最低記録となった。
80年代アップデートの失敗
むか~し水曜ロードショー(TBSの方)で見たような気がするけど、どんな話だったかすら覚えていない。
この度の午後ローにおけるシリーズ一挙放送で久しぶりに見たけど、覚えていなくて当然と言えるほどつまらんかった。
ただしあらためて見ての感動もあって、殺人鬼疑惑をかけられる映画監督役が我らがリーアム兄さんだったり、登場後数分で殺されるロックシンガーがジム・キャリーだったりと、キャスティングにはなかなか先見の明があった。
若い頃のリーアム兄さんはやばいくらいかっこよかったし。
けど、それを除くと凡作。短い上映時間で飽きる前に終わるから駄作というほど酷くはないけど、いろいろとうまくいっていない。
最大の問題は主人公ハリー・キャラハンがゴリゴリの70年代アンチヒーローだということ。彼は80年代の空気にはまったく馴染んでいない。
そこで彼の”ダーティ”設定は完全に取り払われた。今やハリーはマスコミに密着取材を申し込まれるほどのスター刑事で、サンフランシスコ市警としても警察のイメージアップにハリーを使いたがっている。
もはやダーティハリーである必要がないほどの大改変。だったらエディ・マーフィーやブルース・ウィリス主演の別物として作ればよかったんじゃないか。
内容はと言うと、ロックシンガー(ジム・キャリーが怪演)の死をきっかけに、次に死ぬのは誰かを当てるデッドプールという賭博の存在が判明。リストに書かれた人物が次々と謎の死を遂げていく中で、ハリーは連続殺人犯の線を疑うというもの。
なお本作のタイトル”The Dead Pool”は、マーベルのキャラクター デッドプールの名前の由来になったらしい。
シリアルキラーというテーマは『1』を踏襲したものだが、そこに多重人格的な要素を加えることで80年代風のアップデートが図られている。『羊たちの沈黙』(1990年)に3年先駆けた先見性は評価に値するが、実のところ、犯人捜しにはさほどスポットが当てられていない。
時を同じくして、ハリーはマフィアの大親分を逮捕したことで組織からの報復を受けている。見せ場の配分はこのサブプロット側に大きく偏っているので、相対的にデッドプールというメインプロットが埋もれてしまっているのだ。
その他、ハリーの新相棒がカンフー使いだったりと80年代風のアップデートがそこかしこに見られるのだが、調和がとれていない闇鍋状態であり、それぞれの要素は作品の面白みに貢献していかない。
また本作のハリーはモテる。
カメラを壊したことの苦情を言いに来た女性リポーターより、市への損害賠償請求の取り下げの条件として一対一の食事を申し込まれるハリー。
これを機に二人は親密になるのだが、相手役のパトリシア・クラークソンは撮影当時29歳で、58歳のイーストウッドとは親子ほども年が離れている。このカップルを見ているのもしんどかったかな。
見せ場のレベルも同時期に製作された『リーサル・ウェポン』(1987年)や『ダイ・ハード』(1988年)と比較するとイマイチだったし、総じて物足りない出来だった。
なお本作は『ダイ・ハード』(1988年)と同じ週に全米公開されたらしい。新旧アクションヒーローの対比によって、当時の観客はダーティハリーのオワコン化を認識したのではないだろうか。
≪ダーティハリー シリーズ≫
【良作】ダーティハリー_素晴らしきアンチヒーロー
【凡作】ダーティハリー2_白バイ軍団vsハリー
【凡作】ダーティハリー3_極左過激派vsハリー
【凡作】ダーティハリー4_ハリーは脇役
【凡作】ダーティハリー5_ダーティじゃないハリー
