【凡作】沈黙の聖戦_娘のピンチに女を作るセガール(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(2003年 アメリカ)
今回のセガールは誘拐された娘の救出のため単身タイに乗り込むのですが、娘の救出とは無縁のトラブルが多すぎて緊張感など皆無だし、ボディダブルを隠す気もないアクションが斬新過ぎたりと、Vシネ相応の仕上がりでした。

感想

セガール版コマンドー

今回のセガールが扮するのは、元CIA工作員のジェイク・ホッパー。って、セガールはいつでも元CIAなので、今回もくそもありませんが。

タイに駐在していた10年前に民間人を巻き添えにする銃撃戦をしてしまい、現役引退。現在はハワイで私立探偵をしています。

妻とは死別しており、目の中に入れても痛くないほどかわいい一人娘のジェシカ(サラ・マルクル・レイン)と二人暮らし中。ジェシカもまた彼氏に対して「私のパパみたいになってね」と言うほどの良好な親子関係を結んでいます。

が、タイに旅行中のジェシカが地元の過激派に誘拐され、人質にされたものだから、怒れる親父セガールが単身救出に向かうというのが本作のあらすじ。

って、『コマンドー』(1985年)と同じ話ですね。

ただしセガールの圧倒的戦闘力だとタイに行けばちゃちゃっと片付いてしまうので、タクシーに乗ればボッタクリ目的の犯罪者のところに連れて行かれ、元同僚に会いにナイトクラブへ行けばよくわからん理由でチンピラに絡まれ、行く先々で本筋とは無縁のトラブルが起こります。

そして売られた喧嘩は必ず買うことで定評のあるセガールのこと、娘の救出で急いでいる身の上であることも忘れて、都度、チンピラ達の相手をし続けます。

そんなことをしているうちにセガールは本格的に目的を忘れはじめ、10年前の銃撃戦で深く心を病んで出家した元相棒スンティ(バイロン・マン)がいる寺院を訪れます。

元相棒に協力要請するのかと思いきやそういうわけでもなく(後にスンティは合流するものの、ジェイクからの要請ではなくスンティの意思だった)、ただただタイに来たから昔の同僚の顔を見に来ただけという点が泣かせます。

娘のピンチに女を作る

そんなセガールの悠長な行動の中でも特にひどかったのが、この緊急事態の真っただ中に女を作るという所業ですね。

くだんのナイトクラブの件で、そのきっかけとなったのが従業員のルル(モニカ・ロー)という若い女性でした。助けられたことに恩義を感じたルルはセガールにくっついてくるようになり、そのうちセガールとしても悪い気がしなくなったというのがその馴れ初め。

そうは言っても、まさかこのタイミングでロマンスになんぞ発展しないだろうと思って見ていると、突然キスをはじめたのでびっくりしました。セガールのキスシーンって意外と見ないので、その点でもビックリだったし。

娘からすれば、ただでさえ親父の新恋人はナーバスな問題なのに、自分が人質にされた時期にお付き合いを始めたとなると、2重に傷つくのではないでしょうか。

なお、本家『コマンドー』にもジョンとシンディのラブシーンがあったようなのですが、娘が誘拐されているタイミングで結ばれるのはおかしいだろうという判断から削除されたとのことですよ。

セガールファッションの極北

あと気になったのが、毎度物議をかもすセガールのファッションセンスに、さらに磨きがかかっていたことです。

日本の羽織風と、ラーメンマンみたいな中国の達人風の服が何着も登場するのですが、こんな服着てるおらんやろと言いたくなる独特なファッションには目が釘付けになりました。

かなりふくよかになってきたセガールのボディラインを隠すためにゆったりとしたデザインが選ばれたのかなとも思ったりもして。

で、今回のセガールはやたら衣装持ちなんですよ。場面ごとに新しい服を着ているので、一体何着持ってきたんだよと。

娘は『天元突破グレンラガン』のヨーコばりのビキニ&ホットパンツ姿で最初から最後まで頑張ってるのに、救出に来た親父は服を山ほど持ってきているとか笑えるんですけど。

香港風演出とセガールの相性悪し

そして肝心のアクションですが、Vシネセガールの中では数も種類もかなり多く、頑張った部類に入ると思います。

何せ監督が『HERO』(2002年)や『少林サッカー』(2002年)の武術指導でお馴染みのチン・シウトンですからね。セガール作品中でもトップクラスの監督を引っ張ってきたと言えます。

ただし『DENGEKI 電撃』(2001年)のレビューでも書いたんですが、セガールと香港アクションって、個人的には食い合わせが悪いと思っています。

セガールの達人技には、『刑事ニコ/法の死角』(1988年)でアンドリュー・デイヴィス監督が発明したスタイルが最も馴染むんですよ。

撮影や編集による過剰な装飾なしに、セガールの美しい所作の全体像を切り取るのが一番いいんです。

しかし『DENGEKI 電撃』ではワイヤーで吊るすなど装飾過多でやりすぎだと思ったんですが、本作も同じ失敗を犯しています。セガールらしからぬ動きを取り入れ過ぎているんですよ。

加えて、恰幅の良くなり過ぎたセガールではできないアクションも増えてきたのか、ボディダブルがかなり使われているのですが、香港ならではのアバウトさもあってセガールのシルエットと似ても似つかない代役を立てているので、本人がやっていないことがバレバレになっています。

ボディダブルの場面では背中しか映さなかったり、酷い時には首から上がフレームアウトしていたりと、作り手側がバレることに全然動じていない感じも斬新過ぎたし。

見ごたえはあったけど、セガールに求められているものじゃなかったというのが、本作のアクションでしたね。

聖戦とは何だったのか

そしてタイトルになっている聖戦とは何だったのかと言うとですね、最後の対決で悪い呪術師が藁人形に針を刺すと、セガールが苦しみ出すという『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(1984年)みたいな場面がありました。

で、坊さんたちが念仏を唱えると魔術が中和されてセガールが復活するという。

多分、それを指して「聖戦」と言ってるんだと思います。そんだけです(笑)。

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