【凡作】ジャック・リーチャー NEVER GO BACK_前作からパワーダウン(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(2016年 アメリカ)
前作『アウトロー』(2012年)は好きなのですが、本作はダメでした。逃亡劇なのに緊張感がないし、動けるキャラクターを3人も配置しているのに見せ場の満足度はむしろ下がっています。リーチャーの娘の存在も不要であり、すべてにおいてパワーダウンしていました。

作品解説

ジャック・リーチャーシリーズ第2弾

タイトルに連続性がないので分かりづらいのですが、トム・クルーズ主演作『アウトロー』(2012年)の続編。『アウトロー』の原題は”ジャック・リーチャー”であり、本作はジャック・リーチャーシリーズの第2弾ということになります。

前作は『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)のクリストファー・マッカリーが脚本・監督を務めましたが、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(2015年)の製作時期と重なったために本作では『ラスト・サムライ』(2003年)のエドワード・ズウィックに交代しています。

興行的には伸び悩んだ

本作は2016年10月22日に公開されましたが、『タイラー・ペリーの出たぞ〜! マデアのハロウィン』(すごいタイトルだ…)に敗れて初登場2位。その後もランクを上げることはなく公開5週目にしてトップ10圏外へとはじき出されました。

全米トータルグロスは5869万ドルで、8007万ドルを稼いだ前作を大幅に下回るという残念な結果に終わりました。

国際マーケットではやや持ち直したものの、それでも全世界トータルグロスは1億6214万ドルで、こちらでも2億1834万ドルを稼いだ前作を下回りました。

感想

逃亡劇なのにハラハラしない

別件で世話になったターナー少佐(コビー・スマルダーズ)がスパイ容疑で逮捕されたことを不審に思い、ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)が独自調査を開始することが本作の導入部。

調査を始めるや否や民間軍事会社パラソースに尾行された上、自身も殺人容疑をかけられて軍刑務所に連行されるリーチャーですが、すぐさま憲兵を倒し、同じく収監中のターナー少佐を連れて脱獄します。

ミステリーものだった前作『アウトロー』(2012年)からは一転し、本作は追われる身となったリーチャーがターナーと共に追っ手を振り切りながら真相を探る逃亡劇となりました。

リーチャーだけでなくターナー少佐も武闘派である上に、追っ手側のハンター(パトリック・ヒューシンガー)は初戦でリーチャーを追い込みかけたほどの強敵であり、動ける人間が3人も登場するハードなアクションが志向されているように思います。

ただしこれがどうにも熱くなっていきません。

リーチャーがターナーと組むことで見せ場の濃度が2倍になるかと思いきや、お互いの見せ場を食い合うような形となっており、むしろ濃度は薄まっていました。

また悪役ハンターの動かし方も良くなくて、初戦こそリーチャーを圧倒する凄腕を見せたものの、それ以降には大した見せ場がなかったためにこのキャラのポテンシャルがまるで生かされていませんでした。

アクションがこんな感じなので逃亡劇自体も緊張感を欠いており、いつ公安に見つかるかも分からないというスリルもまるで感じられませんでした。

リーチャーの娘は不要だった

また、本作ではリーチャー自身も認識していなかった娘の存在が明かされ、敵からリーチャーの弱みであるとみなされてその命を狙われたことから、リーチャーとターナーの逃亡劇に娘も加わることとなります。

娘の名はサマンサ(ダニカ・ヤロシュ)。一応高校生ではあるのですが、里親の元を転々としたことからすっかりグレており、リーチャーの言うことを聞きやしません。

そんなサマンサとリーチャーの物語が作品の横糸になっていたと思われるのですが、これもまた作り手が意図したほどの効果を発揮していません。

この娘にあまりにも可愛げが感じられないうえに、捨てろと言われたスマホをこっそり持ち歩いたり、クレジットカードを使ったりと、自ら危険を呼び込むような行動ばかりをとってイライラさせられるのです。

また、リーチャーの用心深さを考えるとうっかり子供を作っていたなんてことはありえないので、多分この子はリーチャーの娘じゃないんだろうなと思って見ていたら、実際その通りだったという捻りのないオチにもガッカリでした。

そこは一周回って、本当にリーチャーの娘でしたの方がサプライズになったと思います。

すべてにおいて作り手側の計算通りにならなかった作品という印象であり、本作をもって映画「ジャック・リーチャー」シリーズが打ち止めになったことにも納得がいきます。

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