(2002年 アメリカ)
ゾンビやメカの描写は素晴らしく、見せ場のバリエーションは豊富、話にスケール感もあって各構成要素は素晴らしいのですが、それらの要素の連結に失敗していて大きな流れを生み出せていないのでさほど面白くはありません。
ゲームの映画化企画の大成功例
失敗することの多いテレビゲームの映画化企画としては、おそらく史上最も成功しているこのシリーズ。第一作である本作は前年公開の『トゥームレイダー』の約1/4というコンパクトな予算で製作されながら全世界で1億ドル突破というなかなかのヒットとなり、さらには製作費の高騰を抑えながら長期シリーズ化に成功し、『6』までの累計で12億ドル以上も売り上げたのだから(DVD売上やテレビ放映料を考えれば、トータルの収益はその数倍になるはず)、生みの親であるポール・W・S・アンダーソンの手腕は見事と言うしかありません。
ゲームのプレイ感の再現と映画的な感覚の両立
確かにこの映画はよくできています。ゲームの実写化作品は往々にして無機質な映画になる傾向があり、例えば『トゥームレイダー』などは見せ場が派手になればなるほど緊張感が失われるという負のスパイラルに陥っていましたが、本作ではアンデッドに噛まれて脂汗を流しながら苦痛に耐えるミシェル・ロドリゲスを主人公アリスの傍に配置することで、その罠をうまく回避しています。
その一方で、記憶を失ったアリスが部屋を探索する冒頭はゲームのプレイ感をうまく再現しているし、ある地点からある地点への移動を主とする構成にもゲームらしさが残っていて、原作に対して一定の敬意を払っている点でも感心しました。『バイオハザード』らしい退廃的な世界観の構築にも成功していて、制作から15年以上経った現在の目で見ても「よく出来た映画だな」と感心させられました。
ダメな方のポール・アンダーソンの限界
ただし、そうした出来の良さが娯楽映画としての面白さにつながっているかと聞かれれば、必ずしもそうではないのが残念なところ。ひとつひとつの構成要素は良くても活劇としてうまくつながっておらず、作り手が意図したほど面白い映画とはなっていないのです。これについては、監督にアクション映画を撮るセンスがなかったことが原因だと思います。
ポール・W・S・アンダーソン(通称:ダメな方のポール・アンダーソン)の映画は、世界観が説明される前半が抜群に面白いのに、クライマックスに向けてどんどん盛り下がっていくという傾向があり、本作もまさにそのパターンに陥っています。スケジュールの都合がつかなくて他人に監督を任せた『2』『3』がアクション映画として真っ当な仕上がりとなっていたことを考えても、本作の不完全燃焼ぶりの原因は監督にあると考えるべきでしょう。
≪バイオハザードシリーズ≫
【凡作】バイオハザード_見てくれは良いがスリルはない
【良作】バイオハザードII アポカリプス_見せ場とヒロインで押し切った快作
【凡作】バイオハザードIII_設定は崩壊寸前
【凡作】バイオハザードIV アフターライフ_シリーズの立て直しに失敗
【良作】バイオハザードV リトリビューション_バカバカしくも楽しいアクション大作
【駄作】バイオハザード: ザ・ファイナル_ご都合主義で摩耗しきった最低作
バイオハザード(2022年)_迷惑姉妹が世界を滅ぼす【4点/10点満点中】
コメント
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カミさんをキレイに撮るためだけに集中したからでしょうwww
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>newhellsingさん
コメントいただき、ありがとうございます。
私情は判断を曇らせますからね。