【凡作】シューター/女スパイ・標的の罠_ドルと文芸女優の化学反応(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(1995年 アメリカ)
内容面でもアクション面でも平凡な、ドルらしいと言えばドルらしい作品なのだが、どういうわけだか欧州の文芸女優が相手役なので演技面では充実しており、見て損のない仕上がりにはなっている。

感想

高校時代に地上波深夜枠で見た映画だが、あんまり面白くなくて以降は特に見返すことがなかった。国内ではDVD化がなされていないので、鑑賞手段自体が限られているのではあるが。

最近、Amazonプライムで無料配信されているのを発見して四半世紀ぶりに再見したのだけど、やはり微妙な出来だった。

90年代前半のドルって、本当につまらない映画にばかり出ていた。体格に恵まれ、マーシャルアーツの腕前もあったのだから、作品審美眼がもうちょいあれば、キャリアも明るいものになったと思うのだが。

本作でドルが演じるのは米連邦保安官マイケル・デイン。マイケルの出身はチェコ共和国だが、革命運動家だった母をプラハの春で亡くし、少年期にアメリカに亡命してきたという経歴を持っている。

そんなマイケルが故郷のプラハに派遣される。

NYでキューバ国連大使を暗殺した狙撃犯がプラハに潜伏しているとの情報を受け、アメリカで裁きを受けさせるため、その身柄確保にやってきたのだ。

犯人はシモーヌ(マルーシュカ・デートメルス)という元工作員で、現在はプラハでカフェを経営しているというので早速偵察に行くのだが、当のシモーヌは日課のジョギングをこなすなど、潜伏中の狙撃犯らしさがゼロ。

「本当にこいつが犯人なのか?」と訝しがりながらも上司の命令に従ってシモーヌ逮捕に乗り出すマイケルだが、案の定、今回の任務には裏がありましたというのがざっくりとしたあらすじ。

物語は二転三転するのだが、シモーヌは替え玉で真犯人が別の企てを持っているという構図は序盤から読めてしまうので、見ていて特にサプライズは感じなかった。

下手糞な脚本だなぁと思いながら見ていたのだが、脚色にビリー・レイがクレジットされていたので驚いた。

ビリー・レイは、大ヒット作『ハンガー・ゲーム』(2012年)やトム・ハンクス主演作『キャプテン・フィリップス』(2013年)などを手掛けるハリウッド有数の大物脚本家であり、思いがけぬビッグネームの登場には意表を突かれた。

まぁこの頃のビリー・レイは脚本家として駆け出しで、ブルース・ウィリス主演のラジー賞受賞作『薔薇の素顔』(1994年)や、トミー・リー・ジョーンズがマグマと格闘する『ボルケーノ』(1997年)など、ちょいとアレな仕事が続いていたのだが。

ビッグネームと言えば監督もで、『ランボー』(1982年)のテッド・コッチェフが演出を担当している。アクション俳優の扱いには一定の実績を持つ人物なのだが、本作のドルの扱いは下手糞だったなぁ。

あらすじから推測するに、ドル扮するマイケルは凡庸な捜査官で、彼が母国プラハで女工作員とアツイ仲になりつつ、使命感に燃え、やがて大きな陰謀に立ち向かうようになるという成長譚が意図されていたように思う。

しかしコッチェフの演出にはメリハリがなく、最初から最後までドルはドルのままなので、主人公の成長がさほど感じられないのがツラかった。

またアクション演出も『ランボー』(1982年)の頃から随分と退化している。

予算の少なさなど如何ともしがたい部分もあったのだろうが、それにしても見せ場は鈍重で「ただ撮っているだけ」という状況で、手に汗握る展開が皆無だった。

ひとつだけ「おっ」と思ったのが中盤の追撃場面で、軍用トラックを奪ったドルは敵戦闘員の一人を轢き殺す。普通ならその時点で戦闘員は退場なんだけど、轢かれた後の戦闘員がしばらくトラックに引きずられるという妙に生々しいカットが続くので驚かされた。

演技面ではなかなか健闘している。

女工作員に扮するマルーシュカ・デートメルスはジャン・リュック・ゴダール監督作『カルメンという名の女』(1983年)でいきなり主演デビューし、主に欧州の文学作品で評価されてきた早咲きの名女優である。

おおよそB級アクションとは無縁そうなデートメルスとドルの相性は未知数だったのだろうが、意外や意外、ドルとの間では化学反応が起こっており、二人のバディはなかなか見れたものだった。

またマイケルのアメリカでの育ての親にして、職業上の先輩でもあるアレックス捜査官役には、『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)や『ミッドナイト・ラン』(1988年)のジョン・アシュトンが配役されているのだが、こちらもまた安定した演技でドルとの心温まる師弟関係を見せてくれる。

こうした演技面での充実が、B級アクションらしからぬ雰囲気を本作に与えている。

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