【良作】トゥモロー・ウォー_前半最高、後半グダグダ(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2021年 アメリカ)
前半部分は「『スターシップ・トゥルーパーズ』以来の傑作誕生!」とかなり興奮したのですが、後半に入るとこじんまりとし始める&話のアラも目立ってくるで、全体的には標準レベルの良作というところでした。前半の勢いで突っ走ってくれれば空前の傑作になったんですけどね。

作品解説

監督は『LEGOムービー』(2014年)のクリス・マッケイ

監督のクリス・マッケイは南イリノイ大学やコロンビア大学で映画を学んだ後に映画界に入った人物なのですが、まずは機材レンタルの会社で働いて原資を集め、自分で機材を買って独立した後にはMTVや産業ビデオなどの編集業を行っていました。

その後、テレビアニメの世界で編集を行うようになったのですが、編集者としての腕前を買われたところで実は監督志望であることを告げ、アニメシリーズの監督をさせてもらうようになりました。

アニメ監督としても実績を積んで有能なクリエイターであることをアピールしたところ、ワーナーによって映画界に招かれて『LEGOムービー』(2014年)を共同監督。そのスピンオフ『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017年)では単独監督を務めました。

この通り、機材レンタル屋勤務からスタートして業界との接点を持ち、徐々に役割を拡大させていって映画監督になるという夢を実現した苦労人であり、現在はDCEUの一作『NoghtWing』を製作中です。

製作・主演はクリス・プラット

主演は『ジュラシック・ワールド』シリーズのクリス・プラットで、本作では初めて製作総指揮も務めています。

大学中退後にぷらぷらしていたところを『コマンドー』(1985年)のレイ・ドーン・チョンに拾われて映画デビューし、テレビのコメディドラマで人気を博してスターになったという、クリス・マッケイ監督とはまた違った形での波乱万丈を送ってきた人物です。

『LEGOムービー』(2014年)で主人公の声優を務めたことが、マッケイ監督との接点でした。

その後『ジュラシック・ワールド』シリーズと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで世界的な大スターとなりました。なお本作に彼の娘役として出演するイヴォンヌ・ストラホフスキーは、キャプテンマーベル役の最終選考にまで残っていた人物でした。

2018年には作家のキャサリン・シュワルツェネッガーと結婚。その特徴的な姓からお察しの通り、アーノルド・シュワルツェネッガーの長女です。

俳優になるきっかけを作ったのが『コマンドー』のヒロインで、義父が『コマンドー』主演というあたりに、私は熱いものを感じました。どこかでアリッサ・ミラノとも共演してほしいものです。

ハリウッドでは珍しいゴリゴリの保守派で、家には数十丁の銃をコレクションし、趣味は狩猟。反LGBTで有名な教会の熱心な信者であり、極右活動家が好むガズデン旗がプリントされたTシャツを着るなど枚挙に暇がありません。

Amazonプライムで配信

本作はパラマウントにより2020年12月25日に全米公開予定だったのですが、コロナ禍で断念。その後、2021年7月23日に公開が延期されたのですが、パラマウントはこれも断念。

2億ドルでAmazonに売却され、2021年7月2日にAmazonプライムビデオにて独占配信されました。

感想

タイムトラベルものとして優秀

エイリアンの侵略により滅亡寸前にまで追い込まれた2051年の人類を救うため、2022年の人類が徴兵されて2051年の戦場に送り込まれるというのがざっくりとしたあらすじ。

未来世界での人類滅亡危機に対して、現代人が大勢連れて行かれるというお話からはマイケル・アンダーソン監督の『ミレニアム/1000年紀』(1989年)、主人公の親子関係が大勢に影響を与えるという点からは『ターミネーター』(1984年)、ワームホールが一つしかないのでタイムトラベルできる年代は固定されているという制約条件からはトニー・スコット監督の『デジャヴ』(2006年)を思い出しました。

こうして様々な過去作品のアイデアを拝借しつつも、「未来戦争のための徴兵」という斬新な独自アイデアを中心に構成したことで二番煎じ感はなく、よく考えられたお話だと感心しました。

またタイムパラドックスを回避するための小ネタも気が利いていて、現代にタイムトラベルしてくる未来人は若者ばかりなのですが、これは2022年時点で生まれていない者が選抜されているためで、逆に2051年に兵士として送り込まれる現代人が中年ばかりなのは、30年後の時点ではすでに故人となっている者が徴兵されているため。

こうした細かいアイデアによって物語全体の納得感が増しており、なかなかSFしている映画なのです。

SF戦争映画の傑作誕生!

かくして現代の中年達が2051年の未来戦争へと送り込まれるのですが、世界人口が残り50万人を切るところにまで追い込まれたほどの状況は苛烈の一言で、中年達は着任早々地獄を見ることとなります。

ホワイトスパイクと呼ばれる敵エイリアンと遭遇する場面は『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)の初戦に匹敵するほどの緊張感と迫力であり、ホワイトスパイクの明らかに獰猛な見た目、その見た目のインパクトを超えるほどの俊敏さと強力さにより、中年達はバタバタと命を落としていきます。

未来人曰く、「もしホワイトスパイクの姿を事前に見せていると、2022年の人々は協力してくれなかったかもしれない」。そんな無茶苦茶な説明あるかと思いますが、彼らの言い分にも納得できるほどの地獄絵が広がっています。

しかもホワイトスパイクにはいろんなギミックが搭載されており、追い込まれると骨を飛び道具のように投げつける、急いでいるときにはモモンガのように飛ぶ、海を泳ぐと、そのフルスペックぶりには恐れ入りました。

対する人類も容赦なし。ありったけの弾と火薬をぶち込んでこれに応戦します。

SF戦争映画としては『エイリアン2』『スターシップ・トゥルーパーズ』に匹敵する驚きと興奮があり、前半では「SFアクションの新たな金字塔誕生か!?」と思いました。

主人公ダンのドラマが良い

主人公ダン・フォレスター(クリス・プラット)は従軍経験を持つ元兵士であると同時に、軍で研究開発を行っていたサイエンティストとしての経歴も持っています。

ただし軍事研究は案外つぶしのきかない職歴のようで、退役後には高校で生物の教師をしています。『ブレイキング・バッド』でも描かれていた通り、アメリカにおいて高校教師はさほどステータスの高い職業ではなく、ダンは一流ラボへの転職を希望しています。

序盤では彼が採用選考で落とされる様が描かれ、ここからダンは今の人生に満足していないことが分かります。

そんな不満を抱えた状態で未来戦争に徴兵されたダンは、大佐としてホワイトスパイクの研究を行っている成長した娘ミューリと出会います。

ミューリから聞かされたダンの人生とは、仕事や家庭に不満を覚えたことから妻子を捨て、最後は野垂れ死に同然に交通事故死を遂げるというものでした。

序盤でイライラしてゴミ箱を蹴り上げていた、あの心境のままで生き続けていると自分も家族も不幸にするということを知ったダンが、家庭人としてやり直す機会を得る物語でもあるのです。

タイムトラベルを契機として人生を美しく変えていこうとする物語は『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989年)のようでしたが、これまたテンプレ通りにうまくまとめており、感動的なものに仕上がっています。

後半の失速が凄い

そんなダンとミューリの邂逅が描かれるのが中盤であり、残りの上映時間はまだ1時間ほどあります。その後で何が描かれるのかというと、現代に戻ったダンがホワイトスパイクの母船を攻撃し戦争の根本を絶つという作戦です。

今度は『テネット』(2020年)的な発想になっていくのですが、ここから急速に映画はつまらなくなっていきます。

ダンは未来からホワイトスパイクを倒すための毒を持ち帰ります。ミューリと共に作り上げたこの武器が決め手になるのかと思いきや、これが大して役に立たないのだからびっくり仰天でした。

2022年現在のロシアに、すでにホワイトスパイクの母船が存在する可能性を見出したダンは、未来戦争を防ぐためにこれを叩くべきと軍に進言するのですが、なぜかこれが却下されます。

いやいや、徴兵に比べればはるかに少ない手間とリソースでできることなんだから、軍は対応しろよと思うのですが。

仕方なくダンは民間でロシアに乗り込み、仮説通りの場所にホワイトスパイクの母船を発見。発見した母船はまだ凍結状態なのだから、ここで無理せず応援を呼んで確実に仕留めればいいのに、「俺たちが今ここで叩こう」と言って無謀な作戦を開始します。

案の定、作戦はうまくいかずホワイトスパイク達を現代に覚醒させてしまった上に、メスを逃亡させかけてしまうのだから、何といううっかりさんなんだろうと思います。

そんな感じで後半がグダグダだったのは残念でした。

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