【凡作】アナコンダ_おっさんが大蛇より目立っちゃダメ(ネタバレなし・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(1997年 アメリカ)
アナコンダよりもジョン・ヴォイトの方がキャラ立ちしているという問題ある構成のモンスター映画でした。またジョン・ヴォイトとジェニファー・ロペスがアホの騙し合いのような低レベルな争いをするので極限状態のサスペンスとしても弱く、見所の少ない作品に終わっています。

©Sony Pictures

あらすじ

アメリカ人の撮影クルーが幻の少数民族シリシャマ族を撮影するためにアマゾンにやってくる。ガイドと共に川を上るクルー達は、その途中で遭難した密猟者サローン(ジョン・ヴォイト)を助け出し、船に乗せる。しかしサローンの目的はオオアナコンダの捕獲であり、そのためにクルー達を利用しようとしていた。

スタッフ・キャスト

監督は『山猫は眠らない』のルイス・ロッサ

1951年ペルー出身。トム・ベレンジャー主演の『山猫は眠らない』(1993年)で脚光を浴び、シルベスター・スタローンとシャロン・ストーンが共演した『スペシャリスト』で酷評を受けたのですが、同作は4500万ドルの製作費に対して全世界で1億7000万ドルを稼ぐヒットとなり、興行的な結果だけは残しました。

本作も同じくで、ラジー賞ノミネートもなんのその、製作費4500万ドルに対して1億3600万ドルを稼ぎました。

脚本は『トップガン』のジム・キャッシュ&ジャック・エップス・ジュニア

25年間にも渡ってコンビを組んできた脚本家であり、トム・クルーズ主演の『トップガン』(1986年)が代表作。その他にマイケル・J・フォックス主演の『摩天楼はバラ色に』(1987年)やトム・ハンクス主演の『ターナー&フーチ すてきな相棒』(1989年)などの脚本を書いています。

撮影は『ジョーズ』のビル・バトラー

1921年コロラド州出身。ジョン・ブアマン監督の『脱出』(1971年)、ミロシュ・フォアマン監督の『カッコーの巣の上で』(1975年)」で撮影技師を務め、『ジョーズ』(1975年)、『グリース』(1978年)で撮影監督を務めました。

その他に『カプリコン・1』(1977年)や『ロッキー』シリーズの2~4を手掛けています。

やたら豪華なキャスト

  • ジェニファー・ロペス(テリー・フロレス役):10代から女優業を行っており、『セレナ』(1997年)でゴールデングローブ賞ノミネート。1999年に歌手活動を開始し、”If You Had My Love”が300万枚を売り上げる大ヒットとなりました。
  • ジョン・ヴォイト(ポール・サローン役):アカデミー賞作品賞受賞作『真夜中のカーボーイ』(1969年)で注目を浴び、『帰郷』(1978年)でアカデミー主演男優賞受賞。しばらく低迷していましたが、『ミッション:インポッシブル』(1996年)のジム・フェルプス役で復活。アンジェリーナ・ジョリーの父親ですが、親子仲は悪いようです。
  • アイス・キューブ(ダニー・リッチ役):伝説のヒップホップグループN.W.Aの元メンバーで、ソロ転向後の音楽活動でも成功。『ボーイズ’ン・ザ・フッド』(1991年)で映画界に進出し、多くのアクション映画に出演しています。
  • オーウェン・ウィルソン(ゲアリー・ディクソン役):テキサス大学オースティン校在学中にウェス・アンダーソンと出会い、『天才マックスの世界』(1998年)や『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001年)の脚本を共同で執筆して、後者ではアカデミー脚本賞にノミネートされました。『アルマゲドン』(1998年)や『エネミー・ライン』(2001年)などの娯楽作に出演し、『カーズ』(2006年)では主人公マックィーンの声を演じました。
  • ダニー・トレホ(冒頭の犠牲者):10代から犯罪に関わり、麻薬の常習者でもあったため何度も刑務所のお世話になった本物。その後改心して俳優業を志すようになり、ジョン・ヴォイト主演の『暴走機関車』(1985年)にチョイ役で出演。その後ロバート・ロドリゲス監督作品の常連となり世界的な名声を得ました。

作品解説

2週連続全米No.1ヒット

本作は1997年4月11日に公開されました。4月は大した映画が公開されない時期だということもあり、公開4週目を迎えたジム・キャリー主演の『ライアー・ライアー』(1997年)を除くとめぼしいライバルもなく、1662万ドルを稼いで全米No.1ヒットとなりました。

2週目に入ってもウェズリー・スナイプス主演の『ホワイトハウスの陰謀』(1997年)くらいしか目立ったライバルがなく、難なくV2を達成。

トミー・リー・ジョーンズ主演のディザスター大作『ボルケーノ』(1997年)が公開された3週目にして首位陥落したのですが、全米トータルグロスは6588万ドルと、久しくヒット作の出ていなかったモンスター映画としては例外的なスマッシュヒットとなりました。

世界マーケットでも同じく好調であり、全世界トータルグロスは1億3688万ドルに達しました。製作費4500万ドルの中規模予算だったことを考えると善戦したと言えます。

感想

人間同士の足の引っ張り合いでモンスターが霞む

敵は全長14mの獰猛なアナコンダ!

…なのですが、撮影クルー達を騙してまでアナコンダ捕獲に執念を燃やすジョン・ヴォイト扮するサローンの方がより逼迫した脅威なので、アナコンダの存在感は霞んでいます。

当初はサローンとクルー達が対立していても、予想以上にアナコンダが手ごわかったことから後半は協力して事に当たるという展開であるべきだったと思うのですが。

例えばスティーヴン・ソマーズ監督の『ザ・グリード』(1998年)では、主人公率いる密輸船グループと海賊グループとの間に一触即発の空気が流れているのですが、モンスターがすぐ近くに来ていることが分かった瞬間に海賊のボスが主人公に銃を持たせます。

緊急時における共同戦線。これはなかなか燃える構図だし、ライバルと協力しなければ勝てないほどの強い敵ということでモンスターの存在感も増すのですが、本作はそれとは正反対の方向を走っています。

また、モンスターは人間の生存圏に侵入してきてこそ活きますね。モンスターの生息域に足を踏み入れた人間という逆の構図では、「そら、お前らが悪いだろ」としか言いようがありません。

盛り上がらないサスペンス

エリック・ストルツ扮ケイルするが意識不明となった後、すぐにでも病院に運ばないと命が危ないということでショートカットのために一行はリスキーな道を選択するので、この映画はタイムリミットサスペンスを標ぼうしているものと思って観ていました。

しかし中盤にて行方不明になったガイドをどうするのかというくだりにおいて、ジェニファー・ロペス扮するテリーが「一晩待ってみましょう」とか言い出すので、そうでもなかったんかいとズッコケそうになりました。

この映画は全体を貫く大きな目標、すなわちいつまでにどこに辿り着かねばならないのかという流れが提示されていないので、ダラダラと川下りをしていると大蛇に襲われて、しかも同乗者のおっさんも何だか様子がおかしいねという、なんとも盛り上がらない内容となっています。

知性を感じられない騙し合い

ガイドを失った後には誰が船を動かすのかという主導権争いが発生し、現地に詳しいサローンがいったん指揮権を握るのですが、後にテリー達がクーデターを起こします。

そのクーデターというのが、テリーがバレバレの嘘と色仕掛けでサローンを安心させた隙に男二人で羽交い絞めにし、ロープで縛りあげるという、めちゃくちゃに安易なものでした。

こんなアホな作戦を考えるテリーもテリーなら、まんまと引っ掛かるサローンもサローン。バカとアホが騙し合いをしている状態となります。

さらに、カリ・ウーラー扮するデニスが恋人を亡くした恨みから拘束中のサローンにナイフ片手に近づくと、案の定反撃に遭ってナイフを奪われ、サローンがロープを切って自由になるという、考えうる最低の展開を迎えます。

こんなバカバカしい展開のどこで手に汗握ればいいのでしょうか。

アナコンダの動きのみ素晴らしい

そんなこんなで壊滅的な出来の映画なのですが、唯一、アナコンダの独創的な動きだけは楽しんで見ることができました。

追い込まれた男が滝に向けてジャンプ。するとアナコンダは尾を木に巻き付けて頭を伸ばし、ジャンプした男を見事キャッチします。 本作のスタッフはなんというありえない動きを考え出したんだろうかと感動しました。

アナコンダがさらに活躍しない続編。
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