ホワイトハウスの陰謀【良作】ほどほどに楽しめる(ネタバレあり・感想・解説)

(1997年 アメリカ)
タイトルから連想される壮大さはないし、多くの構成要素をぶち込んだ割には機能していないものもチラホラあるのですが、テンポよく謎解きが進んでいき、後味も悪くないので、午後ローでダラダラと見る分には楽しめる映画です。こういうユルくても楽しい映画を受け入れられる感性は持っておきたい、そんなことを思わせるような映画でした。

あらすじ

ホワイトハウスで若い女性職員が惨殺死体となって発見された。大統領補佐官アルヴィン・ジョーダン(アラン・アルダ)からの要請により市警のリージス刑事(ウェズリー・スナイプス)が派遣されるが、警備主任のスパイキングス(ダニエル・ベンザリ)は非協力的で証拠の入手もままならず、捜査は難航する。

スタッフ・キャスト

製作は『逃亡者』『セブン』のアーノルド・コペルソン

1935年NY出身。ニューヨーク法科大学院で法学博士号を取得した後に、映画業界に融資する金融機関の弁護士となり、多くの映画の資金調達に関与しました。投資の回収という観点から、儲けを出せる企画の選別眼はここで身に付けたものを思われます。

後に妻となるアン・ファインバーグと共にインディペンデント映画を世界セールスにかける代行業を立ち上げ、その後には映画製作にも進出して『プラトーン』(1986年)でアカデミー作品賞を受賞しました。

1990年代に入ると『逃亡者』(1993年)、『アウトブレイク』(1995年)、『セブン』(1995年)、『イレイザー』(1996年)とヒット作を連発してハリウッドを代表するプロデューサーとなりました。

監督は『死の標的』のドワイト・リトル

1956年クリーブランド出身。南カリフォルニア大学在学中に学生映画界で注目を集め、『KGB闇の戦士』(1985年)で映画監督デビュー。

人気ホラーシリーズ第4弾『ハロウィン4 ブギーマン復活』(1988年)、スティーヴン・セガールがブードゥーの魔術と戦う『死の標的』(1990年)、ブランドン・リー主演が素晴らしい身体能力を披露するアクション『ラピッド・ファイアー』(1992年)、少年とシャチの友情を描いた家族向けドラマ『フリー・ウィリー2』(1995年)と、80年代後半から90年代前半にかけては何でも撮る職人監督ぶりで重宝されていたのですが、これといったヒット作が出なかったことから映画界からは徐々にフェードアウト。

2000年代に入るとテレビドラマを中心に活動するようになり、『プリズン・ブレイク』『24-TWENTY FOUR-』『BONES』などの演出を手掛けています。

作品概要

原作者はトルーマン大統領の娘

本作の原作”Murder in the White House”(1980年)の著者はマーガレット・トルーマンであり、合衆国第33代目大統領ハリー・S・トルーマンの娘です。

1924年ミズーリ州出身で、ジョージ・ワシントン大学卒業後に歌手デビュー。1951年にはタイム誌の表紙を飾りました。

推理小説家としても活動しており、”Murder in the White House”(1980年)を皮切りにスミソニアン、FBI、CIAなど”Murder~”シリーズを20作以上発表しました。2008年逝去。

感想

魅力的な主演二人

主演のウェズリー・スナイプスは今でこそ脱税で服役したエクスペンダブルズというイメージですが、90年代には『パッセンジャー57』(1992年)で典型的なアクションヒーローを演じたかと思えば、『デモリションマン』(1993年)でコミカルな悪役を演じ、『ワン・ナイト・スタンド』(1997年)で非アクションのシリアスな役でヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞したかと思えば、『ブレイド』(1998年)でダークヒーローを演じたりと、非常に幅広い活躍をする俳優でした。

本作でウェズが演じるリージス刑事はホワイトハウスでの殺人事件を担当させられるほどの腕利きであり、私生活では行政から立ち退きを命じられて弱っている小市民で、夜な夜な自宅に南北戦争ジオラマを作っている歴史マニアという訳の分からんキャラクターなのですが、当時のウェズの個性によって、この多面的なキャラクターがちゃんと成立しています。

男らしさとユーモアの両立は完璧であり、ホワイトハウスでの惨殺事件という重苦しいテーマを扱いながらも、自然体で冗談を言えるウェズの演技によって、全体が重くなりすぎることなく推移していきます。

そんなウェズの相棒となるシークレットサービスのニーナ役はダイアン・レイン。10代の頃にはアイドル的な人気を誇り、2000年代以降は大人の女優としての地位を確立したレインにとって、80年代後半から90年代にかけては不遇の時期に当たるのですが、実は彼女の美しさが爆発していたのは『ジャッジ・ドレッド』(1995年)や本作が製作された90年代半ばだったりします。

本作でのニーナ役は警護のプロという風情であり、女性性を漂わせることの多いレインにとっては異色の役柄ではあるのですが、緊迫した状況で見せる鋭いまなざしや知的な雰囲気が実に様になっており、彼女にはこういう役柄の方が合っているのではないかと思います。

サスペンスとアクションのブレンドが丁度良い

サスペンスアクションというジャンルは結構難しく、たいていの場合、アクションをやり過ぎて最後は腕力と銃撃で解決してしまい、チマチマとした謎解きが映画の邪魔にしかならないという罠に陥るのですが、本作ではその辺りのブレンドがうまくいっています。

基本は謎解きであり、時にアクションが開始されるものの主演二人がスーパーマン並みに強いわけでもないので、見せ場が終わるとちゃんと謎解きに戻っていくのです。

ミステリーがきちんと機能し、アクションは従たるものとして彩を添える程度に収まっている。加えて、アクションを見ながらでも楽しめる程度にミステリーの情報量は押さえられており、非常に見やすい映画でした。

過去に『逃亡者』(1993年)を製作したプロデューサーのアーノルド・コペルソンならではの采配と言えるのではないでしょうか。

※注意!ここからネタバレします。

ホワイトハウスを舞台にした意義は薄い

ただし仰々しい邦題に見合ったほどの内容はなかったので、結末までを見ると肩透かし感もあります。

北朝鮮への攻撃を巡って煮え切らない態度をとる大統領の引責辞任を狙った大統領補佐官による殺人だったことが判明するのですが、そうした陰謀のバックグラウンドが本編中で効果的に提示されていなかったので、どうにも底の浅い話に感じられるのです。

アクションと捜査のブレンドには成功したものの、そこに政治という第3の要素を絡め損ねていたために、セリフで説明されるほどの重大な話には感じられませんでした。 補佐官と大統領との関係性や、北朝鮮攻撃を巡って対立する閣僚達の姿などをしっかりと描写していればまた印象は変わったと思うのですが。