【凡作】ベスト・キッド(1984年)_悪いのはダニエルさん(ネタバレあり・感想・解せる)

その他

(1984年 アメリカ)
後日談『コブラ会』(2018年-)を見るため四半世紀ぶりに鑑賞したのですが、あらためて見ると「あれ?こんな話だったっけ?」という感想を持ちました。ほとんどのトラブルがダニエルさん発で、あらためて見るといじめられっ子がいじめっ子に正々堂々立ち向かう話でもないなと。

あらすじ

高校生のダニエル(ラルフ・マッチオ)は母親の仕事の都合でニュージャージーからカリフォルニアに引っ越して来た。同じ高校のアリ(エリザベス・シュー)という少女と親しくなるが、アリに未練を抱く元彼ジョニー(ウィリアム・ザブカ)から目を付けられる。ある時ジョニーとその取り巻き達に襲われたところを、アパートの管理人であるミヤギ(パット・モリタ)という老人に救われる。ミヤギは空手の達人であり、ダニエルはその教えを受けることにする。

スタッフ・キャスト

監督は『ロッキー』のジョン・G・アヴィルドセン

1935年イリノイ州出身。

広告代理店でのCM製作を経て映画界入りしたのですが、当初はトロマ社でB級映画を撮っていました。

監督作『セイブ・ザ・タイガー』(1973年)で主演のジャック・レモンがアカデミー主演男優賞を受賞したことから注目の監督となり、『ロッキー』(1976年)がその年でもっとも稼いだ作品になった上に、アカデミー作品賞を受賞。自身もアカデミー監督賞を受賞しました。

ただしトロマ出身の器用貧乏ぶりがアダとなり、『ロッキー』後にはジャンルを問わず活躍するも評価を獲得する作品を生み出せず、マーロン・ブランドとジョージ・C・スコットが共演したポリティカルスリラー『ジェネシスを追え』(1980年)では第一回ラジー賞で複数部門にノミネートされるという不名誉を受けました。

そんな中で監督した本作が人生二度目の大ヒット作となり、『ベスト・キッド2』(1986年)、『ベスト・キッド3/最後の挑戦』(1989年)も引き続き監督しました。

ダニエルさん役はラルフ・マッチオ

1961年NY出身。ギリシャ系とイタリア系の血を引いています。

エミリオ・エステベス、デミ・ムーア、トム・クルーズらと並んでブラット・パックの一人として言及されており、フランシス・フォード・コッポラ監督の『アウトサイダー』(1983年)と本作への主演で人気を博しました。

本作出演時点で22歳だったのですが、設定上の高校生どころか中学生にも見えるほどの幼いルックスで度肝を抜きましたが、その汎用的ではないルックスが災いしてかダニエルさん以外の役柄には恵まれず、『ベスト・キッド』シリーズ以外ではあまり見かけませんでした。

なお、制作側が考えていたダニエルさん役の第一候補はショーン・ペンだったようです。

とても成人男性には見えないラルフ・マッチオ

ミヤギさん役はパット・モリタ

1932年カリフォルニア出身。第二次世界大戦中は収容所で過ごし、高校卒業後にはロケットエンジニアとして就職したものの、スタンダップコメディアンを志して退職しました。

即興コメディ劇団を経て、コメディドラマ『ハッピーデイズ』(1974-1984年)への出演で人気を博しました。

『ハッピーデイズ』は、後に映画界に進出して『プリティ・ウーマン』(1990年)や『プリティ・プリンセス』(2001年)を撮ることとなるゲイリー・マーシャルが製作総指揮を務め、後の大監督ロン・ハワードが俳優時代に主演したという人材の宝庫のようなテレビドラマでした。

その後『ミッドウェイ』(1976年)や『世界崩壊の序曲』(1980年)など大作映画にも出演するようになり、本作『ベスト・キッド』(1984年)でのミヤギさんが当たり役となって、アカデミー助演男優賞にもノミネートされました。

三船敏郎がミヤギさんのオーディションを受けていたことは有名な話ですが、あまりに侍然とし過ぎていてミヤギさんのイメージとはかけ離れていたことから、コメディ出身のパット・モリタに決まったということです。

その際に日本人感を出すために、パット・モリタという芸名の上に”ノリユキ”という本名を付けることとなりました。

また彼自身はカリフォルニア生まれで英語ネイティブなのですが、ミヤギさんを演じるに当たっては日本人特有の訛りを付けた発音にしています。

彼女役はエリザベス・シュー

1963年デラウェア州出身。ハーバード大学在学中に本作に出演し、以降は出演作が立て込んだために学業と両立できなくなり、15年後の2000年に学位を取得しました。

本作『ベスト・キッド』(1984年)でのダニエルさんの彼女役、『カクテル』(1988年)でのトム・クルーズの彼女役、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989年)でのマイケル・J・フォックスの彼女役と、彼女役でよく見かけていた女優さんであり、まだ演技派だったニコラス・ケイジの相手役を務めた『リービング・ラスベガス』(1995年)でアカデミー主演女優賞にノミネートされました。

本作では清純キャラでしたが、直近のテレビドラマ『ザ・ボーイズ』(2019年)ではスーパーヒーロー達をプロデュースする腹黒い会社重役を演じ、重量級の存在感を示しています。

作品概要

1984年の大ヒット作

本作は1984年6月22日に公開。同時期には『ゴーストバスターズ』(1984年)や『グレムリン』(1984年)など強力なライバルが多かったために全米No.1は一度も獲っていないのですが、17週に渡ってトップ10に入り続けるという根強い人気を博しました。

その結果、800万ドルという小規模予算の作品ながら累計で9081万ドルもの興行成績をあげ、1984年度の全米年間興行成績第4位という大ヒットとなりました。

なおその年の全米年間興行成績トップ10がゴールデン洋画劇場の常連メンバーみたいな強力打線であり、これを眺めているだけでワクワクできます。

  1. ゴーストバスターズ
  2. インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説
  3. グレムリン
  4. ベスト・キッド
  5. ポリス・アカデミー
  6. フットルース
  7. ビバリーヒルズ・コップ※
  8. スタートレック3 ミスタースポックを探せ
  9. 愛と追憶の日々※
  10. ロマンシング・ストーン/秘宝の谷

※年末公開につき、興行成績は1984年と1985年にまたがっている

登場人物

  • ダニエル・ラルーソー(ラルフ・マッチオ):シングルマザーと二人暮らしであり、母の仕事の都合でニュージャージーからカリフォルニアに引っ越して来た。偶然親しくなったアリ・ミルズが不良グループのリーダー・ジョニーの元カノだったことから、彼のグループに目を付けられる。
  • ミヤギさん:ダニエル親子が住むアパートの管理人。日系移民であり空手の使い手。不良グループを空手で撃退したことからダニエルから指導を依頼され、2か月後の試合に向けてダニエルに稽古をつける。
  • アリ・ミルズ(エリザベス・シュー):ダニエルと同じ高校に通う女子で、山の手のお嬢様にしてチアリーダーという絵に描いたようなヒロイン。いじめに遭い孤立するダニエルと唯一仲良くしている奇特な人でもある。
  • ジョニー・ロレンス(ウィリアム・ザブカ):ダニエル、アリと同じ高校に通う不良グループのリーダー格。アリから一方にフラれたがいまだに未練があり、アリと親しくするダニエルに敵対心を抱いている。コブラ会という空手道場の門下生であり、ダニエルをいじめる際にも容赦なく空手を使う。
  • ジョン・クリース(マーティン・コーヴ):ベトナム戦争帰りにして、コブラ会の師範。門下生たちにはスパルタ教育を施し、勝つためなら卑劣な手段に出ても構わないといういかがな思考回路の持ち主。演じるのは『ランボー/怒りの脱出』(1985年)、『ランボー者』(1987年)でもお馴染みのマーティン・コーヴで、ベトナム戦争帰りが板についています。

感想

久しぶりの鑑賞では子供の頃に見た時とはかなり違った印象を持ち、映画鑑賞には思い込みや記憶違いがかなり入り込む場合があるという恐ろしい発見がありました。今回はそんな違和感を中心にあれこれ書いていきます。

ダニエルさんが意外と武闘派

『ベスト・キッド』ってどういう映画と聞かれると、もやしっ子が日系移民の老人から空手の稽古をつけてもらい、試合でいじめっ子に勝利する話と多くの人が答えるのではないでしょうか。

しかし改めて鑑賞するとそんな話でもありませんでした。

ダニエルさんを演じるラルフ・マッチオは高校生どころか中学生に見えるほどのベビーフェイスと線の細さではあるのですが、登場場面から意外と積極的な行動をとっています。

引越し後すぐに近所の同級生たちと打ち解けて友達を作るし、偶然知り合ったマドンナ的美少女アリ(エリザベス・シュー)からも好意を抱かれ、なかなかのリア充ぶりを発揮するのです。

そうしてアリと親しくしているところに、いかにも不良ですという感じでアリの元彼ジョニー(ウィリアム・ザブカ)が乱入。ジョニーが絡んでいく対象はアリで、ダニエルさんが何か危害を加えられたわけでもないのですが、アリへの態度にダニエルさんが激怒してジョニーに喧嘩を吹っかけます。

ジョニーとの喧嘩を始めたのは実はダニエルさんの方だったということが衝撃でした。

後日、学校のサッカー部に所属したダニエルさんは、隣のチアリーディング部のアリと人目も憚らずイチャイチャ。同じサッカー部には二人に横恋慕しているジョニーもいるんだから行動には気を付ければいいのに、そんなジョニーからの視線をまったく意に介していません。

結果、部活内でジョニーのグループから意地悪をされて、キレたダニエルさんが暴力で応えて顧問から退部を命じられるのですが、そもそもダニエルさんに用心や忍耐が足りなかったような気がします。

またハロウィンパーティーではトイレの個室で一服するジョニーに水をぶっかけて、クールダウンしかけていた敵対関係を再燃させます。

結果、ジョニー軍団にボコられ、そこをミヤギさん(ノリユキ・パット・モリタ)に救われたことから空手の稽古が始まるのですが、揉め事のかなりの部分がダニエルさん発だったということが今回の鑑賞での発見でした。

そうなってくると試合から受ける印象も変わってくるもので、いじめっこがいじめられっこを倒すという構図で見ていた初見時のような興奮はありませんでした。

また物語全体を俯瞰した時に一番悪い奴って、序盤にダニエルさんと友人になったものの、ジョニー軍団とのトラブルに加勢しなかったばかりか、ジョニーとの喧嘩に負けたダニエルさんに愛想尽かして友達付き合いをやめた近所の奴らじゃないかと思います。

あいつらの腐り方はコブラ会の比ではありません。

ミヤギさんが意外と不愛想

ミヤギさんの印象も初見時とはかなり異なるものでした。

ミヤギさんは頑固で偏屈なおじさんなんだけど実は物凄いマスターという、能ある鷹は爪を隠す的な『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1980年)のヨーダのような位置づけにあります。

一見するととっつきにくいのだが懐に入り込むとその奥深さを感じるようなキャラクターではあるのですが、現在の目で見ると思いのほかとっつきにくさの方が目立ちます。

初対面時は本当に不愛想だし、ハエを箸で掴むチャレンジにダニエルさんが先に成功してムスっとした辺りも感じ悪かったです。

修業を始めたダニエルさんに課した作業も結構鬼畜で、4台の車のワックスかけに始まり、自宅の床磨き、垣根のニス塗り、家のペンキ塗りを朝から晩までやらせるという尋常ではないこき使い方をします。

ワックスかける、ワックスとる

ミヤギさんがダニエルさんに課した作業は、実は空手のカタの習得に繋がっていたというオチがつきます。当時、日本全国の男子小学生が掃除時間に真似をした「ワックスかける、ワックスとる」です。

『ロッキー』(1976年)の生卵一気もそうでしたが、ジョン・G・アヴィルドセンは男子が思わず真似したくなるトレーニングの描写を入れるのが本当に上手です。

この「ワックスかける、ワックスとる」があるかないかで作品全体への支持が大きく異なっていたのではないかという程の本編中の最重要場面ではあるのですが、同時にトンデモ訓練場面でもあります。

こんなことで空手のカタが自然に身に着くのなら街のペンキ塗りやガソリンスタンドは空手の達人だらけということになるし、組手もせずカタの練習だけで試合に勝てるものだろうかという別の疑問も浮かびます。

まぁファンタジー空手なので深くツッコまないのがマナーですが、イヤな言い方をすると子供騙しと言えなくもないなと。

勝つと分かっていてもハラハラさせる試合

そんなこんなありつつ怨敵コブラ会との試合に挑むダニエルさんですが、作劇上、ダニエルさんが負けるはずがないことは分かっているのに、それでもハラハラさせるという素晴らしい見せ場になっています。

良い仕事とはこういうことを言うのでしょう、ジョン・G・アヴィルドセンの演出力が光ります。

勝ちさえすれば何でもありという方針でダニエルさんに負傷させるコブラ会の悪辣さと、汚い敵に対しても正々堂々と渡り合うダニエルさんという対比構造もベタながら良く機能しており、スポーツものの面白さをイヤというほど味わわされる名場面でした。

最後の鶴のかまえなんて常識的に考えればありえないのですが、これを受け入れさせるだけの力がラストの試合運びにはありました。

意外と長い上映時間

最後に、『ベスト・キッド』ってこんなに長い映画でしたっけ? 実はオリジナルの尺で見たのは初めてなのですが、126分もある映画だということは知りませんでした。

正味92分の地上波尺が身についていたのでやたら冗長に感じたし、カットされまくっている地上波版と比較してオリジナルの方が良かったとも思えませんでした。

コブラ会(シーズン1)_まさかここまで面白いとは!【8点/10点満点中】