ピースメーカー【良作】アメリカの患部を突きすぎたアクション大作(ネタバレあり・感想・解説)

[1997年アメリカ]

7点/10点満点中

■ドリームワークス第一回作品

ジェフリー・カッツェンバーグは低迷していたディズニー映画部門を立て直した功労者でありながら社長就任を拒否されたことから1994年にディズニーを退社し、ディズニーに対抗しうる新スタジオの設立を構想しました。

ディズニーで腕を振るったカッツェンバーグがアニメ部門、世界最高の映画監督であるスティーヴン・スピルバーグが映画部門、アサイラム・レコードとゲフィン・レコードの創設者であるデヴィッド・ゲフィンが音楽部門をそれぞれ統括するという夢のチームを結成し、ドリームワークスSKGは開業。ハリウッドでは実に60年ぶりのスタジオ設立ということで当時はかなり注目された会社でしたが、その第一回作品として選ばれたのが本作でした。

■異質なアクション大作

能天気な爆破アクションが主流だった90年代において他とは明らかに異質なアクション大作であり、外国人が当たり前のように英語を話すことはないし、人の死は当然のことではないし、他国の領空を侵犯すれば攻撃を受けます。核兵器の調達者と使用者を別にしたり(従来の映画にはなかった視点)、現場での意思決定がスムーズにいかなかったりと、現実的によく考えられた脚本だと言えます。

特に印象的だったのはウィーンでのカーチェイスで、敵を皆殺しにしようと決めたデヴォーが対決直前に空へ向けて発砲し、居合わせた一般市民達をその場から退場させるというワンシーンをちゃんと入れています。普通のアクション映画が無視したり見落としたりしている部分をきちんと拾い、都合の良い作りにはしていないことには感心します。

■911を予見した内容

現在の目で見ると911を予見したかのような内容にも見応えがあり(あまりに的確すぎたため、911直後にテレビ放映が取りやめられたほど)、世界戦略の失敗からアメリカがテロリストを生み出してしまったこと、テロに加担する科学者がハーバードで教育を受けていたこと、空港の入国管理体制がザル状態でテロリストの入国を許してしまったこと等、アメリカ人にとっては耳の痛い内容となっています。

■主人公は善人ではない

テロリストと戦うデヴォーのキャラクターも興味深く、無関係な子供を巻き込んでも構わないからテロリストを射殺しろとスナイパーに命じたり、戦争で妻子を喪ったことへの同情を求めるデューサンを「俺達の戦争じゃない」と言って切って捨てたりと、倫理的にいかがなことをいくつもやります。ドリームワークスは、よくぞこんな作品を第一回作品に選んだものです。

■ミミ・レダー監督の映画デビュー作

本作の監督はミミ・レダー。『ER』での演出が同作のプロデューサーだったスピルバーグの目に留まって本作の起用となりましたが、劇場用映画デビュー作であるにも関わらず、その演出は冴え渡っています。ウィーンでのカーチェイス、ヘリでの空中戦、ニューヨーク市街地での大追跡など場面毎に象徴的な見せ場が配置されているのですが、これだけ多様な見せ場をなかなかうまくまとめ上げています。そんな大迫力のアクションの中にも、デヴォーによる容赦のない拷問であったり、狙撃手が誤って一般人を撃ってしまったりといった痛みのある場面もきちんと入れているのは、ドラマ出身監督ならでは。また、ニコール・キッドマンがすべての出演作中でもっとも美しく撮られていることもポイント高いです。

The Peacemaker
監督:ミミ・レダー
脚本:マイケル・シファー
製作:ブランコ・ラスティグ,ウォルター・F・パークス
製作総指揮:マイケル・グリロ,ローリー・マクドナルド
出演者:ジョージ・クルーニー,ニコール・キッドマン
音楽:ハンス・ジマー
撮影:ディートリッヒ・ローマン
編集:デヴィッド・ローゼンブルーム
配給:ドリームワークス(アメリカ),UIP(日本)
公開:1997年9月26日(アメリカ)1998年1月15日(日本)
上映時間:124分
製作国:アメリカ合衆国