(1997年 アメリカ)
豪勢な見せ場の連続なので楽しみたいという思いはあるものの、誰が誰を狙っているのか分かりづらい下手くそな編集のせいで見せ場がつまらないものになっているし、私怨vs私怨の構図も有効に機能していません。

あらすじ
CIAエージェントのジャック・クイン(ジャン=クロード・ヴァン・ダム)は国際テロリスト・スタヴロス(ミッキー・ローク)を倒すための作戦中に、流れ弾でスタヴロスの妻子を死なせてしまう。怒りに燃えるスタヴロスの反撃に遭ったクインは大怪我を負い、引退したエージェントが隔離される島「コロニー」に強制送還される。
コロニーで分析業務に当たるクインは、スタヴロスの犯行現場において妻の拘束を匂わせるメッセージを読み取る。妻を助け出すためにコロニーを脱出したクインは、アントワープの武器商人ヤズ(デニス・ロッドマン)を頼りにする。
スタッフ・キャスト
「香港のスピルバーグ」ツイ・ハークのハリウッド進出作
1950年ベトナム出身。ベトナム戦争の難民として香港に渡り、後にテキサス州立大学で映画製作を学びました。1979年に映画監督としてデビューし、『蜀山奇傅 天空の剣』(1983年)などの監督作がヒットして「香港のスピルバーグ」と呼ばれるようになりました。
香港映画界で干されていたジョン・ウーに手を差し伸べて『男たちの挽歌』(1986年)をプロデュースするという熱い一面を持つ反面、ジョン・ウーのハリウッド進出の際には契約問題で足を引っ張るなど嫉妬深い一面も持っています。
本作ではジョン・ウー、リンゴ・ラムに続いてヴァンダム主演作でのハリウッド進出となりました。
脚本は『スペースバンパイア』のドン・ジャコビー
『ブルーサンダー』(1983年)や『フィラデルフィア・エクスペリメント』(1984年)の脚本で脚光を浴びた後に、メナハム・ゴーラン率いるキャノン・フィルムズの常連脚本家となり、『スペースバンパイア』(1985年)、『スーパー・マグナム』(1985年/マイケル・エドモンズ名義)、『スペース・インベーダー』(1986年)などを立て続けに手掛けました。
“The Colony”というタイトルの本作のオリジナル脚本は1995年に100万ドルで買い取られたのですが、ヴァンダムによってコミカルに書き換えられたようです。
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主演はジャン=クロード・ヴァン・ダム
開脚や回し蹴りのスペシャリスト。
若い頃に香港で生活していたというゆかりもあって香港映画界への愛着を持っており、90年代にはジョン・ウー、リンゴ・ラムと香港の監督を立て続けにハリウッドデビューさせてきました。そして、当時の香港映画界最大の大物だったツイ・ハークをデビューさせたのが本作でした。
共演はNBA選手デニス・ロッドマン
NBA選手で、1992年から1998年にかけて7年連続でリバウンド王を獲るほどの優れたプレイヤーでしたが、奔放な私生活や奇抜なファッションなどでも注目を集めていました。
90年代半ばよりテレビドラマなどに出演するようになり、本作がメジャースタジオでの初の大役となるのですが、不評を浴びてラジー賞最悪助演男優賞・最悪新人俳優賞・最悪スクリーンカップル賞を受賞しました。
しかしこれに懲りず、本作と同じくソニーが製作したアクション『サイモン・セズ』(1999年)では主演を務めました。
感想
やけくそのようなアクションの連打
巨大車両が東欧の田舎道を爆走する冒頭に始まり、爆破と銃撃が数分おきに繰り返される景気の良いアクション大作となっています。
しかも月並みなものは何一つ作らないという気合が入っており、中でもコロッセオを舞台にしたトラvsヴァンダムという対戦カードは『グラディエーター』(2000年)を数年先取っていました。
ただし編集が異様に下手クソで、登場人物の位置関係や、誰が誰を狙っているのかがサッパリ分からず、事態の把握に手間取るという問題も発生しているので額面通りに楽しめないことが難点でした。
私怨と私怨の衝突を表現できていない
ミッキー・ローク扮するスタヴロスは流れ弾で妻子を失ったことから、その作戦を仕切っていたジャン=クロード・ヴァン・ダム扮するクインを恨んでいるという逆『フェイス/オフ』(1997年)な設定。
そこでスタヴロスが取った対抗策とは、妊娠中のクインの妻を誘拐し、クインに自分と同じ苦しみを味わわせるというものでした。
ここにテロリストとCIAエージェント双方の家族を巻き込んだ私怨vs私怨の構図が出来上がるのですが、驚くほどに情感が無くて盛り上がりに欠けました。
せっかくミッキー・ロークという演技のできる俳優を配置できているのだから、観客がもっとスタヴロスに感情移入できるように作るべきだったし、多くの家族をテロ行為で殺してきたスタヴロスが、わが身に不幸が降りかかってようやく暴力の残酷さを知るという因果な描写を加えても良かったのですが、そうしたドラマ的な要素はほぼオミットされています。
タイトル負けしている
『ダブルチーム』というタイトルはバスケ用語に由来し、一人では防げない強力な敵オフェンスに対して、二人のディフェンスで守ることを指しています。
そして作品においては、スタヴロスがあまりに強力なので、クインがヤズの力を借りて対抗している構図を示しているものと考えられます。
ただし肝心のスタヴロスの強さがさほど感じられない上に、相棒のヤズがほぼ役に立っていないので、完全にタイトル負けしています。
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