【凡作】ワイルド・ストーム_90年代アクション映画の落穂ひろい(ネタバレあり・感想・解説)

災害・パニック

(2018年 アメリカ)
ハリケーンの中での強盗事件という、本当にそれだけの映画。今どき珍しいほどドラマやリアリティへの目配せがなく、ひたすら大味なアクション映画なので、現在の観客の嗜好にはやや合っていないと思います。

あらすじ

財務省が所管する紙幣廃棄施設が武装集団に襲われる。集団の目的は廃棄予定の古紙幣6億ドルの強奪であり、彼らは巨大ハリケーンの襲来により街が無人化したタイミングを狙っていた。しかし金庫を開錠するためのパスワードは財務省職員で紙幣運搬担当のケーシー(マギー・グレイス)によって変更されていたことから、彼らはケーシーを追いかけ始める。対するケーシーは、偶然出会った気象学者のラトリッジ(トビー・ケベル)と共に反撃に移るのだった。

スタッフ

監督は『ワイルド・スピード』のロブ・コーエン

1949年ニューヨーク州出身。ハーバード大学卒業後の1970年にフォックス入社し、1973年には若干24歳でフォックスのテレビ映画担当副社長に就任しました。

1980年代にはプロデューサーとして『バトルランナー』(1987年)、『イーストウィックの魔女たち』(1987年)、『バード・オン・ワイヤー』(1990年)などに携わり、並行してテレビドラマの演出も手掛けた後に、『ドラゴン/ブルース・リー物語』(1993年)で映画監督デビューし、シルヴェスター・スタローン主演の『デイライト』(1996年)などを手掛けました。

21世紀に入ると『ワイルド・スピード』(2001年)と『トリプルX』(2002年)というヴィン・ディーゼル主演作が連続で大ヒットして一躍トップディレクターとなりましたが、『ステルス』(2005年)を大コケさせて以降はパッとしません。

感想

素直でチャイルディッシュな娯楽アクション

『ワイルド・ストーム』という邦題は、ロブ・コーエン監督の代表作『ワイルド・スピード』(2001年)にあやかったものと思われますが、一方原題は”The Hurricane Heist”。直訳すると「ハリケーン強盗」。

作品内容そのものでしかないこのタイトルには感銘を受けました。こんなに素直なことでいいんだなと。

実際、作品は大味そのもので、昨今のアクション映画によくあるリアリティへの目配せや、主人公の苦悩、善悪のボーダーレス化などというものは本作には存在していません。

こっちに良い奴がいて、あっちに悪い奴がいて、激しい撃ち合いやハリケーンの破壊を楽しむという良くも悪くもチャイルディッシュな娯楽アクションとして仕上がっています。

90年代アクション映画の落穂ひろい

さらに感じたのは、過去のアクション映画からの引用がやたら多いということです。ここまでくると意図的にやっているとしか思えません。以下、私が気付いたものなのですが、実はもっと多いのかもしれません。

こうして書き出してみると、どんだけ『ダイ・ハード』が好きなんだという感じですが。

大味すぎて現在の観客には厳しい

以上のような引用の多さからは90年代アクション映画のアップグレード版を狙った企画意図を感じたのですが、作品の密度までが90年代レベルなので、製作された2018年という時代の観客を満足させるものではありませんでした。

まずドラマが薄すぎます。主人公に与えたトラウマ設定が生きていないし、悪人を強盗に走らせたという仕事や人生に対する絶望感も、ただセリフで述べられるだけで具体性が伴っていません。

「俺の人生は糞だ!もう嫌気がさした!」と連呼するものの、具体的に何がそんなに嫌だったのか、それは真っ当な怒りなのか、それとも逆恨みレベルなのかも分からないので、見ている側としては特に感じるものがありませんでした。

また強盗側についてはキャラもブレブレ。最初は襲撃に麻酔銃を用い、金が目的であって命まで奪う気はないという義賊的な態度を見せていたのに、途中から殺す気満々で迫ってくるので、彼らがどんな人間なのかを掴みかねました。

見せ場も粗すぎます。ハリケーンとアクションがうまく絡んでおらず、刻一刻と激しさを増していく暴風雨の中での追っかけという趣旨が生きていません。

加えてハリケーンと竜巻がごっちゃになっており、暴風と気圧差によって悪党が天高く舞い上がっていくアクションはやりすぎだったし、暴風面にはっきりとした境目があるのは台風やハリケーンをよく知らない人特有の勘違いのようでした。

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