デイライト【凡作】映画史上最も文句の多い生存者(ネタバレあり・感想・解説)

(1996年 アメリカ)
トンネル爆破場面は素晴らしい出来なのですが、ワガママばかり言う生存者がうるさくて仕方がなく、生き残って欲しいと思える人物が誰一人いなかったことはしんどかったです。

©Universal Pictures

あらすじ

ニューヨークとニュージャージーを結ぶ海底トンネルで、危険な産業廃棄物を乗せたトラックと強盗が運転する暴走車が衝突し、大爆発が起こる。トンネル入り口で事故に遭遇した元救助隊隊長のキット・ラトゥーラ(シルヴェスター・スタローン)は生存者の救出に協力する旨を申し出る。

巨大な換気口から現場に進入したラトゥーラだが、換気扇の構造上、来た道から帰ることはできず、生存者達と共に帰還ルートを探さねばならなかった。

スタッフ・キャスト

監督は『ワイルド・スピード』(2001年)のロブ・コーエン

1949年ニューヨーク州出身。ハーバード大学卒業後の1970年にフォックス入社。その際に『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)の製作に立ち会ったことが本作にも繋がったと、公開時のインタビューで言っていました。

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1973年には若干24歳でフォックスのテレビ映画担当副社長に就任。1980年代には映画プロデューサーとして『イーストウィックの魔女たち』(1987年)、『バトルランナー』(1987年)などに携わり、並行してテレビドラマの演出も手掛けた後に、『ドラゴン/ブルース・リー物語』(1993年)で映画監督デビューしました。

21世紀に入ると『ワイルド・スピード』(2001年)と『トリプルX』(2002年)というヴィン・ディーゼル主演作が連続で大ヒットして一躍トップディレクターとなりましたが、『ステルス』(2005年)を大コケさせて以降はパッとしません。

脚本は『ダンテズ・ピーク』(1997年)のレスリー・ボーエム

1951年ロサンゼルス出身。ベイシスト出身の脚本家という異例のキャリアの持ち主。

『エルム街の悪夢5 ザ・ドリーム・チャイルド』(1989年)やジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の『ボディ・ターゲット』(1993年)の脚本に参加した後、本作と『ダンテズ・ピーク(1997年)という2本のディザスター映画を執筆。その他、伝説の大コケ映画『アラモ』(2004年)にも関わっています。

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PHOTO BY:STEVE GRANITZ/RETNA LTD.USA DAYLIGHT PREMIERE CHINESE THEATER LA,CA.12-5-96 JEAN-CLAUDE VAN DAMME

主演は僕らのシルヴェスター・スタローン

1946年ニューヨーク出身。1970年に俳優としてデビューするもパッとせず、ロジャー・コーマン製作の『デス・レース2000年』(1975年)でのマシンガン・ジョー役でようやく二番手の役を掴み取り、自ら脚本を書いた『ロッキー』(1976年)でブレイクしました。

『ロッキー』『ランボー』のシリーズ化で80年代には世界一のマネーメイキングスターとなりましたが、90年代に入ると同業者アーノルド・シュワルツェネッガーの猛烈な追い上げもあって低迷。

それでも本作製作時点では依然として高い集客力を持っていたことから、ロブ・コーエン監督がニコラス・ケイジ主演を要求したにも関わらず、ユニバーサルの希望でスタローン主演に決定しました。

作品概要

『ポセイドン・アドベンチャー2』のボツ企画の流用

本作の監督ロブ・コーエンが『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)の製作に立ち会っていたことは「スタッフ・キャスト」欄の通りなのですが、同作が大ヒットしたことから、すぐに続編の企画が立ち上がりました。

1973年には、前作生存者達の乗った列車がトンネル崩壊で立ち往生するという泣きっ面に蜂どころではない話が考えられていたのですが、さすがに却下。もはやポセイドン号関係ないし。

資料では確認できないのですが、当時フォックスに在籍していたロブ・コーエンがこのボツ企画に関わっていた可能性は高いと思われます。で、このボツ企画が23年後に本作『デイライト』として復活したというわけです。

ちなみに『ポセイドン・アドベンチャー2』(1979年)ですが、フォックスが見込みなしと判断して手放したのか、ワーナーからのリリースとなっています。

ポセイドン号には実はプルトニウムが積まれており(なぜ豪華客船にプルトニウムが?)、それを狙う海賊と普通の金品狙いで沈没寸前のポセイドン号に乗り込んだ盗掘屋が争奪戦を繰り広げるという、これはこれで物凄い話になりました。

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登場人物

キット・ラトゥーラ(シルヴェスター・スタローン)

NYのタクシー運転手。元は救助隊の隊長だったが、死亡事故の責任を取らされて解雇された過去を持つ。トンネル入り口で事故に遭遇し、トンネル内に残された生存者の救助を買って出る。

ジョージ・タイレル(スタン・ショウ)

NY交通局員。ラトゥーラが来るまでは生存者をまとめていた。同じく交通局員のグレースという恋人がおり、プロポーズを匂わせつつ「後で伝えるわ」と言い残して事故に遭うという、死亡フラグのぶっ刺さった行動をとる。果たして彼は生きて帰れるのでしょうか。

演じるスタン・ショウは『ロッキー』(1976年)でロッキーがミッキーのジムを追い出される場面で、そのロッカーを引き継ぐボクサー役でした。

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マデリーン・トンプソン(エイミー・ブレネマン)

脚本家志望の女性だが、書いた作品は売れず、妻子持ちの不倫相手からは不誠実に扱われて人生に絶望し、NYから実家のあるインディアナ州に帰ろうとしていた。

エイミー・ブレネマンは前年の『ヒート』(1995年)でも孤独ゆえに犯罪者ロバート・デ・ニーロと惹かれ合う女性役を演じており、その幸薄さ加減には定評あり。

ロイ・ノード(ヴィゴ・モーテンセン)

スポーツ用品会社の社長で、自分自身が広告塔になってCM出演などをするウザいタイプの実業家。生存者救出への貢献を会社の売上アップに繋げようと考えており、危険だとして制止するキットを振り切って脱出ルートの捜索に出た。

トリリング夫妻

愛犬を溺愛することで息子を失った悲しみを紛らわせている老夫婦。

クライトン一家

父スティーヴン・母サラ・娘アシュリー(13歳)の3人でNY旅行中の家族だが、父スティーヴンの不倫によって家族関係は冷めきっている。娘アシュリー役のダニエル・ハリスは、『ラスト・ボーイスカウト』(1991年)でブルース・ウィリスの娘を演じた子役。

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囚人3人組

ビンセント(セイジ・スタローン)、マイキー(レノリー・サンティアゴ)、ラトーニャ(トリナ・マクギー=デイヴィス)。移送中に事故に巻き込まれた3人組。最初はもう一人いたのですが、キットに暴力を振るおうとしたところを天罰のように爆発に巻き込まれて死亡。

ビンセント役のセイジ・スタローンはシルヴェスター・スタローンの実子で『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年)に続く親子共演作。マイキー役のレノリー・サンティアゴは『コン・エアー』(1997年)で女装した囚人役をやっていました。

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感想

サクサク進む導入部の素晴らしさ

本作の主要登場人物は10数人で割と多めなのですが、導入部にて彼らの背景が簡潔に説明され、本編開始後15分でトンネル爆発事故が起こるという手際の良さでした。ディザスター映画史上、ここまで簡潔に人物紹介を終わらせた例はなかったと思います。

勝因は家族単位・夫婦単位で登場人物をグルーピングしたことであり、そのグループ内の会話によってキャラクター毎の背景や個性が分かるようになっています。

この導入部は百点満点と言えるのではないでしょうか。

迫力のトンネル爆破場面

続くトンネル爆破はミニチュアワークとCGが組み合わされた見事な見せ場となっています。猛烈な炎がトンネル内を這い回り、爆風で車が吹き飛ばされる。そしてトンネル崩落と、数分間に渡るド派手な描写は現在の目で見ても十分に迫力があります。

何に引火すればこれほど猛烈な炎と爆発力が発生するのかは分かりませんが、そんな理屈など吹っ飛ぶほどの視覚的なインパクトがありました。

加えてアカデミー音響効果賞にもノミネートされたサウンドの援護もあって、爆発場面は凄まじい臨場感に包まれます。リビングで本作のBlu-rayを見ていると子供達からのクレームの嵐でした。

文句の多い生存者達

と、事故発生直後までは素晴らしい手際だったのですが、ここからの展開が面倒くさいことこの上なくて、一気にテンションが下がりました。

トンネル入り口で事故に遭遇した元救助隊長のキット・ラトゥーラ(シルヴェスター・スタローン)は、自分も何か手伝おうと救助隊の前線基地に行くのですが、彼の後任隊長は「お前となんか話してられるか」と釣れない対応。他の人たちも基本的には「クビになった奴が出しゃばるな」という感じであり、この非常事態においても過去の因縁にとらわれ過ぎでイライラさせられました。

トンネル内に閉じ込められた恋人のジョージ(スタン・ショウ)を何としてでも救って欲しい交通局員グレース(ヴァネッサ・ベル・キャロウェイ)の手引きによって、ようやっとキットはトンネルへの潜入ができたのですが、それにしても裏口からこっそり侵入するかのような非公式感。危険を顧みず協力をしてくれるキットへの扱いがあんまりじゃありませんかね。

キットは巨大な換気扇と悪戦苦闘しながらも生存者の元に到達するのですが、すると生存者達は「なんだ、たった一人かよ」「ロイさん(ヴィゴ・モーテンセン)がルートを探してくれるって言うし、俺はそちらについて行く」などとワガママばかり言ってきます。

結局ロイは死に、一行はキットについて行くしかない状態になるのですが、それでも生存者達の文句は止まらず、「あなたをニュースで見たことがある」「死亡事故を起こした奴は信用できない」などと、僕たちのスタさんを罵倒するので死ぬほど感じ悪いです。文句ある奴は助からなきゃいいのに。

しかもこいつらが役立たずで、基本的にはキット一人(たまにマデリーン)がヒーヒー言って対応するだけで、他の奴らは手伝いもしません。

囚人3人組なんて、犯罪者ゆえのサバイバル能力の高さで何かに貢献するのかと思いきや、爆発にショックを受けて動けなくなったり、ネズミを怖がってパニックを起こしたりと、一般の生存者以上に足を引っ張るような始末の悪さでした。

この映画の欠点は群像劇を志向しながらもスタローンのスタンドプレイに終始しており、チームワークが最後まで追求されていない点にあります。最初は反目し合いながらも、最後には役割分担が出来上がっているような構造であれば良かったのですが。

キットの底抜けの良い人加減が不自然

で、ここまで見ていて疑問なのは、キットがこれほど救助に尽力する理由が見えてこないことです。

トンネル内に知り合いがいるわけでもないし、古巣から応援を求められたわけでもない。あれほどウザがられながら、わが身を危険に晒した理由が見当たらないのです。

ワガママな生存者達に対しても常に優しく接していますが、もうキレてもいいところですよ。「付いて来たい奴だけが俺に付いて来い。別の道を行きたい奴は黙って去れ」くらいのことは言ってやればよかったのに。

鑑賞後に振り返ると、キットが救助隊を解雇された原因である死亡事故の贖罪のために、今回こそは人を生かすぞ!みたいな心境だったのかなとも思ったのですが、鑑賞中には思い付かなかったしなぁ。

ともかくキットの底抜けの人の良さのために、かえって物語に血が通っていない状態になっています。

最後のあれで生き残れるんだろうか

なんやかんやありながらもキットは脱出ルートを探し当てるのですが、いざみんなで助かろうという段階で、行方不明になっていたトリリング夫妻の犬が泳いでやってきます。

犬なんか見捨てて早く逃げようと珍しくまともなことを言う生存者達に対して、キットは犬を助けに行きます。で、案の定階段から落下。続けてキットを助けようとしたマデリーンも落下。

脱出ルートを失ったキットは最終手段としてトンネルの天井に爆薬を仕掛け、壁を破ることで内外の圧力差によって一気に水面にまで吸い上げられるという、おおよそ人間が生きられるとは思えない策を実行に移します。

そんな無茶をしながらも生還するキットとマデリーン。二人が水面に浮上した瞬間にやってくる救助艇。さすがに無理あり過ぎじゃないかと引いてしまいました。

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